ロボットに仕事を奪われる時代!その時あなたの会社の市場価値は?

経営

8月24日に開かれたソフトバンクの四半期決算説明会。
司会の紹介で、登壇した孫社長は、簡単な挨拶を済ませると四半期の業績説明を同社の人型ロボット“Pepper”に丸投げ(Pepper君に言わせると“無茶ぶり”)してしまいました。

そして15分程のPepperによる業績説明の後、ソフトバンク最大の課題、スプリント社(2013年にソフトバンクが買収した米携帯電話会社)の改革について、30分間に亘り、孫社長が今度は自らが語ったのでした。

孫社長とPepper君とのやり取りが期待したような笑いを取れたのかは不明ですが、過去のグループの業績よりもスプリント社の将来に問題意識を持ち、改善に社長自らコミットすることを市場に示した点では効果的だったと思います。

同時に、定例・定型的なことは機械に任せ、真に思索・判断が必要なことを人間がやる、と言う今後のビジネスのあり方への孫社長の思想が垣間見えたように思います(勿論Pepper君自身が発言内容を考えた訳では無いでしょうが)。

こうした変化は、我々の足元に少しずつ近づいてきています。

「将来なくなる仕事」と「残る仕事」はしばしば話題となるようです。最近では2013年のオクスフォードの准教授の論文が話題を集めました。これらを見て行くと、なくなる仕事の特徴は以下のようです。

1.知識や一定の技術に依存し、主観的な判断の余地が少ない定型的なもの
 ・税務申告書作成者、ローン審査員、レジ係、キーパンチャー…
 ⇒情報技術の発達で、機械の認識・判断・計算・評価などの
  高度化が進んでいます。

2.アウトプットの量が人的資源の投入量に制約されるもの
 ・各種営業員、高速道路収受員、改札係…
 ⇒収受員や改札係では顕在化しています。
  容量増加・効率化に機械化が不可避です。

3.リソースや情報の偏在、規模の利益等により物理的に集約・管理した方が
  効率的な(だった)もの
 ・中古屋、宿泊施設、タクシー、etc.
 ⇒IT技術の進展により、分散したリソースや情報の一元管理・発信が
  可能となりました。中古屋でなくても、ネットオークションで需給を
  直接繋げることが可能です。最近話題の宿泊のAirbnb、タクシーの
  ライドシェア等は、法令上の課題はあるものの、個人のリソースを
  ITで集約して体系的に提供するもので、業種がなくなる訳ではない
  ですが、既存業態からは脅威となるでしょう。

一方で、なくならない仕事の特徴としては、

1.主観的で高いスキル・判断力を要するもの
 ・医師・弁護士・情報通信技術者、etc.
 ⇒機械的な判断になじまないもの、機械にどう判断させるのかを考えるもの。
  但し、弁護士補助業務はなくなるとされ、医療での遠隔診断等の発達等、
  業種内での盛衰はありそうです。

2.人でなければならない(人がやること自体に価値がある)もの
 ・小学校の先生、心理カウンセラー、聖職者、etc.
 ⇒情緒的な情報は人間が提供する方が良いようです。
  プロスポーツや接客業等も含まれるかもしれません。但し、犬型ロボット
  「AIBO」を未だに熱愛する飼主がいると聞くと、これらもいつか機械に
  置き換わるかもしれません。

遅かれ早かれ訪れるこうした変化にどう対応するか。
これは、どの視点から変化に対応するのかも考える必要があるでしょう。

(1)無くなるのは、業種か職種か

 動画配信普及で映画館が減るのは業種の問題ですが、
 ICカード普及で改札係が減るのは職種の問題であって
 鉄道業はなくなりません。
 経営者は事業存続の立場からは業種の将来、
 従業員保護には職種の将来を意識する必要があります。  

(2)変わるのは、商品・サービス自体の価値か、提供方法か

 価値自体が低下するなら、違う商品等を取り扱うのか、
 高付加価値化やマーケティングを通じて
 縮小する市場の中で販路を確保していかねばなりません。
 一方で、価値自体は不変なら、
 どの提供方法がベストなのかを考えていく必要があります。

(3)自分はその仕事の供給者なのか需要者なのか

 供給者なら、上記のような決断と改革を迫られます。
 一方で需要者であれば、現在の仕組みを大幅に効率化・低コスト化する
 チャンスにもなります。

こうした変化は、昨今はITや科学技術の発展で注目されていますが、過去から不断なく発生してきたものでもあります。

例えばマクロ的に見れば、日本の専業農業従事者は1960年の1,300万人から、2014年にはわずか170万人に縮小。その多くは、製造業・サービス産業に吸収されました。

個別企業では、任天堂は花札製造業から世界的な電子ゲーム製造業へ、一見すると変化のない総合商社も、商品の流通・仲介業から投資業へとその中心を変えています。

冒頭のソフトバンクも電子翻訳機製造業として設立され、出版、インターネットプロバイダを経て、今は主力を移動体通信業に置くなど、環境に合わせてその“仕事”を変化させています。

先の見えにくい時代ですが、そんな時代だからこそ、将来の自社の業種や従業員の職種にどんな変化が起こるのか、その変化に対してどう守り、どう攻めるのかを考えることが必要かもしれません。

アタックスグループは、時代の荒波を乗り切ろうとする経営者を全力でサポート致します。お気軽にご相談ください。

筆者紹介

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株式会社アタックス 執行役員 金融ソリューション室 室長 松野 賢一
1990年 東京大学卒。大手都市銀行において中小中堅企業取引先に対する金融面での課題解決、銀行グループの資本調達・各種管理体制の構築、公的金融機関・中央官庁への出向等を経て、アタックスに参画。現在は、金融ソリューション室室長として、金融・財務戦略面での中堅中小企業の指導にあたっている。
松野賢一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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