「自律」と「説明」~金融円滑化法の最終期限に向けて~

経営

私は経営改善に取り組む中小企業の改善計画づくりのお手伝いをすることが多いのですが、現場で常日頃感じることがあります。それは会社がお取引金融機関に感じている「誤解」です。

ある会社はこう言います。「業績が良かったときに銀行は預金をしてくれ資金を借りてくれ、と言うので相当協力もした。しかし業績が悪化すると手のひらを返したように『経営改善計画を作ってください』とか『不要不急の資産は処分して借入を減らしたらどうですか』などと言ってくる。経営に口出しをされているようで不安だ」と。

私は「誤解」だと思います。銀行の担当者は好き好んでこういう話をしているわけではないのでしょう。会社の経営状況が悪いまま、いい方向に進んでいるという実感を持てない。ためらいながらも「メインバンクのウチが言わなければ」と、こういう話を切り出しているのです。

金融機関の仕事は会社に資金を貸し出して利息を稼ぐことです。貸付を回収しても何も儲かりません。金融機関が経営にリクエストをしてきたとしたら、基本的には「回収したい」という思いからではないのです。

中小企業に融資する金融機関(特に上位行)には、上場企業にとっての投資家のように「いざというときには会社に対して注意喚起する存在にならなければ」という責任感があることが一般的です。

金融機関からの経営に対しての意見は、「これからもずっと貸出取引をさせて貰えるような健全経営の会社でいて欲しい」との願いから出る「サイン」なのです。
安定した資金調達環境を作るために必要なことはたったの二つです。

一つ目は「自律」、会社が「自社の経営を健全に保つ」ということに対して強い達成意思と当事者意識、実行力を常に持ち合わせることです。

二つ目は「説明」、経営の方向性を大切なパートナーである取引金融機関にしっかりと説明し続けることです。
この二つがしっかりとできる会社は困難な局面にあっても周囲から信頼を得られることでしょう。

自社の経営に口出しされることを嫌がり、金融機関からの「サイン」を見逃したり遠ざけたりしていませんか?
まずはお取引金融機関とじっくり話をしてみてください。きっと次のアクションにつながるヒントが見つかると思います。

金融円滑化法の最終期限までいよいよ残り一年を切りました。出口に向けて、会社の「自律」と「説明」が求められています。

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 取締役 廣瀬 明
1968年生まれ。企業再生、財務・事業デューデリジェンス業務、M&A、株式公開のサポート等に従事。中堅中小企業への豊富な支援業務を通じて培った知識と経験を活かし、現在大阪事務所のプロジェクトマネージャーとして活躍中。
廣瀬明の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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