海外子会社に絡むそのお金!寄附金かも?~最近の税務調査事例より~

税務

最近の税務調査では、国外関連者との取引が寄附金と認定され、課税される指摘が多くなってきています。 「国外関連者に対する寄附金」は、通常の寄附金のように損金に算入できる限度額はなく、全額が損金不算入で課税の対象となってしまうことが特徴です。

「国外関連者」とは、形式的には会社が直接・間接に50%以上を出資する国外の会社等です。仮にそれ以下の出資比率でも、役員の半数以上が兼任していたり、事業の重要部分を親会社に依存していたり、資金繰りを親会社に依存していたりすると、実質的に国外関連者と判定される場合もあります。

「国外関連者に対する寄附金」でよく問題となるのは?

問題となる寄附金のパターンとしては、次の4つが挙げられます。

1 海外子会社へ技術指導等の目的で出張した場合の出張精算
2 海外子会社へ出向している社員の日本で支払う較差補填金
3 海外子会社へ現地通貨で金銭を貸し付けた場合の金利
4 海外子会社を設立するにあたっての親会社の費用負担

特に指摘事項の多い項目は、1と2です。

技術指導の目的で出張したら…?

1について、例えば親会社が海外子会社を設立した後、技術的に未熟な子会社の社員を指導する場合や、子会社が製造した製品の品質維持のために、定期的に指導を行う場合があります。

このような技術指導が子会社の売上につながる場合は、親会社が行った役務提供(技術指導)の対価を子会社から受け取る必要があります。 受け取るべき対価は、一般的な役務提供価格となりますが、それが算定できない場合は総原価から算定します。

総原価は、往復の運賃、現地滞在費、出張者の人件費(諸費含む)、一般管理費等を含めた間接費を考慮した人件費等となります。 ただし、出張者が現地で子会社への技術指導のほか、親会社のための業務(親会社への納品前チェック、発注製品の仕様の打ち合わせ等)を行った場合は、その部分は親会社の経費負担で構いません。

日本での留守宅手当が…?

2については、海外子会社等へ出向した者に、日本で留守宅手当等の名目で報酬が支払われることがあります。

その目的は、
・現地で出向者に充分な報酬が払えないので日本でその差額を補う
・危険地域等への赴任の特別手当
・本人のモチベーション維持
など、様々な理由が考えられます。

一般的にこれらの支払いは、現地国との較差補填のものと考えられ損金可能な費用になりますが、出向者が現地法人から適正な報酬を得ていない場合(親会社が出向先の会社から出向負担金を少額しか受け取っていない場合を含む)は、この日本で支払っている報酬の一部が、本来出向先の会社が負担すべきものと判断され、寄附金と認定されることがあり得ます。

「現地法人からの適正な報酬」とは、その法人の従業員の報酬水準や、現地の(日本人従業員の)相場等が考えられます。相場は、JETROや現地の従業員募集ネットサイトに記載されている額が参考になります。 いずれにせよ、この寄附金の指摘は税額に直結し、かつ期ずれのように翌期に取り戻すことができるものではないので、処理は安易に考えないで慎重に行う必要があります。

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筆者紹介

アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 愛知 吉隆
1962年生まれ。中堅中小企業から上場企業に至るまで、約800社の税務顧問先の業務執行責任者として、税務対応のみならず、事業承継や後継者支援、企業の成長支援等の課題や社長の悩みに積極的に携わっている。
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