海外子会社取引で寄付金課税を受けないために~見えざる課税リスク!

税務

近年、経済社会がますます国際化している中で、「パナマ文書」、「パラダイス文書」の公開やBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの進展などにより、国際的な租税回避行為に対して、世の中の関心が高まってきています。

国税局は2016年10月に国際課税の取組の現状と今後の方向を取りまとめた「国際戦略トータルプラン」を公表しました。更に2017年12月には同プランの取組方針を発表しています。

国税局が発表した海外取引法人等に対する実地調査(2016年)実績は調査件数が13,585件(前年度104.1%)、追徴税額が2,366億円(前年度102.5%)となっています。

その中で日本を代表するグローバル企業の国際取引に影響を与える事例が報告されました。(日経新聞2018年9月11日から要約)

パナソニックは、海外子会社の売却を巡り、2017年3月期までの2年間で、421億円の所得の申告漏れを大阪国税局から指摘されたと発表しました。

当局は、孫会社の株式をオランダの子会社に売却した金額が、本来の適正な売却額よりも412億円安く、差額を寄付金とみなして更正通知を出しました。このほか9億円の費用や収益の計上漏れがあるなどと指摘しています。

パナソニックは、売却額は適正として不服を申し立てる模様です。

推測ですが、オランダは税法的に特殊な国なので、タックスプランニングを意識した取引を行ったものと考えられます。 パナソニックは効率化の一環でオランダの子会社に株式を移したもので、売却額について「専門機関の評価を受けており適正だった」と説明しています。

この処理について国際税務の専門家に税務判断を仰いでいたか不明ですが、結果として指摘を受けた事実は重要です。 過去(2013年)にもパナソニックは複数の海外子会社に対する販促費や広告費などの経費のほか、人材や技術の無償支援について、国税局から100億円の寄付金の指摘を受けています。

本事例のような海外子会社との取引における見えざる課税リスクは大企業のみの問題ではありません。

日本親会社が海外子会社に人財や技術面の役務提供による支援をする場合はよくありますが、実務上は海外子会社が業績不振により債務超過等となっているために対価をとらない場合が多く見受けられます。

この取引は税務調査の際には必ずと言っていいほど問題になります。

最近の税務調査では、特に赤字の海外子会社との取引について、財務支援を目的として対価をとらない場合や、海外子会社に有利となる取引価格を設定している場合に、「寄附金」として課税するケースが非常に多くなっています。

皆様の会社でこのような事例がないか、今一度点検いただき、疑わしいものがある場合は、是非国際税務の専門家に相談されることをお勧めします。

私どもアタックスグループでは、国際税務に関する税務相談や海外子会社との値決めルールや海外子会社とのタックスプランニング、クロスボーダー取引についてのリスクに関する現状把握からの解決支援を行っております。

こちらからお気軽にご相談いただければと思います。

筆者紹介

アタックス税理士法人 社員 税理士 永持 祐司
税務顧問から個人資産家や法人オーナーの資産税業務を含めた財産コンサルティングに従事。組織再編を活用した事業承継、財産承継コンサルティングの業務を中心にオールラウンダーなプロジェクトマネージャーとして活躍中。国際税務では、クロスボーダー取引、東南アジアを中心とした税務対応や海外を活用したタックスプランニングなどの実績がある。現在、アタックス税理士法人国際部副部長として活動中。
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