コロナ後も生き残れる企業とは~自社の財務状況に無頓着な会社は危ない!

会計

オリンピックが終了してもなお、新型コロナウイルスが猛威をふるっており、終息の見通しがつかない状況です。

オリンピック開催前にその影響が収まり、オリンピック、パラリンピックと有観客での開催が成功し、通常の日常が戻ってくることが理想だったので残念でなりません。

今しばらく行政からの要請のもと、新型コロナウイルスの影響が続く前提での生活が余儀なくされそうです。

2021年版の中小企業白書(2021年4月発行)によると、日本の企業で新型コロナウイルスの影響が継続している割合は約7割とのことです。

今年の春以降の第四波、第五波でこの割合は増えており、企業にとって甚大な被害が続いていることが予測されます。

また、2019年時点において損益分岐点比率は

  • 大企業 60%
  • 中規模企業 85%
  • 小規模企業 93%

だったそうです。

損益分岐点比率は損益がゼロとなる売上高の比率ですので、小規模企業では7%売上が減少したら赤字に陥ることになります。

新型コロナウイルスの影響はこの水準では収まりませんので、多くの中規模企業や小規模企業は赤字に陥っていることが考えられます。

2020年倒産件数は増えた?

一方で、2020年の企業の倒産件数は7,773件と、30年ぶりに8,000件を下回る水準となりました。

これは国策のもと持続化給付金(約5.5兆円)で固定費を補填したり、コロナ融資(約30兆円)や借入金返済の停止等により資金繰りを補填する等、これらの効果が表れているものと考えられます。

ただ、これらの施策はずっと継続するものではないため、中小企業にとってコロナの影響が継続する中でも、財務体質の強化を図ることが求められます。

特に、コロナ融資は借入金であることから、いずれは返済が始まるため、収益構造の改革を推進し、どんな状況でも利益がでる財務体質に変革する必要があります。

財務指標を意識している企業としていない企業の差

2021年度版の中小企業白書には、この財務体質を変革するためのヒントが数多く掲載されていました。

その中でも、どの企業でも実践できる策の一つとして、財務状況の視える化に基づく経営改善が提唱されています。

これは財務指標を意識している企業としていない企業で、財務指標の結果に差がでてきているという結果に基づくものです。

例えば、売上高経常利益率を計算(意識)している企業群の売上高経常利益率は2.6%、計算(意識)していない企業群では2.0%となっているそうです。

自己資本比率に至っては、計算(意識)している企業群において自己資本比率が20%未満の企業の割合は約25%に対し、計算(意識)していない企業群では約35%と大きな差が出ています。

財務指標を意識すると、かならず目標が設定されます。

そして目標が設定されると現状と目標のギャップをどう埋めるのかのアクションプランが検討され、それを実践し、思った通りの結果がでなければリアクションするといった経営管理サイクル(PDCA)が機能するようになります。

従って、財務体質改善では目標とする財務指標と目標の設定、アクションプランの策定が非常に大事になります。

アクションプラン策定のポイント

ここで、財務指標の目標を設定し、アクションプランを策定するまでのコツをひとつ紹介します。

それは、

  • どこ
  • なぜ
  • どうする

というプロセスで考えることです。

例えば、売上高を5%あげるという目標設定がされたとします。

その場合、まず考えるのは“どこ”、つまり売上高をあげるセグメントを特定します。

セグメントとは商品別、取引先別、店舗別、地域別等といった売上高の分類のことで、売上高が落ちているもしくはあげやすいセグメントを探します。

次に“なぜ”を考えます。

これは売上高を構成する要素を分解すると考えやすくなります。

例えば、売上高は「数量」と「単価」で構成されていると考えると、どの要素を上げていくのかが明確になります。

さらに「数量」にも「単価」にも構成要素がありますので、これを深堀りして目標を達成するための効果的なポイントを探します。

最後に、“どうする”を考えます。これは“なぜ”の構成要素に影響をあたえるプロセスを考えます。

例えば「数量」をあげる場合、

  1. 営業の訪問件数を増やす
  2. 提案件数をふやす
  3. 提案の採用件数を増やす

等のプロセスが考えられます。

このような方法を社内や部内で統一しておくと、目標達成にむけたボタンの掛け違いや論点の抜け漏れが防げますし、それぞれの要素に色々なアイディアを集めることができ、関与者全員の役割設定が可能となります。

この難局を乗り切るため、財務指標による正しい目標設定とアクションプランの策定に取り組まれてはいかがでしょうか。

本コラムのポイントを動画でも解説しています
 

管理会計導入

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 代表取締役社長
中小企業診断士 池ヶ谷 穣次
1993年 静岡県立大学卒。MBA。中堅中小企業の経営管理制度・管理会計制度構築サポート、事業再生サポート、財務・事業デューデリジェンス業務、M&Aサポート、株式公開支援、月次決算支援業務等に従事。システムエンジニア時代に得たシステム思考を応用し、経営者・経理責任者の参謀役として活躍中。
池ヶ谷穣次の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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