「資金繰り表」を経営に役立てよう~その意義と活用法!

会計

資金繰り表の意義を見直す

皆さんの会社では、資金繰り表を“継続して”作成していますか?
コロナ禍でキャッシュがみるみる少なくなっていくような危機的な局面で、資金繰り表の必要性を再認識された会社も多いことと思います。

資金繰り表は自社の事業全体の収支を把握、予測して、将来の資金不足にどのように対応していくかを検討するための資料です。資金繰りが破綻したら会社は活動を続けることができません。とても重要な資料です。

しかし、この資金繰り表が経営に役立てられていない事例を多く目にします。
「うちの財務担当者は資金繰り表を作成できないので、作成方法を指導してもらいたい」との依頼を受けることがありますが、背景は「金融機関に求められたから」「作成していた財務担当者が退社し、作成方法の引継ぎをしなかった」という、どちらかといえば受け身的のもの。

大変残念に思います。資金繰り表の意義を今一度見直す必要がありそうです。
本コラムでは、資金繰り表が活用されるようにするための、筆者の考えを述べたいと思います。

資金繰り表を経営上の重要資料に位置付ける

資金繰りを社内で最も気にかけているのは経営者です。
資金繰りに苦労された経験もあり、一番会社の資金繰りを理解しています。
ですから、資金繰り表は『作ろうと思えば簡単に、直ぐに作れる』という認識をお持ちのようです。

しかし後で述べるように、担当者にとっては決してそうではありません。
資金繰り表がその場限りの資料になってしまう背景には、こうした認識が少なからず影響していると思います。

資金繰り表を経営上重要な資料と位置付けて、活用できる資金繰り表にするために時間をかけて一緒にブラッシュアップしていく、という認識を共有して欲しいと思います。
担当者のモチベーションも上がり、役に立つ資金繰り表の作成、活用の道が開けます。

資金繰り表で振り返りを行い、業務を改善につなげる

資金繰り予測は、あくまで予測です。
しかし予測が大きく外れては、資金繰りの信頼性はガタ落ちですし、会社を危険な状態にしてしまいます。

とはいえ、保守的過ぎる資金繰りも問題です。いつまでたっても信頼される資金繰り表になりません。

1ヵ月前の予測と実績とを比べて差が生じた原因を特定し、できる対策を講じていくことが必要です。

予測と実際に差が生じる箇所は、売上の収入と仕入支払の予測部分であることが多いです。
固定費や投資、借入金の返済などは数字が予測しやすいのに対し、売上、変動費は会社の思い通りにならないからです。

とはいえ、差が生じた原因が売上、仕入の予測のみに起因するとは言い切れません。
掛で販売、仕入を行う会社では、翌月の予測は本来把握できるはずだからです。
できること、できないことを冷静に区分して、対策を講じましょう

取引条件のパターンが多過ぎて、予測を難しくしている原因となっているなど、改善点がきっと見つかると思います。
資金繰り予測に使えるデータの整理や管理を、全社を挙げてバックアップと情報連携をしてもらいたいと思います。

資金繰り表の作成を通じて 財務担当者の視座を引き上げる

資金繰り表の作成は事業の深い理解なくしては不可能です。

資金繰り表は、会社全体のお金の流れを表します。
会社全体を把握できなければ、資金繰り表は作成できません。

入金、出金にはどのようなパターンがあるのかを知り、それを分類、整理していくプロセスは、自社の事業を俯瞰して捉えることにつながります。

社員のレベルアップの機会として前向きに捉えて頂きたいと思います。

ブラックボックスを作らない

資金繰り表は、会社の実状に即して作るものです。
作成にあたっての唯一万能なルールは存在しません。

作成者によって作り方に違いがあります。
そのため、資金繰り表の作成の業務は属人化することになります。

帳尻を合わせるためのごまかしがあっても誰も気づけない、というのは好ましくありません。

実績、将来の数字がどのように集計されてくるのか、説明できるようにしておくことが重要です。

再現性の高い資金繰り表を目指して欲しいと思います。

資金繰り表をシミュレーションとして活用する

将来の売上高、入金額の予測をするということは、将来の売掛金の残高を予測していることと同じであることにお気づきでしょうか。

資金繰りの予測は、実は貸借対照表を含む予測期間の決算書を作成していくことと本質的に同じです。

キャッシュ・フロー計算書も資金繰り表もフォーマットは異なりますが、表したい内容は同じです。

資金繰り表は、「売上の予測がこうならば、資金繰りはこうなる」というようなシミュレーションツールとして活用してもらいたいと思います。

自社で資金繰りができないことは、事業に専念する上で大きな支障となりますので、優先順位が高い課題です。

自社の資金繰りが上手くできているかを振り返り、経営に上手く役立てて頂きたく思います。

*資金繰り表のイメージは、弊社ホームページの「お役立ちデータダウンロード」からダウンロードできます。
 

管理会計導入

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 執行役員 川合 和人
1997年 南山大学卒。MBA。中堅・ベンチャー企業の業績管理制度構築や業務改善、経営計画策定、事業再構築等のコンサルティング業務に従事。幅広い分野で経営者、経理責任者の参謀役として活躍中。
川合 和人の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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