攻めの経営戦略にM&Aの活用を!

会計

2015年の上場企業の手元資金が100兆円に近い水準になっています。日本経済新聞によれば、上場企業の業績が比較的好調なことや低金利での資金調達が可能であることがその要因とのことです。

但し、預金の利回りが低いので、手元資金があまり潤沢になりすぎると、総資産に対する利回り(ROA)や株主資本に対する利回り(ROE)が低下して、経営効率が下がることになります。

従いまして、手元資金が潤沢な上場企業は、より高い利回りが獲得できるように投資することが求められ、積極的にM&Aを活用しようとしています。

例えば、最近では、近鉄エクスプレスがシンガポールの物流会社を1400億円(手元資金は500億円)で、キヤノンがネットワークカメラの最大手を3300億円(手元資金は8400億円)で買収することが報じられていました。

日本では、1990年代に会計ビッグバンがおこり、キャッシュ・フロー計算書の作成が義務付けられ、それ以来、キャッシュ・フロー経営が経営戦略のひとつのトレンドとなりました。

キャッシュ・フロー経営では、売上や利益のみを重視するのではなく保有資産の効率性も追求し、事業活動で創出したキャッシュ・フローを投資や借入金圧縮に活用することにより、事業の成長性や財務の安全性を高めることが志向されます。

キャッシュ・フロー経営がトレンドとなって以降、上場会社の借入金依存度が低下し、手元資金が増加していますが、これは、これまで投資に積極的でなかったという証し、と見ることもできます。

今後、手元資金が潤沢な企業は、稼いだ資金でいかに効率のいい投資をするのかが経営戦略の一つのポイントとなってくるでしょう。

一方で、中小企業白書によれば、中小企業・小規模事業者の資金繰りDIはリーマンショック後の落ち込みから回復するものの、依然としてマイナスであり、厳しい資金繰り状況が続いています。

※資金繰りDI:前期に比べて、資金繰りが「好転」と答えた企業の割合から、「悪化」と答えた企業の割合を引いたもの。

また、起業希望者は1997年以降減少しており、2012年度は80万人強と100万人を下回りました。

起業家が起業を断念しそうになった際に直面した課題として資金調達をあげたのが全体の16.2%を占めており第1位の理由となっています。

つまり、中小企業・小規模事業者やベンチャー企業にとって資金調達はいまだ大きな経営課題となっており、資金調達ができれば社会的な付加価値増加に貢献できる機会がたくさんあると思われます。

ここから言えることは、手元資金が潤沢な企業が、もっと積極的に、日本国内の中小企業・小規模事業者のM&Aや資本提携に取り組むなど、ベンチャー企業に支援する機会を増やすことが望まれます。

これらの取組みが日本国内の経済成長にもつながるのではないでしょうか。
アタックス流のM&Aサポートについては当社HPをご覧ください。

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 代表取締役社長
中小企業診断士 池ヶ谷 穣次
1993年 静岡県立大学卒。MBA。中堅中小企業の経営管理制度・管理会計制度構築サポート、事業再生サポート、財務・事業デューデリジェンス業務、M&Aサポート、株式公開支援、月次決算支援業務等に従事。システムエンジニア時代に得たシステム思考を応用し、経営者・経理責任者の参謀役として活躍中。
池ヶ谷穣次の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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