実態貸借対照表で経営リスクを考える~事前に把握できるからこそ、まだ打つ手がある!

会計

東京商工リサーチ発表の統計によると、2013年に約3万社の企業が自主廃業をしたそうです。資産が負債を上回った状態での企業活動の停止を「休廃業」、商業登記等で解散が確認された場合を「解散」として集計した結果、2013年には2万8943社の休廃業・解散がありました。

イメージ一方、2013年の倒産件数は1万855社ですので、休廃業・解散数と合わせると約4万社の企業がなくなっており、そのうち約70%は自主廃業したということになります。

2003年の自主廃業は1万4181社でその割合は約50%であったことから、この10年で自主廃業が約2倍に増えていることがわかります。この自主廃業の増加は、事業承継の難しさを表しているといえます。

つまり、事業承継には、親族への承継、従業員への承継、第三者への承継が考えられますが、自主廃業はその何れも困難な場合に選択される手段であるからです。

自主廃業が増加したということは、それだけ事業承継者が不足している、承継しても事業を継続することや事業価値を増加させることが難しいと判断する人が多いことの表れとなります。

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一方で、自主廃業は、現経営者が一線から退く際の手法の中で唯一自らの意思のみで選択できるものでもあります。従って、本来、自主廃業が可能かどうかというのは、事前に把握しておいた方がよい経営情報の一つといえるのです。

経済的に自主廃業が可能かどうかは、資産が負債を上回っているかどうかで判断できますので、決算書の貸借対照表で確認することができます。但し、資産は時価で評価する必要があり、また負債も網羅的に計上しなければなりません。

例えば、資産のうち、在庫は販売可能価格、株券等の有価証券や土地建物といった不動産も売却可能価格で評価することになります。また、負債はリース債務や従業員への退職金なども認識しなければなりませんし、契約によっては事業用施設の撤去解体費用等も見込む必要があります。

このように必要な修正をしたうえで、資産が負債を上回っていれば、経済的には自主廃業も可能な状態であるといえ、一つの選択肢と考えることができるのです。

専門的には、こういった資産や負債を修正した貸借対照表を実態貸借対照表とか清算貸借対照表と呼んだりすることがあります。

経営課題や事業承継を考える中で、年に1回、決算書が完成した時に、この実態貸借対照表を作成して経営リスクを検討してみてはいかがでしょうか。

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 代表取締役社長
中小企業診断士 池ヶ谷 穣次
1993年 静岡県立大学卒。MBA。中堅中小企業の経営管理制度・管理会計制度構築サポート、事業再生サポート、財務・事業デューデリジェンス業務、M&Aサポート、株式公開支援、月次決算支援業務等に従事。システムエンジニア時代に得たシステム思考を応用し、経営者・経理責任者の参謀役として活躍中。
池ヶ谷穣次の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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