安全性(その2)~固定比率・固定長期適合率

会計

安全性(その1)~自己資本比率・流動比率・当座比率」からのつづきです。

(4)固定比率

固定比率=固定資産÷自己資本×100

 
固定比率は固定資産への投資額(つまり資金の運用)と自己資本との割合を示しています。

この比率が100%以下であれば、固定資産より自己資本の方が大きいということを意味しますので、会社が長期に所有する固定資産が他人資本に依存せず自己資本だけで資金調達されていることとなり、経営は健全であると言えます。

固定資産への投資は回収には長期間が必要であり、なるべくなら返済する必要のない自己資本の範囲内で投資をした方が望ましいということです。

(5)固定長期適合率

固定長期適合率=固定資産÷(固定負債+自己資本)×100

 
「固定比率」は、分母が自己資本だけでしたが、
「固定長期適合率」では、分母に長期間支払う必要がない社債や長期借入金といった固定負債を加えます

固定比率よりはやや緩い指標となりますが、固定比率同様、固定資産に投資するための資金調達の面で、経営が健全であるかどうかを考えようというものです。

固定比率は100%を超えているが、固定長期適合率が100%以下であれば一応固定資産への投資は健全であるということになります。

過剰な設備投資をしないために

ところで、分子の固定資産には、有形固定資産と無形固定資産と投資その他の資産が含まれますが、ほとんどの中小企業は固定資産の大半は有形固定資産でしょう。

有形固定資産には製造業であれば、工場の土地、建物、機械といった設備への投資があります。
卸売業、小売業であれば、物流センター、小売店舗の土地、建物、備品といった設備投資が考えられます。

土地以外の建物、機械、備品へ投資した資金は減価償却という方法で回収されます。
減価償却費は利益から差引かれる現金の支出を伴わない経費です。

会社の経営が順調で投資された設備が十分に稼働し、投資された資金が製造、販売活動を通じて減価償却によって正常に回収されていればよいのですが、物余り時代、少子高齢化などで販売が徐々に減少し、結果的に過剰設備投資となり、資金難に苦しんでいるケースも多いようです。

このような現実を考慮すると、自己資本の範囲を超えて他人資本である固定負債で資金調達して投資を行う場合には、借入金の返済について十分な見通しを立てた上で意思決定することです。

計画通り返済ができなくなった場合のシミュレーションもあらかじめ考えておくぐらいの慎重さが必要です。

たとえ銀行が貸してくれるからといって甘い投資判断で借入金で投資をすることはきわめて危険です。

銀行は「晴の時には傘を貸し、雨の時には傘を持ち帰る」というではありませんか。

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顧客事例集(会計)

筆者紹介

アタックスグループ 代表パートナー 公認会計士・税理士 丸山 弘昭
数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。
丸山弘昭の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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