オーナーの視点から考える総資産利益率とは!~事業投資の意味を考えたことがありますか?

会計

最近、決算書の見方や財務分析等についての講演依頼が増えてきました。厳しい経済環境下、企業の生き残りをかけるためにも、自社のことをもっと知ろうというニーズが増えてきたのだと感じています。そして、決算書の重要性を再認識されているように思います。

今日は、総資産営業利益率について考えてみたいと思います。総資産営業利益率は、以下の公式で計算されます。

営業利益 ÷ 総資産

果たしてこれは、オーナーにとって何の意味があるのかよくわからない。結果的に経営に使えそうにもない、と思われる方も多いと思います。

しかし、本当は自分たちの資金が効率的に事業で活用されているかどうかを分析するのに非常に重要な指標です。

営業利益とは、通常でいえば売上総利益(すなわち粗利)から、販売費および一般管理費を引いた残りの金額です。別の言い方をすれば、本業で儲けた利益とも言えます。

総資産とは、棚卸資産と売上債権と不動産等の総合計金額を言います。別の見方をすれば、どれだけの現金を資産に投下しているかを表しています。

営業利益を10、総資産を2000とすると、総資産営業利益率は0.5%となります。これは、100の現金を資産(事業)に投入した結果、0.5を儲けたことを意味します。

では、お伺いします。8月1日現在の新発10年国債の利回りはご存知ですか?8月2日の日経新聞によりますと、0.775%です。

上記のケースとの比較で考えますと、これは何を意味するのか。おそらく元本保証である国債に投資しても0.775%の利回りを確保できます。一方、リスクを抱え元本保証ではない本業に投下すると0.5%の利回りです。

もし経済合理性だけを求めるならば、本業に投資している資産をすべて現金化し、その資金で国債を購入した方が得だ、ということになるのではないでしょうか。

特に100%オーナー企業の場合、基本的には資産はすべて自分のものです。つまり、事業に資金を投下することも、国債に投下することも、どちらもできるはずです。

会社の資金を最大限に効率活用しようと思えば、少なくとも事業投資は、実質的には元本保証に近い国債の利回り以上のパフォーマンスを求めるべきです。リスクのある事業投資をする以上は、国債の利回りより4%以上は高い利回りがほしいとは思いませんか?

これは、財務という視点に偏った乱暴な議論なのかもしれません。でも、生き残りをかけて投資をする以上、最大のパフォーマンスを楽しむべきです。

是非、自社の資金が効率的に活用されているのか、この総資産営業利益率で検証してみてはいかがでしょうか?

筆者紹介

アタックスグループ 代表パートナー 公認会計士・税理士 林 公一
1987年 横浜市立大学卒。KPMG NewYork、KPMG Corporate Finance株式会社を経て、アタックスに参画。KPMG勤務時代には、年間20社程度の日系米国子会社の監査を担当、また、数多くの事業評価、株式公開業務、M&A業務に携わる。現在は、過去の経験を活かしながら、中堅中小企業のよき相談相手として、事業承継や後継者・幹部社員育成のサポートに注力。
林公一の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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