自社株の課題解決における3つの鉄則!~後悔しないために押さえておきたいこと~

税務

昨年12月に平成31年度税制改正大綱が公表されました。

「個人事業者」の事業承継を促進するための納税猶予制度創設

平成30年度の自社株式にかかる事業承継税制の特例制度に続き、今回は、個人事業者の事業承継を促進するための新たな納税猶予制度が創設されています。

平成30年度の事業承継税制の特例制度は、2027年末までの10年間に限り、後継者が相続等により取得した自社株式について、後継者による事業継続などの要件を満たした場合には、取得した自社株式にかかる贈与税・相続税の全額を、後継者の死亡日等まで猶予するという制度です。

一方、今回の個人事業者の事業承継にかかる納税猶予制度は、2028年末までの10年間に限り、後継者が相続等により取得した個人の事業用の土地や建物機械等について、後継者が事業継続する場合には、その事業用資産の課税価格にかかる相続税・贈与額の全額を猶予するというものです。

事業承継のご相談が増加

このように、最近の税制改正は、中小企業や個人事業者の事業承継を後押しするものが盛り込まれています。

ただでさえ、中小企業は後継者不足、経営者の高齢化が進んでいますので、高い税金がネックとなり後継者が事業承継に後ろ向きになると、中小企業の廃業などはさらに加速してしまうことになります。事業承継の促進は、まさしく日本経済にとっての最重要課題なのです。

私どもにおいても事業承継の課題解決にあたる機会が本当に増えています。とくに、自社株に関する課題です。

・親族株主やOB株主を整理して後継者にできる限り集約したい
・従業員持株会の運営に問題があるので見直したい
・事業承継税制などを使って後継者に自社株を移したい

その自社株対策は大丈夫?

事業承継税制に関係するものではありませんが、これらの事例の中から1つ取り上げてみましょう。

ある会社の社長が持っている自社株の評価は1株1万円。高額でしたので後継者に全部譲ることはできず、従業員持株会をつくり、発行済株式の30%程度を1株7千円で譲渡しました。

しかし、従業員にとっては7千円でも高額です。幹部に依頼し、10%程度は引き受けてもらったのですが、残りの20%程度は引き受け手がいません。会社からお金を貸して、持株会の名義にしていますが、いまだに引き受け手の目処はたっていません。

自社株に関する課題を解決しようと手を打ったわけですが、残念ながら良い解決に至ったわけでなく、引き受け手のない自社株の発生など、別の課題が残る結果になっています。

何が問題だったのでしょうか。どうすれば上手な課題解決ができたのでしょうか。実は、自社株に関する課題解決には押さえておきたい鉄則があります。

自社株に関する課題解決の3つの鉄則

第1に、株主構成の「あるべき姿」を描くことです。会社の将来にとって最も望ましい姿を検討したうえで、現状の株主構成とのギャップを把握するのです。

事例では、相続税における財産圧縮や納税資金確保に重点を置いてしまったためか、「あるべき姿」が十分に検討されなかったように思います。常にゴールを頭に置いて進めるようにしてください。

第2に、メリットだけでなくリスクも把握することです。課題解決の手法は1つではありませんし、どの手法にもメリットとリスクが存在します。

たとえば、従業員持株会は、従業員のモチベーションアップや福利厚生、オーナー家の相続対策になるというメリットがあります。一方で、引き受け手がない自社株が発生すると従業員持株会が中途半端な状態になるなどのリスクもあります。メリットと同時に、リスクを把握したうえで、最適な手法を決めるようにしてください。

第3に、プロの知恵を活用することです。自社株に関する課題解決にあたっては、複数のプランから最適なものを選択することになりますが、それは税法だけでは判断できません。

会社法や民法も関係してきます。税法においても、相続税だけでなく、所得税や法人税が絡む場合があります。豊富な知識と知恵を持つ税理士や弁護士などのプロをうまく活用して進めることが大切です。

自社株は、デリケートなこと、厄介なことが多い経営課題です。だからこそ、後継者に引き継ぐ前に、現社長が片付けておかなければなりません。ぜひ参考にされ、早めに着手していただきたいと思います。

アタックス税理士法人では、財産承継支援、自社株承継支援など様々な事業承継に関する課題解決のためのご支援を行っています。
お気軽にご相談ください。

筆者紹介

アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 磯竹 克人
1987年 名古屋市立大学卒。税務・会計の業務を中心に数多くのクライアントに対する指導実績を持ち、親切で丁寧な指導が厚い信頼を得ている。現在は、事業再構築支援、事業承継支援、資本政策支援などを中心にクライアントの問題解決にあたっている。
磯竹克人の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました