自社株対策~今の持ち株比率で安心できますか?

事業承継

上場企業の今年6月開催の株主総会において、株主提案を受けた企業が42社と過去最高となりました。
株主提案の内容としては、配当の積み増しや企業統治に関するものが多いようです。
何れにしても、今後、ますます株主を意識した経営が求められることになっていきそうです。

会社経営と株主の関係を気にしなければならないのは、何も上場会社に限ったことではありません。
中小企業の経営においても株主や自社株は重要であり、ときには優先して解決しなければならない課題となる場合もあります。

私は、日頃から、自社株に関する次のような相談をいただきます。
「後継者に自社株を移していきたいが、どの様に進めたらいいのか?」
「自社株の評価が高くて困っている、何か対策はとれないだろうか?」
その内容は会社によって様々ですが、経営者の持ち株比率を含めた、株主構成の見直しに関する相談も案外多いものです。

最近の相談事例の中から、1つ採りあげてみましょう。

実際にあった持ち株比率のご相談

A社は業歴がとても長い、いわゆる老舗の会社です。
その会社の後継者が、事業の承継について考え始めたとき、不安に感じたのが株主構成の問題でした。
会社の株主名簿を見せてもらったところ、祖父の世代で株が3家に分散してしまっています。

親族とは言え、今ではまったく顔を合わせない人もいるとのこと。
過去において、良かれと思い分け与えたのでしょう。
その結果、後継者が不安になるほど自社株が分散してしまったわけです。

このまま事業を引き継いだら、親族株主との間でトラブルが起こるかも知れません。
そうはならないとしても、親族株主との良好な関係づくりのために多大な時間を費やさないといけないかも知れません。

今のうちに解決しておきたいと考えるのは当然のことです。

さらに株主名簿を見ると、現社長と後継者の持ち株を合わせても、30%程度にしかなりません。
会社の経営者としては、最低でも過半数(50.1%)、できれば3分の2以上(66.7%)の持ち株比率が欲しいわけですが、これでは事業承継後も低いままになってしまいます。

そうすると、重要なことを決めようとするときは、親族株主の同意が要ることになります。
なかには反対されて実現できないこともあるでしょう。

すべてが悪いことばかりではないのでしょうが、少なくとも会社経営や事業に関係していない株主に賛同し続けてもらわなければならないという状態であることは確かです。

会社経営に直結する持ち株比率

中小企業にとって、株主構成や経営者の持ち株比率は、会社経営の「土台」のようなものです。
事業を伸ばし、順調に業績を上げていたとしても、肝心要の「土台」が崩れ落ちる事態が発生したら、事業に大きな損失をもたらすことも想定されます。

したがって、この「土台」を強固にしておくことは、重要な経営課題の1つであるわけです。

そこで押さえておきたいポイントは、経営者グループの範囲をどう捉えるかということです。

現社長と後継者は当然ここに含まれるとして、それ以外の株主の誰が経営者グループに含まれるかを正しく見極めたうえで株主構成を見直すことが大切です。

事業承継時期を迎えている会社はもちろん、そうでない会社でも、現在の株主構成や経営者の持ち株比率に問題がないか、安定経営の視点から、いま一度確認しておきたいものです。

アタックスグループでは、後継者育成のための「アタックス社長塾」のほか、自社株対策など様々な事業承継に関する課題解決のためのご支援や事業承継セミナーを行っています。
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筆者紹介

アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 磯竹 克人
1987年 名古屋市立大学卒。税務・会計の業務を中心に数多くのクライアントに対する指導実績を持ち、親切で丁寧な指導が厚い信頼を得ている。現在は、事業再構築支援、事業承継支援、資本政策支援などを中心にクライアントの問題解決にあたっている。
磯竹克人の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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