早期退職優遇制度とは?希望退職募集との違いや設計・運用方法を解説

経営

新型コロナウイルスの影響で、上場企業を中心に早期退職・希望退職者の人数が増加しています。

東京商工リサーチの調査によると、2020年9月14日の時点で2020年の上場企業の早期・希望退職者募集が1万人を上回ったようです。

この数字は、6年ぶりに1万人を上回った前年よりも1ヶ月早いペースです。今後、さらに拡大し、リーマンショック以降で最多だった2012年の水準(17,705人)に迫る勢いです。

そこで今回は、「早期退職・希望退職の違い」「早期退職優遇制度の設計と運用の実務」を分かりやすく紹介します。

早期退職と希望退職の違い

早期退職優遇制度とは?

早期退職優遇制度とは、従業員に対して定年前の退職を促し、それに応じた従業員に対して、退職金支給等の面で優遇する制度です。

早期退職優遇制度は中長期的な観点で経営上の必要性から、過剰人員を削減したり職種や年齢などの人員構成の偏りを是正したりする目的で行われます。

また、最近はシニア層の従業員に対して、セカンドキャリアを促し、将来の生活設計を支援することも目的の1つとして挙げられることがあります。

そのため、早期退職優遇制度は人事制度の1つとして恒常的に運用されていることが特徴です。

希望退職募集とは?

早期退職優遇制度に似たものとして希望退職募集があります。

希望退職募集も定年前の従業員の中から希望退職者を募って、それに応じた従業員に対して退職金支給等の面で優遇すると言う点で早期退職優遇制度と似ています。

しかし、希望退職募集は今回のコロナ禍のように経営状態が危機的状況に陥ったことによって緊急に雇用調整が必要となった際に臨時で実施されます。

緊急に雇用を調整する必要が生じた場合に短期間で行われる一時的な措置であるという点が、恒常的に運用される早期退職優遇制度とは異なります。

早期退職優遇制度の設計

1.適用対象者の特定

対象となる従業員の範囲は、各企業の実情に応じ、任意で設定が可能です。

適用対象者の範囲としては、以下のような条件を設けることが多いです。

  • 正社員
  • 満○歳以上
  • 勤続年数が○年以上
  • ○等級以上
  • 特定の職種
  • 特定の部署

2.承認条項の設定

承認条項とは、適用対象者として設定した条件に当てはまる従業員であっても、会社が制度の適用を認めたくない者を、制度の適用対象者から外すための条項です。

承認条項の例文
「会社が不適当と認めた者は、本制度の適用を受けることができない。」

これによって、会社にとって必要な人材の流出を防ぐことができます。また、懲戒解雇を予定している者など本制度の適用を受けさせることが相当でない者についても、適用を拒否することができます。

逆に承認条項が定められていない場合、制度の適用対象者であれば、原則として、全員の制度適用を認めなければならないと考えられますので、注意が必要です。

また、承認条項を設けた場合、制度に申し込みをした従業員は、自身が制度の適用を受けられるかどうかわからない不安定な状態に置かれることになります。

そのため、制度の申し込みがあったら、できるだけ早く承認の可否の判断を行い、本人に通知することが必要です。

3.優遇措置の検討

早期退職優遇制度を実効性のあるものにするためには、従業員が制度への申し込みを検討するに値する相当程度の退職金の加算等の優遇措置が必要です。

どのような優遇措置をどの程度実施するかは、制度の実効性の確保と優遇措置による負担が会社に与える影響を総合的に考えた上で判断がしなければなりません。

退職金の加算方法としては以下のようなものが挙げられます。

  • 退職金の計算を「自己都合」ではなく「会社都合」にする
  • 退職金の支給率を定年まで勤務したものとみなして計算する
  • 退職金に基本給の○カ月分を加算する
  • 退職金の支給に一定の率を割り増しして計算する    など


※一般的に退職金の加算は若い年齢で退職するほど加算額が大きくなることが多い

また、従業員の転身を支援するという観点から会社の負担で転職支援サービスを利用させるなどの再就職支援措置を講じることや、再就職活動を行うための特別有給休暇を付与することも考えられます。

4.規程の作成

早期退職優遇制度を導入する場合は、制度の内容を明確にするとともに、対象となる従業員に対してしっかりと周知徹底する必要があります。そのために、規程の作成が必要です。

規程には以下のような条文を記載します。

  • 目的
  • 適用対象者
  • 適用を受けるための手続き
  • 退職日
  • 退職者の責務
  • 優遇措置        など

5.運用上の留意点

制度の申し込み後、実際にいつ退職することになるかは、従業員にとって重大な事項です。本制度を活用した場合に、退職の効力が生じるのがいつになるかも規定しておく必要があります。

実務的には以下のような内容も規定に記載しておくと役立ちます。

  • 制度の申し込みができる時期
  • 申し込み方法
  • 申し込み先   など


当然のことながら、後に言った言わないという争いが生じる恐れがあるため、制度の申し込みや会社からの承認通知等は書面によって実施すべきです。

筆者紹介

l_masuda

株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング
取締役 社会保険労務士・産業カウンセラー
増田 将信(ますだ まさのぶ)
1986年岐阜県生まれ。名古屋市立大学経済学部卒業後、社会保険労務士事務所勤務を経て、2010年株式会社アタックス入社。前職では、社会保険や労働保険の手続き業務を中心に、顧客担当者として幅広く労務管理業務に従事。現在は、前職の経験を活かし、人事制度構築や労務管理支援等のコンサルティング業務に携わっている。

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