「同一労働同一賃金」法改正に向けて~企業の説明責任とは?

政府が今国会での成立を目指している働き方改革関連法案には以下の3点に関する法改正が盛り込まれています。

(1) 長時間労働について時間外労働の罰則付きの上限規制
(2) 非正規社員、正規社員の格差を埋めるための同一賃金同一労働の導入
(3) 高度プロフェッショナル制度の新設

その中でも今回は(2)の「同一労働同一賃金」について考えていきたいと思います。

同一労働同一賃金とは、大雑把に申し上げると「同じ仕事をしているのであれば、正規か非正規かに関わらず同じ賃金」という考え方です。現段階では、あくまで非正規雇用と正規雇用の格差を埋めるということが目的です。 そのため、正規雇用(総合職と一般職など)の間の格差の是正までは要求されていません。

これまで日本では雇用慣行として、職務の範囲は曖昧な状態で労働契約が結ばれていました。 そのため、正規雇用と非正規雇用で賃金に差を設けているにも関わらず担っている職務は同じであるという状態が多くの会社で見られます。

法律が成立すれば、今後はこのような状態は認められません。 これからは非正規社員と比べて正規社員の賃金が高い理由について、“雇用期間の定めがない”というだけでは成り立たなくなります。 従来の雇用慣行が崩れてしまうということです。

現在の法案において、同一労働同一賃金は大企業で2020年、中小企業で2021年の施行が予定されています。 それまでに企業としても対策が必要です。

今回の法改正に先立ち、厚生労働省は「同一労働同一賃金ガイドライン案」を策定しています。

厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン案」

非正規社員を雇用されている企業は現在の自社の状況を確認するための判断基準としてご活用ください。

また、同一労働同一賃金の機運の高まりとともに、それに関連する労使紛争も増加しています。

【長澤運輸訴訟】
嘱託社員が定年後の再雇用で賃金を下げられたのは不当とした訴訟において、2審東京高裁は「定年後の賃下げは社会的に容認されており、不合理とはいえない」として、1審東京地裁判決を取り消した

【ハマキョウレックス訴訟】
契約社員のトラック運転手が正社員と手当に違いがあるのは違法と訴えた裁判において、2審大阪高裁は無事故手当などの格差も違法と認め、77万円の賠償を命じた

現状の判例では、全ての格差を違法と判断しているわけではなさそうです。上記2訴訟は最高裁に上告されており、夏頃までに判決が言い渡される見通しです。

現在の国会の状況から、同一労働同一賃金が法制化される時期は不透明です。しかし、上記2訴訟の判決次第では、法制化に先行して、同一労働同一賃金に関する訴訟の増加が懸念されます。

現在の問題は正規雇用と非正規雇用の処遇の格差です。しかし、今後は正規雇用の間の格差も問題となってくるのではないでしょうか。 企業においては、“なぜその賃金を支給しているのか”という点に関する説明責任がより一層求められてきます。 属人的な要素(雇用形態、年齢、勤続年数、性別など)ではなく、職務を基準とした賃金体系への変遷期に差しかかっているのではないでしょうか。

アタックスグループでは、法改正に伴う人事制度の整備や、就業規則の改訂をサポートいたします。お困りの方はお気軽にお問い合わせください。
【アタックスの人財・組織活性化サポート】

筆者紹介

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株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング
社会保険労務士・産業カウンセラー
増田 将信(ますだ まさのぶ)
1986年岐阜県生まれ。名古屋市立大学経済学部卒業後、社会保険労務士事務所勤務を経て、2010年株式会社アタックス入社。前職では、社会保険や労働保険の手続き業務を中心に、顧客担当者として幅広く労務管理業務に従事。現在は、前職の経験を活かし、人事制度構築や労務管理支援等のコンサルティング業務に携わっている。

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