将来への投資を怠ったつけは必ず衰退という形で現れる

経営

皆様はジェームズ・C・コリンズ氏著の「ビジョナリーカンパニー」は読まれましたか?1995年に出版されたこの本はベストセラーですので、恐らく多くの方がお読みになったと思います。 そのシリーズの三冊目に「衰退の五段階」という本があります。私がこのシリーズの中で一番関心を持った本です。私のセミナーでもお話することもあります。

今回、この本を取り上げたのは、

・最近、私のクライアントに経営上の問題として起こっていること
・私が多くのクライアントの会議でその必要性を強く申し上げていること

が、この本に書かれているからです。ぜひ、経営者の皆様には心に留め置いていただきたい内容です。

それは、ビジョナリーカンパニー3「衰退の五段階」のうち、衰退の第一段階として書かれている要旨です。

第一段階 成功から生まれる傲慢 
成功を当然視し、当初に成功をもたらした基礎的要因を見失う。また、次の成功のために、新たな機会を追求し、主要な弾み車を回し続ける努力を怠る。

今回のテーマとして取り上げたいのは、「主要な弾み車を回し続ける努力を怠る」という部分です。

現時点で自社に利益をもたらしている要因は何か?をしっかり認識しておられるでしょうか?製品や商品に魅力がある、あるいは、価格がリーズナブル、営業力がある、サービスがきめ細やかなど、いわゆる競争力が高いから自社に利益をもたらすのでしょう。では、その弾み車(利益をもたらしている要因)を回し続けているでしょうか?

つまり、商品力を保つための投資や改良あるいは社内教育などです。そして、利益をもたらしている得意先との関係強化や、そうした得意先の開拓も弾み車を回す努力ですね。

特に、製造業や賃貸業そしてホテル等の設備産業は設備に投資することが弾み車を回し続ける重要項目のひとつです。 製造業では、新しい製品や技術を生み出すことの方が重要ではないかという意見もあるでしょう。それはもちろん重要ですが、現在、利益をもたらしている製品が設備投資によって長く競争力を保ち続けることで、新しい製品の開発資金も潤沢になるというものです。

それはわかっていても、設備の更新には大きな金額が必要になるので、できることなら、ぎりぎりまで支出を控えたいと考えるのももっともなことです。特に、それほど利益が計上できなかった場合は先送りしたいのが人情です。 しかし、その先延ばしが確実に会社の力(強み=成功をもたらした基礎的要因)を奪っていくことは間違いのない事実です。

では、今は業績はまずまずだが弾み車を回し続ける努力(投資等)はあまりしていない(資金的にできない)、という場合はどうしたら良いでしょうか?

私は、中長期的に経営を見ることをお勧めします。中期経営計画を作るのです。何も大上段に構えて厚さが1センチもあるような計画書にする必要はありません。会社の将来の経営目標を掲げ、そこに到達するためにやるべきことや課題をきちんと整理することで論点が整理されます。 そのなかで、当然「投資をしなければならない」という課題が出るはずです。その議論を深めて計画に織り込めば、どんな投資が、いつ必要で、資金はいくらかが見えてきます。

私が多くの企業を拝見してきて強く思うことは、投資(弾み車を回し続ける努力)は絶対に怠ってはダメということです。将来への投資を怠ったつけは必ず衰退という形で現れます。しかも、ボディブローのように。

ぜひ、皆様の会社でも弾み車を回し続ける努力を全社で実行するために、将来の会社の姿を描く=中期経営計画を策定することをお勧めします。

【アタックスの中期経営計画支援】

筆者紹介

株式会社アタックス戦略会計社 代表取締役会長 片岡 正輝
1952年生まれ。アタックス税理士法人の前身である公認会計士今井冨夫事務所に入社。現在は、アタックスグループの統括マネージャーとして、広範囲な知識と豊かな経験という両輪を武器に、経営・財務・会計業務を中心に計画経営の推進、経営再構築、事業承継等のコンサルティング業務に従事、経営者の参謀役として絶大なる信頼を得ている。
片岡正輝の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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