“大塚家具”を他山の石とせよ~事業承継の成否を決めるもの

大塚家具で巻き起こった一連の騒動は皆様の記憶に新しいと思います。

創業者で会長である大塚勝久氏と長女で社長を務める大塚久美子社長が壮大な「父娘喧嘩」を繰り広げ、経営権を巡って株主総会での委任状争奪戦(プロキシ―・ファイト)にまで発展した本事案は、企業のガバナンスのあるべき姿について考えさせられる事例であったと言えます。

委任状争奪戦は久美子社長が勝利し、勝久会長は退任することとなりましたが、この騒動が大塚家具の経営の足かせとなったことはまぎれもない事実だと思います。

本事例は大塚家具が上場会社であるがゆえに、「オーナー経営からの脱却」、すなわち透明性の高いガバナンスの是非が委任状争奪戦における主要争点となり、世間の注目を集めることとなりました。

しかしながら、いわゆる「お家騒動」は、オーナー経営者が圧倒的に多い中堅中小企業において非常に身近な話題ではないかと思います。

私が過去関与したクライアントの社長は、以下のような悩みを抱えておられました。

A社社長 
「創業者である父親から社長の座を継いで10年たつが、会長となった父親は依然として影響力が強く、どうやら幹部層に対して自分を介さず直接指示を行っているようだ。幹部層も社長である自分を軽視しているように感じ、非常にストレスが溜まっている。」

B社社長 
「自分には息子がいなかったが、娘が結婚し義理の息子が入社した。後継者が出来たことが非常に嬉しく、入社した3年後に社長の座を譲ったが、彼は自分の経営方針を完全にリセットし、新たな方針を次々と打ち出している。社員も急な方針転換に困惑しているようだ。もう一度自分が社長に返り咲くべきか悩んでいる。」

両社社長は、社長の座を譲る立場・譲られる立場という違いはあるものの、よく話を聞いてみると1つの共通点を見出すことが出来ました。

それは、事業承継に当たってお互いに十分な話し合いが出来ていなかったということです。

両社ともに、「息子である以上会社を継ぐことが既定路線である」ということが大前提となってしまい、後継者が承継後に会社をどのように舵取りしていきたいのか、そのために、父親に対してどのようにサポートして欲しいのかということについて、互いに遠慮もあり腹落ち出来るまで話し合いが出来ていなかったのです。

先述の大塚久美子社長の経歴を見ると、2009年に代表取締役社長に就任後、約5年間その座を務めましたが、2014年7月に代表取締役を解任され、2015年1月に再び代表取締役に就任しています。

さらに2009年以前の経歴を見ると、1996年から2004年まで取締役を務めた後、一旦同社を退職しコンサルティング会社を設立しています。

2009年の代表取締役就任は、経営能力面で長男の勝之氏よりも久美子氏が優れているとの判断の下、勝久氏が久美子氏に白羽の矢を立てたと言われていますが、それ以前に久美子氏が同社を一旦退職していることを見ても、父親の勝久氏との間には長期間に亘る確執があったものと推測されます。

私はここに事業承継の難しさがあると思います。
「経営能力の有無」というものさしだけでなく、価値観・性格といった理屈だけでは説明できない要素も含めて、「コイツになら会社を安心して任せることが出来る」との確信のもとに事業承継に踏み切ることが理想です。

しかしながら、特に一族承継が既定路線となっている場合には不満足な面があったとしても、ある程度目をつぶらざるを得ないケースも多いと考えられます。

たとえ一族承継が既定路線である場合でも、事業承継計画を早期に立てて、計画に沿って後継者に経験を積ませ、その中で徹底的に現経営者の思いを伝え、後継者の思いを聴く機会を設けていくことは、非常に重要であると考えます。

アタックスグループでは「企業の永続支援」をモットーとして事業承継サポートを行っております。詳しくはこちらをご覧ください。

筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング
取締役 公認会計士 万野 裕人
2003年 京都大学卒。中央青山監査法人において現場責任者として大手電子機器メーカー等約20社の監査業務に従事。アタックス参画後は、多数の企業再生支援業務・M&A支援業務等のプロジェクトマネージャーとして活躍中。
万野裕人の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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