事業承継税制見直しへ-株式承継対策は3つの視点で考える-

平成25年度税制改正大綱の議論が続いていますが、そのなかで、中堅中小企業の経営者に注目いただきたいのが「事業承継税制の見直し」です。

「事業承継税制」は相続税と贈与税の納税猶予に関する税制で、中小企業の事業承継を後押しするため平成21年度税制改正で創設されました。相続税の納税猶予制度でいえば、後継者が相続で自社株を取得した場合、このうち一定の株式等についてはその評価額の80%相当の相続税の納税が猶予されるのです。

それほどメリットが高い制度なら、きっと多くの方が利用しているはずと思われるかも知れませんが、実はこれまでの利用実績は芳しくありません。過去4年間で549件、1税務署1件程度という何とも寂しい結果です。

どうしてこのような結果になったかと言うと、適用要件があまりにも厳しく、決して使い勝手の良いものではなかったからではないかと思います。相続税の納税猶予制度で言えば、適用後5年間はその株式を1株たりとも譲渡できませんし、従業員の雇用の80%を維持しなければなりません。守れなければ、原則、猶予税額に利子をつけて一括納付せねばならず、その適用にあたっては大きなリスクも伴います。

私もこれまで何人もの経営者、後継者の方から「事業承継税制」の利用について相談をいただきました。しかしながら、

「何らかの要因で適用要件を守れないときの負担が重すぎる。」
「自然退職増加の時期もあり、本当に雇用80%を守れるかどうか分からない。」
等々の理由から、検討は行うものの実際に活用するまでには至っていません。

税制改正大綱を待つことになりますが、今回は、この事業承継税制の適用要件が大幅に緩和される見込みです。後継者が安心して経営に全力をあげられる環境づくりに役立つ制度になることを期待しましょう。

最後に株式承継対策について触れておきます。この事業承継税制も有力な一手には違いありませんが、株式承継対策では最適な手段をとることがとても重要です。会社や後継者の状況、株価のレベル、長期的な方向性などを踏まえた最適な手段です。そのためには、次の3つの視点で考えていかれると良いでしょう。

(1) 複数案を検討する(いくつかの選択肢を検討し、最適な手段をとれる準備をする)
(2) リスクを軽減する(過大なリスクは放置せず、可能な限りリスクの度合いを引き下げる)
(3) じっくり考えて決断する(タテ・ヨコ・ナナメからじっくり考えたうえで判断する)

自社株にまつわる恐怖からの脱出法

筆者紹介

アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 磯竹 克人
1987年 名古屋市立大学卒。税務・会計の業務を中心に数多くのクライアントに対する指導実績を持ち、親切で丁寧な指導が厚い信頼を得ている。現在は、事業再構築支援、事業承継支援、資本政策支援などを中心にクライアントの問題解決にあたっている。
磯竹克人の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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