どうなる中国経済?~2022年の変調を見逃すな!

経営

中国の2021年のGDPは?

先日、中国の2021年のGDPが発表されました。
それによると、名目GDPは114兆3,670億元となり、2020年の名目GDPの101兆3,567億元に比べて+12.8%となりました。

実質ベースでは+8.1%です。驚異的な成長率となりました。
2020年末の総人口14億1,260万人で割ると、一人あたりGDPは80,962元になります。

足元のレートで簡易的に計算したドルベースでは12,954ドルになり、いわゆる「10,000ドルの壁」をクリアしました。2019年もクリアしていましたので、二年連続のクリアです。
このまま「中所得国の罠」を突破して、高所得国の仲間入りを果たしそうな勢いです。

直近の中国の経済指標

ただ、直近の経済指標は伸び悩んでいます。
GDPに影響を与える消費と投資の直近の動きは以下のようになっています。

社会消費

2021年10月以降、前年同月比で10月が+4.9%、11月が+3.9%、12月が+1.7%と推移しています。
直近3か月は成長率が鈍化しています。

固定資産投資(農業セクターを除く)

2021年1月~3月が前年同月比+25.6%だったのに対して、2021年1月~12月は前年同月比+4.9%に鈍化しています(なお、2020年1月~12月は2019年1月~12月に比べて+2.9%でした。対して2021年1月~12月は+4.9%ですので改善しているように思えますが、2020年前半はコロナで低迷していましたので改善することは予想されていました)。

不動産業界も不振で、デベロッパー開発投資は、2021年1月~3月が前年同月比で+25.6%だったのに対して、2021年1月~12月は前年同月比で+4.4%になり、これも鈍化しています。

商品住宅販売総額は、2021年1月~3月が前年同月比で+88.5%でしたが、2021年1月~12月では前年同月比で+4.8%と大幅に鈍化しました。
販売総額を販売総面積で割った単位当たりの販売金額も低下が続いています。

どの指標も、プラス成長ではあるも成長スピードは鈍化している、というような状態です。


 

不動産が高いことで知られる深セン市の家賃相場は、2021年の平均家賃は2020年に比べて▲5.5%になりました。2021年平均は70元/㎡で、2017年の水準まで下がっているそうです(深セン中原研究センター調べ)。

このようにマイナス成長になっている指標もあります。

不動産業界に対する貸出規制は続いていますし、不動産税の導入も予定されていますので、しばらくは厳しい状況が続きそうです。

2020年前半はコロナで経済が低迷しましたので、2021年の経済成長は相対的に高くなり、見た目好調のように思えますが、時系列でみると楽観的な状況ではないのが分かります。

中国政府の対策の状況は?

この経済状況に対して、中国政府も対策を打っています。
税制面では、以下の優遇税制が延長されました。

小規模薄利企業に対する軽減税率適用の延長継続

年間所得100万元以下などの条件を満たす小規模薄利企業に対する軽減税率が2022年まで延長されました。

年一回賞与に対する優遇の延長継続

2021年末で終了する予定だった優遇が2023年まで延長されました。

よって、これまでどおり、年一回賞与は年収に含めず単独で税額計算できますので、税負担が増えずに済むことになりました。

外国籍社員の費用控除の優遇の延長継続

2021年末で終了する予定だった優遇が2023年まで延長されました。

外国籍社員は家賃など実費負担収入については免税でしたが、2019年の税制改正で控除方式に切り替わる予定でした。控除方式になると、家賃金額に関わらず控除額が一定のため、課税対象所得が増えてしまい、手取りが減ることが予想されていました。

これが延長されたことで税負担が増えずに済むことになりました。

今後の展望

これら対策が出されていますが、広い範囲をカバーするものでもありませんので、効果は限定的ではないかと言われています。
不動産業界への規制、教育産業への規制、IT産業への規制などの影響で下振れしている経済成長を下支えするところまで至らないのではと指摘されています。

秋には共産党大会があり、習近平政権の第三期目がスタートすると予想されています。三期目スタートで政権基盤が強固になりますので、政策目標である共同富裕の実現のために、独占企業や富裕層への対策がさらに厳しくなると予想されています。

2021年は、コロナで低迷した2020年との比較でしたので、成長率は高くなりましたが、2022年は相当鈍化すると予想されます

中国経済の変調は、日本経済にも影響を与えます。中国ビジネスをされているいないにかかわらず、中国の動向を注視していただければと思います。

アタックスの海外サポート室では、中国マクロ環境の情報提供などを通して、経営戦略の立案や見直しのサポートをしております。中国を含む経営戦略の見直しに活用いただければと思います。お問い合わせはこちらから

筆者紹介

株式会社アタックス 執行役員 海外サポート室 室長 諸戸 和晃
ミサワホーム勤務を経てアタックス入社。株式公開、企業再生、M&A支援等のコンサルティング業務に従事。2011年より2年間北京赴任。赴任中は北京中央財経大学への語学留学、中国系会計事務所「中税咨询集团」(北京)で業務。帰国後、海外サポート室の室長として、中堅中小企業の海外進出に関する支援業務に注力している。
諸戸和晃の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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