人材難の救世主!その名は“シニア社員”~学び直しに積極投資を!

人材育成

人材不足倒産最多 ~昨年、求人難と人件費高騰で~
シニアに成果給・ポスト ~処遇改善、就労意欲高める~

新聞を広げると、毎日のように「人」に関する記事であふれています。

いよいよ「働き方改革」関連法案の施行まで残すところ2ヶ月半となりました。現在、各企業の人事総務部門は法改正の対応と環境整備に追われ、推進の真っ最中だと思います。未来予測のなかで、人口動態ほど正確なものはないと言われており、現在の求人難はとうに予測できたはずです。

しかし、遠くにあった未来の課題が、ある地点を超えたところから一気に加速し目の前にやってきた。そんな感覚ではないでしょうか。

この課題をいかに克服するか。その解は、女性活用、高齢者活用、外国人活用、障がい者活用と多岐に渡ります。そして、これらの積極雇用を促す施策と法改正を、政府は次から次へと打ち出しています。

それぞれに雇用上の留意点は異なりますが、その中でも今回は、「高齢者活用」である“シニア社員”を取り上げたいと思います。

高齢社員の雇用~継承技術そのものが陳腐化する恐れも?!

政府は今、超高齢化社会の経済を担う労働者年齢を、段階的に引き上げようとしています。現在は、60歳になった時点で、希望する労働者すべてを65歳まで継続雇用することを法で定めていますが、その年齢が今後70歳に引き上げられることは必至です。

寿命が延び、100年生きることも決して特別なことではなくなる時代に、生涯現役で、納税者かつ消費者であり続けることは、日本経済の持続的成長に不可欠だからです。精神的にも、経済的にも、社会的にも自立した高齢者が活き活きと活躍する社会、これが実現できるかどうかは、企業の取組み如何にかかっています。

かつて、企業にとって高齢社員の雇用は、いわゆる「福祉雇用」の位置づけが主流でした。長年の労をねぎらうと同時に、役職から外れ、報酬も減る代りに人事考課などの評価も緩やかにして、嘱託社員として処遇していく方法です。

また、高齢社員には主に、次の3つの役割が期待されていました。
〇技能伝承
〇顧客人脈継承
〇後進育成サポート

しかし、これらの貢献も時代の変化によってその価値が薄まりつつあります。技能伝承は、技術革新やテクノロジーの進化によって継承技術そのものが陳腐化し、多くの企業で伝承価値が減少しています。

顧客人脈継承についても、つきあいの密度によってビジネスが成立するような商習慣から、是々非々で、ビジネスパートナーを選択していく方法へと変化しています。

最後の後進育成サポートについては、高齢社員の育成方法が、今の時代にはともすれば、パワハラ、セクハラとしてとらえられ、よかれと思った指導がマイナスになってしまうこともあるようです。

今後、企業が目指すべき高齢者活用は、これまでのような「福祉雇用」ではありません。

目指すは高齢社員の「戦力雇用」

高齢社員が裏方ではなく、自ら価値を生み出し会社業績に貢献することを期待する雇用、目指すは「戦力雇用」です。そこで重要となるのが、「学び直し」による能力開発であり、それに伴う「処遇の改善」です。「学び直し」という考え方は、高齢社員だけでなく、すべての世代の社員にとって、今後益々重要になっていくでしょう。求められるスキルや技能の変化スピードが速く、陳腐化との戦いになるからです。

しかし、いきなり「勉強せよ」といっても、何のために何を学ぶのかが明確でなければ効果がありません。

そこで企業がすべきことは、60歳以降の働き方について選択肢を示すことが大切です。

例えば、
〇現状延長型:これまでの経験値を活かして、生産活動、事務活動を行う
〇新キャリア創造型:新たな技能をプラスして、活躍のフィールドを広げる
〇新規ビジネス創造型:ライフネット生命を創業した出口治明氏のように「還暦ベンチャー」のような新事業を考えるなどです。

今後は、50歳前後から、60歳以降の働き方について考えることをスタートさせ、やる気のある社員に積極的に「学び直し」を促進していくことが必要です。それと合わせて、これまでのような高齢社員に対する画一的な処遇から、成果に応じて報酬やポストを与えるといった基本方針が必要になります。

現在、政府は、これらの企業努力を後押しする施策として、成果重視の賃金制度を導入する企業に補助金を出すなど、「待遇の改善」を推奨しています。

2019年度は、これまで以上に“シニア社員”に活躍してもらうための環境整備に取り組んでいただきたいと思います。

アタックス・ヒューマン・コンサルティングでは、“シニア社員”のキャリア形成制度構築、待遇(評価、報酬)の見直しについてコンサルティングを行っています。お気軽にご相談ください

筆者紹介

アタックスグループ パートナー
株式会社アタックス・ヒューマン・コンサルティング 代表取締役
中小企業診断士 北村 信貴子
1963年生まれ。中小企業診断士、産業カウンセラー、BCS認定ビジネスコーチ。大手食品メーカー勤務後、アタックス入社。中堅中小企業を対象に経営診断や人事制度設計運用・人材育成業務に従事。現在は、後継者育成、管理者教育、女性リーダー育成を中心に実践型の教育訓練・能力開発に特に注力。講演・セミナー実績多数。受講者との対話を通じて理解を深めていく迫力ある指導には定評がある。
北村信貴子の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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