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個別原価計算とは? 個別原価計算制度はどう構築するのか?

      2020/08/11

製造業、建設業、ソフトウェア開発業などにとって、原価計算はとても大切な会計制度です。
モノづくりの業種にとって、正確な原価計算制度がないといろいろと困ります。
そこで、原価計算制度を構築するための前提についていくつか解説します。

 

まずは、原価計算のために必要な制度について解説し、その後、材料費などの原価を要素別にどのように集計していくかについて解説します。
長い記事になりますが、このステップの通りにしていただければスムーズに個別原価計算制度が構築できると思います。

 

Ⅰ.原価計算制度を構築する前の準備とは?

原価計算制度の具体的な手続きを解説する前に制度構築に欠かせない前提となる制度について解説します。
これらがないと、原価計算制度は構築できませんので、まずは、原価計算制度の前工程となる制度を構築します。

1.原価計算とは

原価計算とはその名の通り、製造した製品の原価を測定する制度です。
原価がわからないと適切な値付けができません。なので、重要ですね。
また、
・値段は市場で決まる
という考え方いくと、市場が求める販売価格でも十分に利益が出るような原価で製造する、ことが求められます。
・この原価で製造しよう
として開発や設計から取り組むことを原価企画といったりします。
・結果として、この原価でできた
では、遅いんですね。
この
・十分に利益が出る原価
を設定した後、その通りにできているかどうかを測定するのも原価計算です。
製造業と建設業では会計処理が少々異なりますが、モノづくりという点は似ています。前者は製品、後者はビル。ソフトウェア開発業もソフトというモノを製造しますので、原価計算が必要です。

2.原価計算制度構築の前提とは

正確な原価計算をしようとすると、以下のような制度が整っていることが求められます。
原価計算制度にはさまざまな種類がありますが、制度を問わず共通するのは以下です。
①部門別損益計算制度
②在庫管理制度
③工数測定制度
④原価集計制度

原価計算をするには、まず、製造する部門と製造を支援する部門、製造をしない部門などに部門を分類することになります。
原価計算は通常、製造に関連する部門のコストを集計する制度なので、営業や総務経理など製造をしない部門のコストは原価計算の対象にはしません。
なので、まずは、組織図を見ながら、
①この部門は製造に直接的に関連する部門
②この部門は製造に間接的に関連する部門
③まったく関連しない部門
の3つに区分します。
このうち、①と②は原価計算の対象となり、この部門のコストは、製品の原価となって集計されることになります。

また、在庫管理制度も必要です。
原材料は原価を構成する大きな要素です。
製造時に原材料をどれだけ投入したかを測定することは正確に原価を集計するには重要なプロセスです。
これを実現するのが在庫管理制度。これを整えることで、
・倉庫から工場へいつ、何の材料を、どれだけ投入したか?
また、
・倉庫へいつ、何の材料を、どれだけ、いくらで購入したか?
さらに、
・月末(決算末)に、何の材料が、どれだけ残っているか?
が把握できます。
これにより、製造時に原材料をどれだけ投入したかを測定することができるようになります。

工数測定制度も在庫管理制度と同じような意味で重要です。
労務費は原材料費と同様に重要な原価です。
工数測定制度は、
・誰が、どの製品を製造するのに工数を使ったか?
を測定します。
これにより、その製品にどれだけの労務費を張り付けないといけないかを把握することができます。

3.まずは構想をマニュアルに

実際に原価を集計する場合にはシステム化を図ることになりますが、システム構築の前に、上記の前提をしっかり固めることが制度構築の成功要因です。
しっかり検討して、その結論を
・原価計算規程や原価計算マニュアル
としてまとめ、その後、システム会社と協議するのが、失敗を避ける大事なステップだと思います。

 

Ⅱ.製品別に原価をどのように集計するか?

原価計算制度の前提となる各種制度としては、まずは、部門別損益管理制度を構築し、製造原価として扱う部門とそうでない部門を区分するのが、第一歩でした。
他にも、在庫や工数を管理する制度も必要であることを説明しました。

今回は、部門別損益管理制度で製造原価の全体を集計した後に行う、製品への原価の割り付けについて解説します。
これをすることにより、製品がいくらの原価で出来上がったがわかります。
販売単価などと比較して、この原価水準がいいか悪いかの判断などに使用します。

1.製品別への割り付けの基本的な考え方

シンプルな例で説明します。
一工場で単一製品を製造し、決算期末には工場の製造ラインには残っていないパターンです(すべて完成しており、一部は販売され、一部は製品在庫として倉庫に積まれている状態)。
この場合、
・分母に製造原価総額を分子にその年に製造した製品の総数
を持ってきます。この割り算をすれば、製品一個当たりの製造原価がわかります。
基本はこれです。

この応用として、全部完成せず、一部がラインの上に残ったまま(途中まで製造した状態)であったり、製品種類がいくつかあったりすると、工夫が必要になります。

たとえば、作りかけて残っている製品は、製品換算すると60%くらいできているので、先ほどの計算式の分子の製品個数のカウントの際に0.6個でカウントし、計算された製品一個あたりの原価に0.6をかけて、途中製品の原価としたりします。
(例)
①全部完成しているパターン(2個完成、製造原価は200円)
製造原価200÷完成品2個=一個当たり100円
②一部作りかけパターン(1個完成、1個は半分作りかけ(完成品換算としては0.5個。製造原価は150円)
製造原価150÷完成品1.5=一個当たり100円 完成品は100円、作りかけ品は100円×0.5=50円

一個は作りかけなので、製造原価の合計額は2個完成時よりも少ないことが予想されるので、原価を50円減額してます(実際はそうでもないですが)。

製品がいくつか種類がありそれぞれの製造ラインが別になっていれば、そのラインごとに区分して製造原価を集計したりします。
同じラインで異なる製品を製造するパターンであれば、ある製品に換算したらどうかなどの応用を行います。

2.個別原価計算の考え方

上記にあるように、原価計算の方法は製造方法によって異なります。
上記のようにラインで製造するパターンもあれば、機械製造のように、1台1台、得意先の要望に合わせて機械を組み立てながら製造していくパターンもあります。
後者の製造において採用される原価計算が
・個別原価計算
です。
個別原価計算を押さえておけば、原価計算の基礎はクリアできますので、これを続けて説明します。

個別原価計算は、組み立てしている機械ごとに原価を集計する方法です。
その機械の原価としては、その機械を組み立てるために使われた部品、その機械を組み立てるために使われた人件費、電気代、場所代などが明確に把握できます。

一般的には、機械組み立てがスタートすると、その組み立てに紐付く原価を集計するための「原価集計カード」を作成します(システム上ですが)。
その機械に番号を付けて(機番などと呼びます)、何かの支出があった際に、その支出データに機番を振って原価カードに集計できるようにします。
たとえば、部品倉庫から払い出しをしてその機械の組み立てに使用する場合、払い出しデータに機番を振って、払い出した部品の原価を原価カードに集計します。
また、作業員がその機械の組み立てに5時間費やしたとしたら、工数管理票に、
・今日は5時間、機番Aのために使った
と記入します。すると、その人の一時間当たりの人件費×5時間分がその機械の原価として集計されます。

というような感じで原価を機械ごとに集計するのが、個別原価計算です。基本的な考え方としてはこのように行います。

実際は、たとえば、一時間当たりの人件費は、実際の人件費なのか、あらかじめ予定した人件費なのか?などをどうするかとか、部品を払い出しする際、たくさんの部品を払い出すので、いちいち在庫払い出し表に機番なんか書いてられないなどの問題がありますので、それをどうするかを細かくクリアにしていきます。

 

Ⅲ.材料費はどのように集計するか?

原価は、材料費、外注費、労務費、製造経費に大別されます。
また、個別原価計算制度では、原価集計カードを使ってこれら原価を集計していきます。
今回は原価の種類別にどのように原価を集計するのかを具体的に解説します。
まずは、材料費です。

1.集計する原価の種類は?

集計する原価は、以下のようにいくつかに分類されます。その分類によって、原価集計の方法が異なります。なので、分類はとても重要は概念です。

①内容別
主に、材料費、外注費、労務費、製造経費に分類されます。決算書の「製造原価報告書」の勘定科目別の分類ともいえます。
上記の4つそれぞれで、原価集計の方法が異なりますので、それぞれで仕組みを整える必要があります。ただ、材料費と外注費の集計方法は似通っています。

②関与別
直接費、間接費などと区分されます。直接費は、その機械を製造するのに直接かかった原価です。ある社員が、その機械に部品を組み付ける時間の労務費は直接作業をしていますので、直接費となります。
しかし、その社員が製造会議などに参加している時間は、その人件費は製造原価に属するものですが、機械に直接関連するものではありません。このため、これは間接費として分類されます。
また、工場内の社員でも、在庫管理部門の社員は、ある機械に特定して仕事をしているというよりは、製造活動全般に対して仕事をしています。よって、この在庫管理部門の人件費は間接費となります。
さらに、製造部長など役職者は、機械組み付けに直接参加しないでしょうから、この人自身は間接費となります。

このように、現場社員でも仕事の内容によって直接費と間接費に区分されますし、働く部門によっても直接費と間接費に区分され、職階でも区分されます。
もちろん厳密には、部長でも組み付けに入ることもあると思いますが、ウエイトが低ければすべて間接費として扱うことが多いです。

③原価分類はマトリックス
よって、分類は、内容別×関与別のマトリックスで分類されます。
・材料費でも、直接組み付ける部品とそうでないもの
・労務費でも、直接作業と間接作業(直接作業員と間接作業員)
などになります。
なお、外注費はほぼ直接費、製造経費はほぼ間接費となりますので、そのように分類して差し支えないと思います。

2.材料費の集計

材料費は区分して集計します。

①直接材料費
これは、その機械組み付けに直接使用する部品です。材料倉庫から払い出しするときに、それぞれの数量管理表に、
・機番Aのためにいつ何個使用した。
を記録すると思います。
この数量データが材料在庫管理システムに反映されると、在庫管理システムには、その部品の原価がありますので、それと掛け算すれば、直接材料費は計算できます。
ただ、一度に大量に部品を払い出したりする場合には、いちいち払い出し記録を手作業でするのは大変なので、理論使用量で払い出し処理をするシステムもあります。
つまり、設計段階で
・この機械を製造するのに、X部品は何個、Y部品は何個
などと定義されているはずなので、そのデータ通り払い出しも行われたとして、たくさんある数量管理表への記入手間を省くものです。

なお、払い出し原価は、在庫管理システムの作り方によりますが、一般的には移動平均法で計算されます。つまり、現実の購入価格が直接材料費の原価になります。

②間接材料費
材料費の中には、グリスやナットなど少額で大量消費するものは帳簿上では在庫管理をしていないものがあります。いわゆる消耗品です。
これは、製造経費として扱うこともありますし、補助材料として扱うこともあります。
補助材料として扱われたものは、材料費の一種となります。
しかし、少額のため、その使用について、いちいち機械別に集計しても面倒が増えるだけで原価計算にはあまり影響を及ぼしません。

このような原価は、全体消費額をいったんまとめて、ある基準を用いて、機械別に貼り付けるやり方をします。いわゆる「配賦」と呼ばれる作業です。

ある基準はいろいろありますが、各機械の直接材料費の額の比率(たとえば全体が10,000千円として、機械Aで8,000千円使用、機械Bで2,000千円使用なら、機械Aへの配賦率は0.8、機械Bへの配賦率は0.2になります)や直接作業工数比率(配賦率の計算の考え方は、直接材料費比率と同様で材料費ではなく工数を使います)などがあります。

たとえば、補助材料費の全体額が1,000千円なら、上記の例では、機械Aに集計される補助材料費は800千円、機械Bに集計される補助材料費は200千円となります。

となると、機械Aの材料費は直接材料費8,000千円+補助材料費800千円で8,800千円、機械Bの材料費は直接材料費2,000千円+補助材料費200千円で2,200千円となります。

なお、「補助材料費の全体額」は、実額は月次決算を締めてから確定しますので、翌月になってしまいます。それでは遅いという場合には、実額ではなくて、年初の予算額を用いることが多いです。

この場合、実額との差異が生じますが、これは、改めて「差異調整」を行って実額に置き換えます。

 

Ⅳ.外注費、労務費はどのように集計するか?

原価には費目別の分類とともに、機械製造に直接絡むか間接的なものかの分類があります。
原価集計では、それぞれで集計方法が異なりますので、それら分類に合わせて集計方法を設計する必要があります。
今回は、外注費、労務費を解説します。

1.外注費の集計

外注費は、そのほとんどが直接だろうと思います。
とはいえ、外注費でも部品の加工などをお願いする外注費と組み立ての一部をお願いする外注費などに分かれることがあります。
しかし、前者の外注費は、部品の価格にそのものに反映されますので、材料費として扱われます。
後者の外注費は、組み立てを依頼する機械を指定して発注するはずですので、基本的には機械別に紐付くことになります。これが本来の外注費です。
よって、外注費のほとんどは直接費となります。

直接費の集計は簡単で、請求された外注費の額を機械別に作成済みの原価集計カードにそれぞれ記載すればOK、となります。
シンプルです。

なお、外注先からの請求書は、合計額とともに、機械A(機番A)の外注費はいくら、機械B(機番B)の外注費はいくらなどの機械情報と内訳を記載してもらうようにするとわかりやすいです。
外注費は、請求された実際額を原価カードに集計します。月末〆後、すぐに請求書を発行してもらうか、請求情報だけデータで教えてもらうかなどで原価集計のスピードを上げます。

2.労務費の集計

労務費は、直接費と間接費の区分が複雑です。
直接組み付けにかかわる社員でも、一日の作業時間のうち、会議などで機械組み付けに直接かかわらない間接費としての時間があります。
また、在庫管理部門は、直接には機械組み付けにかかわりませんので、その人の人件費全体が間接費です。
さらに、製造部長は、マネジメントが仕事なので若いころのようには機械組み付けに入りません。よって、部長もその人件費全体が間接費です。

直接費としての人件費をどう集計するか?
ですが、これは「工数記録」を頼りに行います。直接組み付けにかかわる社員には、一日の労働時間(仮に8時間)の「内訳」を記録してもらいます。

たとえば、8時間のうち
・3時間は機械Aの組み付け作業(直接費)
・2時間は機械Bの組み付け作業(直接費)
・1時間は朝礼、掃除、その他事務(間接費)
・2時間はQC会議(間接費)
などです。
直接費は、機械Aと機械Bの原価集計カードにそのまま集計されていきます。このとき、工数だけでは金額換算できませんので、この社員の1時間当たりの人件費を掛け算して金額にします。
なお、このときに使用する1時間当たりの人件費は、実際支給額を使うと給与計算に時間がかかったり、残業などで変動があったりしますので、実際額は使わず、年初に想定した予定額を使うことが多いです(賃率と呼ばれるものです)。

賃率は以下のように算出します。
①直接組み付けに従事する方々の総人件費を予想し合計します。
②その方々の総作業時間及び、直接作業時間と間接作業時間の割合を予想します。
③上記②の割合を使って総人件費を直接人件費と間接人件費に区分します。
④上記③の直接人件費を上記②の直接作業時間で割って1時間当たりの直接人件費(賃率)を計算します。

これで賃率が計算できますので、この賃率と原価集計カードに集計された工数を掛け算します。
※なお、間接人件費は次回の製造経費のところで説明します。

これは、あくまで直接作業に従事する方々が対象です。在庫管理部門の方々や部長などの人件費はそもそもが「間接」人件費なので、賃率計算の対象にはなりません。

なお、上記の賃率は予定ですので、決算時には、実際賃率に置きなおして調整します。といっても在庫金額のみの調整にとどめます。なぜなら、会計処理上は在庫評価額を除き、発生したものはすべて実際原価で処理するため、在庫評価額だけを実際原価に置きなおせば、会計処理上(決算書上は)の利益が実際原価に置き換わります。
この調整方法は以降で解説します。

 

Ⅴ.製造経費はどのように集計するか?

今回は、製造経費について解説します。

1.製造経費の集計

製造経費とは、家賃、減価償却費、電気代など製造活動に関連して支出するもので材料費、外注費、労務費を除くものです。
製造経費は、そのほとんどが「間接費」です。
厳密に測定すると機械に個別に紐付く経費もあるでしょうが、少額のため間接費として扱って差し支えないことがほとんどです。

さて、間接費ですので直接費のように機番が明確ではありません。
よって、例えば、発生した電気代を機械別に紐付けることができません。
何らかの基準が必要になります。

このため、まず、
・家賃、減価償却費、電気代などの製造経費をまずは総計した後それを分母に、分子に何らかの基準も持ってきて割り算します。

すると、その「基準あたりの製造間接費」が計算されます。
その基準は機械毎に作成している原価集計カード上に記載されている基準を使います。

その基準は、多くのケースで「工数(直接)」を用います。
※以下、直接作業時間とします。

直接作業時間は労務費の集計で出てきた概念で、現場で製造にかかわる社員が、その機械を製造するのにかけた労働時間です。
分子に製造経費総額を、分子に直接工数(直接作業時間)を持ってきて計算したものを、
・配賦率(直接作業時間1時間当たりに発生する製造経費)
と呼んでいます。

直接作業時間を基準に使えば、先ほどの「基準あたりの製造間接費」は、
・直接作業時間1時間につき発生する製造像間接費
となります。

直接作業時間は、原価集計カードにすでに日報入力によって集計されていますので、機械毎の原価集計カードに集計されているその月の直接作業時間に配賦率を掛け算すれば、機械毎に製造経費が集計できることになります。

このように直接には機械に紐付かない間接費を機械毎に集計します。

では、次に配賦率の算出について解説します。

2.配賦率の算出方法

労務費の計算のところで、現場社員にはその日、どのような作業をしたのかを記録してもらう例を挙げました。

>たとえば、8時間のうち
>・3時間は機械Aの組み付け作業(直接費)
>・2時間は機械Bの組み付け作業(直接費)
>・1時間は朝礼、掃除、その他事務(間接費)
>・2時間はQC会議(間接費)
>などです。

上記の「時間」を工数と呼びますが、上記の例では、5時間が「直接工数(直接作業時間)」になります。
※機械Aの3時間と機械Bの2時間の合計で5時間

また、同じく労務費の解説で、
>賃率は以下のように算出します。
>①直接組み付けに従事する方々の総人件費を予想し合計します。
>②その方々の総作業時間及び、直接作業時間と間接作業時間の割合を予想します。
>③上記②の割合を使って総人件費を直接人件費と間接人件費に区分します。
>④上記③の直接人件費を上記②の直接作業時間で割って1時間当たりの直接人件費(賃率)>を計算します。

とも解説しましたが、配賦率の計算においても、上記の②の直接作業時間(予定)を使います。
一般的には配賦率は年初(正確には前事業年度末)に計算してしまいます。
このため分子の製造経費総額も予定となります。

この分子の予定製造経費総額÷分母の予定直接作業総工数の割り算で配賦率を計算します。

どちらも予定なので
・製造間接費予定配賦率(又は正常配賦率)
と呼んでいます。

なお、労務費の解説のところで、
・会議時間
・部長の時間
など間接費も混在することを解説しました。
これら間接労務費も上記③で予定ですが計算します。
よって、正確には、
・(予定製造経費総額+予定間接労務費総額)÷予定直接作業時間
で製造間接費予定配賦率を計算します。

これで、すべでの間接費を漏れなく集計することができるようになります。
もちろん、直接費はすでに集計済みですから、ここまでの仕組みで、予定ですが、機械毎に原価は集計できています。

しかし、あくまで前事業年度末に計画した予定ですから、予定どおりの支出や直接作業時間になっているわけがありません。

次に、それで生じる、「差異」の調整について解説します。

 

Ⅵ.原価差異をどのように把握し処理するか?

これまでに、材料費、外注費、労務費、製造経費のすべての原価集計の方法について解説しました。

しかし、この段階で集計できている原価は「予定」です。
どの費目が予定だったかというと、労務費と製造経費です。
労務費は、直接労務費が賃率という名の、製造経費は、製造間接費予定配賦率という名のいずれも前年末に予定した支出予想や工数予想によって算出された基準を使って、原価集計カードに集計していきます。

しかし、予定は予定でその通りにはいきません。
ほぼ必ず、実際の支出額や工数と「差異」が生じます。

この差異を調整することで、個別原価計算の原価集計は終了します。
終了するとは、
・正しい決算書ができる
という意味です。

後は、集計された原価を分析して経営に活かすということになっていきます。

そこで、今回は、差異の調整方法について解説します。

1.差異をどう図るか?

差異は原価計算制度で集計される原価と会計制度で集計される原価の差となります。
一般に、経理は会計ソフトを使って決算書を作成します。勘定奉行や弥生会計というパッケージソフトや自社で開発したソフトなどがあります。

対して、原価計算は、原価計算システムで行います。ここに原価集計カードの機能を持たせて機械毎に原価を集計します。

ということで、
・会計ソフトで原価計算を行うことは稀
というのが一般的です。
会計ソフトに集計されている支出はすべて実際額です。
相手先から送られてくる請求書などをベースに計上し、翌月などに銀行振り込みなどで支払います。
つまり、実際の支出です。

対して、原価計算システムに集計されている支出は労務費、製造経費は予定額です。材料費は払い出し時に標準使用量を用いていると理論値となり実際額とは異なります。
外注費は実際額であることがほとんどです。

よって、会計ソフト上の金額と原価計算システム上の金額を比較して、計算された差異を原価計算システムに反映させることで、原価計算システムの金額が実際額になります。

それでは、費目別に差異を把握する方法を解説し、次いで、その差異を原価計算システムに戻す方法を解説します。

①材料費
材料費は払い出し時に理論使用量を用いていると、実際額との差が生じることがあります。しかし、差があっても少額です。
大きな差があれば、
・設計が全然ダメで理論使用量では機械が組みあがらない
・製造時に部品ロスがたくさん発生した
・在庫管理が甘くあるべき材料在庫がない
など重要な問題が発生している可能性があります。
これらのことがあれば、日常の製造現場で混乱が生じているはずなので、すぐにわかります。

原価計算システム上は理論使用量ですが、会計ソフト上は、
・材料費=実際の期首在庫+実際の当期購入額-実際の期末在庫
で計算されているはずです。
実際の当期購入額は仕入れ先から納品書や請求書から計上されるので実際額、実際の期末在庫は棚卸でカウントしますので、実際にある在庫金額です。

会計ソフトからプリントアウトされる製造原価報告書の材料費の金額と、原価計算システムの材料費合計を比較して、材料費の差異を把握します。

②労務費、製造経費
会計ソフトの製造原価報告書上の労務費は、実際支給の賃金(含む社会保険費など)です。
給与計算ソフトを使って毎月計算し、その計算額に基づき会計ソフトに入力します。

これと原価計算システム上の直接労務費と間接労務費(製造間接費に含まれる労務費)の合計額を比較し、差異を把握します。

差異の原因は、大きく
・支出
・作業時間
に分かれます。
差異が生じるのは問題なので、経営的にはこの2つの視点で差異原因を分析し、今後に活かすことになります。

製造経費も同様に差異を把握します。

2.差異を原価集計カードに反映させるには?

原価集計カードは機械毎に作成しますが、機械は大きく以下の3つに分類されます。
・作りかけの機械(仕掛品)
・完成したが販売されていない機械(製品)
・販売した機械(売上原価)

決算書を完成させるためには上記の仕掛品と製品の金額を会計ソフトに入力する必要があります。
毎月、決算書を完成させるため、原価集計カードのデータを見て、
・仕掛品(製品)/月末仕掛品(製品)棚卸高
の仕訳を会計ソフトに入力し、決算書を完成させます。加えて、前残洗い替えの
・月初仕掛品(製品)棚卸高/仕掛品(製品)
の仕訳を入れて終了です。

しかし、原価集計カードの仕掛品と製品の金額は一部が「予定」です。
このため、このままでは、決算書の製造原価が一部予定となり、その予定額と実際額に大きな乖離がある場合、決算書が間違ったものになってしまいます。

月次決算ではスピード重視のため、予定の仕掛品や製品の額を会計ソフトにそのまま入力して、月次決算書を完成させ、業績確認を行うことでもいいと思いますが、年次決算ではそうもいきません。

このため、原価計算システムの中にある原価集計カードの仕掛品と製品の額を実際額に修正する必要があり、その修正後の実際の仕掛品と製品の額を会計ソフトに反映する必要があるのです。

一般に以下の方法で行います。

①材料費差異と労務費差と製造経費差異を合計し、差異の総額を把握します。
②差異の総額を直接作業時間合計で割り算し、直接作業時間1時間あたりの差異額を計算します。
③仕掛品となっている機械の原価集計カードにある直接作業時間を合計します。
④製品となっている機械の原価集計カードにある直接作業時間を合計します。
⑤②の直接作業時間1時間あたりの差異額に③の時間を掛け算します。
⑥②の直接作業時間1時間あたりの差異額に④の時間を掛け算します。

そして、⑤と⑥の金額で、
・月初仕掛品(製品)棚卸高/仕掛品(製品)
・仕掛品(製品)/月末仕掛品(製品)棚卸高
の仕訳を追加します。
差異がプラス値かマイナス値かで借方と貸方は入れ替わります。

これで、「予定」となっていた仕掛品と製品の額が実際に置き換わりますので、決算書に表示されている金額がすべて実際額になり、利益も実際額で表示されるようになります。

正しい決算書(実際額の決算書)を作成するというためだけでいうと、これだけでOKです。

本来は、実際の賃率や実際の製造間接費配賦率を計算して、原価計算システムのデータを修正し、機械毎の原価集計値をすべて実際に置きなおすことになります。
これをすると、会計ソフトの決算書も原価計算システムの原価集計カードも「実際額」になりますので、原価管理がどうだったかなどの分析がより現実的にできるようになります。

3.まとめ

個別原価計算制度で一般に行われている原価集計の実際の解説は以上です。

・部門別損益制度など前提を整えること
・予定を使うこと
・原価計算は会計ソフトの外で行うこと
・原価計算システムのデータで会計ソフトに反映するのは、仕掛品と製品の残高
・仕掛品と製品の残高は最後に差異額を加減算すること
などができていれば、あとは微調整で構築できます。

実際額が集計できるようになれば、受注時の見積原価や実行予算などの目標値と比較をして改善活動に活用できるようになりますので、是非、制度構築に取り組んでいただければと思います。

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