成功のための中国ビジネスチャンネル

中国進出、企業の成功と失敗の分かれ道とは。アタックス・諸戸和晃の情報ブログ

*

財務シミュレーション基礎講座まとめ ~経営計画を数値で検証しよう~

   

数値計画を策定することは様々なメリットがあります。例えば、以下のようなメリットがあります。

①経営計画に漏れがないか検証できる
数値計画では、売上高を数量、単価に分解しますので、
・この価格でお客様に受け入れていただけるか?
・この数量をさばけるだけの市場はあるか?
・なければその需要を喚起するにはどうしたらいいか?
・物流をどうするか?
などを検討することになります。また、価格や数量を検討するには、顧客とともに、ライバルも意識することになります。さらに、
・いくらで仕入れるか?
・どうやって製造販売するか?
・その人件費や経費は?
なども検討しますので、MBAの教科書に出てくるファイブフォースなどの戦略技術の視点を自然に使えるようになります。
このプロセスを通過させることによって、経営計画がより具体的なものになります。

②資金調達に使える
経営計画を推進する際に資金を調達する必要とする場合もあります。
この時、銀行や投資家など資金の出し手にしっかり説明し納得していただかないと調達できません。
彼らは、数字の専門家です。よほどしっかり数値計画を作成しておかないと、あちこちで突っ込みをうけ、計画が不十分であることを見抜かれてしまいます。
また、資金を供給後に彼らが重視するのは、「モニタリング」です。
計画がうまくいっているかどうか、問題があるなら、当初計画との乖離はどこにあり、それはどう是正されるのか、などを気にします。
有効なモニタリングには、しっかりした数値計画が必要です。
数値計画で検証した経営計画は説得力を持ちます。彼らが強い数値の分野でもしっかり説明できますし、モニタリングにも耐えられます。
このため、数値計画をしっかり作成することは、資金調達面でも有利です。

③社内をまとめることができる
夢のある経営計画は社員を精神的に鼓舞できますが、数値計画を示すことによって、社員は具体的なアクションプランを考えることができます。
単価や数量を示すことで、その単価を実現するにはどうするか、その数量を販売するには、どう営業するのか、そう仕入れるのか?など今日明日からのアクションをイメージし始めることができますし、そうしてくれるように働きかけることもできるようになります。
また、この数値計画を実現したら、給与水準がどうなるかもイメージできますので、金銭面での動機付けにもつながります。

つまり数値計画を作成することは、意思決定面、資金調達面、実行面の確実性を上げることになり、経営計画を成功に導きます。

このように数値計画を作成することは、メリットのあることですが、作成には財務的なテクニックを要求されます。

そこでこの記事では、初歩的な数値計画の作成を解説したいと思います(財務シミュレーション)。
これを理解いただくことで、数値計画作成のテクニックを学んでいただけます。

 

Ⅰ.シミュレーションの準備

感覚を掴んでいただくため、基礎的なシミュレーションを解説します。
基礎的なシミュレーションとは、「成り行き」で予想する、という意味合いです。
本来、経営は意思をもって行うものですので、成り行きはあり得ませんが、シミュレーションのテクニックを理解していただくに、まずは、成り行きベースでシミュレーションを行います。

成り行きべースのシミュレーションは以下の手順で行います。
①売掛金、在庫、買掛金の対売上高比率を計算する
②損益計算書計画を作成する
③①と②で貸借対照表計画を作成する
④キャッシュフロー計算書計画を作成する

ここでは、①の比率計算について説明します。
具体的には、売掛金、在庫、買掛金の比率の計算です。

販売単価や商品構成など商売の内容を一定とすれば、売上が増えれば、売掛金、在庫、買掛金は増え、減れば減ります。
成り行きベースでは、売上高の増減に影響されて、売掛金、買掛金、在庫が増減するとします。

よって、売上高の計画が決まれば、その計画額に売掛金、在庫、買掛金の売上高比率を掛け算することで、売掛金、買掛金、在庫の予想金額が計算できます。
例を挙げて説明します。

(問題)
①予想売上高は前年度の1.2倍の1,200,000とします。
②予想の売掛金、在庫、買掛金の金額は?

(回答)
①売上高売掛金比率は、前年売上高1,000,000に対して、前年末売掛金残高200,000ですので20%です。同じように、在庫比率は50%、買掛金比率は30%です。
②次に、来期の売上高を予想します。今期の1.2倍の1,200,000を計画した場合、来期の売掛金予想額は、来期計画売上高1,200,000×売掛金比率20%=240,000となります。同様に、在庫は1,200,000×50%=600,000、買掛金は、1,200,000×30%=360,000です。

売上高伸び率(この場合は1.2倍)を売掛金、在庫、買掛金の前期末残高に掛け算すればいいじゃないかと思われると思いますが(計算結果は同じ)、そうしない理由があります。

売上高売掛金比率・売上高在庫比率・売上高買掛金比率は、経営努力で変えることができるからです。
つまり、成り行きシミュレーションの後に行うであろう、意思を入れたシミュレーションをする際のパラメーターになるわけです。
パラメーターとは、その値を変化させると、結果が変わるという要素で、例えば、経営努力によって在庫を減らすということであれば、在庫比率は30%になるかもしれません。

となると、来期の在庫は、1,200,000×30%=360,000となり、現在予想値の600,000から240,000削減することができます。
在庫を減らせるとそれを購入する資金を減らすことができますし、保管場所も節約できます。よって、これはキャッシュを増加させることにつながります。
逆に言えば、来期はキャッシュを240,000増加させたいと思えば、在庫管理を徹底して、在庫比率30%目指して頑張ればいいわけです(在庫以外の要素は一定として)。
また、これら比率を同業他社と比較することで、他社との優劣を判断できます。他社より在庫比率が高い場合、つまり他社に比べて在庫過多の場合、(戦略的な意図がある場合を除き)在庫管理上、まだまだ改善できる余地がある可能性があるということになります。

基礎編のシミュレーションでは、売掛金、買掛金、在庫の売上高に対する比率を計算することが第一歩となります。

Ⅱ.損益計算書のシミュレーション

損益計算書計画は、本来であれば、商品別や得意先別に区分して売上高計画であれば販売数量×販売単価を商品毎に計画していきますが、今回は基礎編なので簡単なやり方で解説します。

例を挙げて説明します。

(問題)
以下の条件で、予想損益計算書はどうなりますか?
①売上高は前年比120%の1,200,000を予想
②売上原価率は前年同様の80%とする
③採用2名で10,000千円の人件費増加とする
④他の経費は変わらずとする

(回答)
①予想売上高は、前期売上高の120%ですので、1,200,000です。
②予想売上原価は、前期の売上高売上原価比率の80%(800,000÷1,000,000)で変わらずということなので、この80%を予想売上高1,200,000に掛け算して、960,000(1,200,000×80%)となります。
③人件費は、10,000増加ですので、前期の50,000に10,000を足し算して、60,000となります。
④売上総利益、営業利益、税金、当期利益は計算項目です。

上記は、もっとも簡単な手順でのシミュレーションです。
本来は、商品別、顧客別などで数量や単価をどうするか?と検討します。商品や顧客で原価率も変わるでしょうし、販売経費も異なるでしょうから、本来は商品別や顧客別などで検討を重ねます。

また、損益計算書は、上から(売上高)ではなく、下から(利益)作成していくものである、という考え方もあります。
借入金過多の会社などはこの方法が合っています。
なぜなら、返済をしなければならないからです。返済するには、まずは利益を確保することが大切ですが、いくらの利益を目標とするのかの設定の際に、返済額を参考にして決めることがあります。
目標利益が決まれば、利益÷利益率でざっくりとした必要売上高が分かりますので、それを目安に尊敬計算書を計画することができます。

本来は、利益から作成した方がいいと思いますが、会社にあったやり方を採用されるといいと思います。

Ⅲ.貸借対照表のシミュレーション

次に、貸借対照表のシミレーションを説明します。
これには、Ⅰで説明した比率と、Ⅱの損益計算書を使います。
例を挙げて説明します。

(問題)
以下の条件で、予想貸借対照表はどうなりますか?

(回答)
①まず、売掛金、在庫、買掛金を予想します。これは、Ⅰで計算したように、計画売上高に前期売上高比率を掛け算して予想します。
・売掛金:計画売上高1,200,000×前期売上高売掛金比率20%=240,000
・在庫:計画売上高1,200,000×前期在庫比率50%=600,000
・買掛金:計画売上高1,200,000×前期買掛金比率30%=360,000
②次に、未処分利益を計算します。未処分利益は、利益の累計額です。よって、
・前期の未処分利益3,000,000+計画利益48,000=3,480,000
となります。
ここまでで、ピンク色の網掛け部分は完成です。

次に、現預金を計算します。
③現預金は、「計算項目」です。「予想」の蘭の金額を使います。
負債・資本の部計-固定資産-売掛金-在庫=現預金
5,363,000-4,505,000-240,000-600,000=18,000
となります。
これで、計算項目である流動資産などを計算して数字を入れて完成です。
最後に、
・「資産の部計=負債・資本の部計」
となっているかを確認します。
回答の「予想」蘭が、どちらも5,363,000になっていれば正解です。

これらは、成行きでの予想ですので、これをベースに経営改善ポイントを探り、経営の意思を入れて、目指すべき貸借対照表を作っていくことになります。
また、設備投資が必要な場合もあると思いますので、必要であればそれも加味します。ここでは基礎編なので割愛します。

Ⅳ.キャッシュフロー計算書のシミュレーション

損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)が出来たらキャッシュフロー計算書を計画します。
といっても、これまでに予想したPLとBSをベースに作成するだけですので、厳密には、シミュレーションというわけではありません。

例を挙げて説明します。

(問題)
これまでの損益計算書と貸借対照表を使ってキャッシュフロー計算書を作成してください。

(回答)
以下の順番で作成します。

①当期利益
・損益計算書の予想蘭の当期利益を転記します。

②減価償却費
・固定資産があれば、本来は減価償却費がありますが、今回は簡易にするため、減価償却なしとします。

③売掛金増減
・貸借対照表の前期末金額から予想金額を引き算して求めます。売掛金は、キャッシュフロー的には得意先への貸付金と同等のものです。よって、売掛金が増えると現預金は減ります。これを表現するため、前期末(200,000)-予想(240,000)と計算します。

④在庫増減
・貸借対照表の前期末金額から予想金額を引き算して求めます。在庫は、買いすぎると現預金が減ります。これを表現するため、前期末(500,000)-予想(600,000)と計算します。

⑤買掛金増減
・貸借対照表の予想金額から前期末金額を引き算して求めます。買掛金は、キャッシュフロー的には仕入先からの借入金です。買掛金が増えると現預金は増えます。これを表現するため、予想(360,000)-前期末(300,000)と計算します。

上記以外は、計算項目なので、計算式にしたがって計算します。

最後に、期末現預金と貸借対照表の現預金の予想額が一致していれば正解です。
期末現預金が前回作成した貸借対照表の予想額18,000となれば、正解です。

これで一通り、基礎的なテクニックを説明しました。あくまで基礎的なものですので、このままでは経営には使えません。
繰り返しになります、一度、成り行きで作成したものを見ながら、経営としてどうしていくかを考えていきます。

次回、総合演習をしていただいて、シミュレーションの基礎的テクニックの説明は終わりたいと思います。

Ⅴ.基礎編総合演習

最後の総合演習問題です。
とても簡易なシミュレーションですが、基礎知識のおさらいにはなりますので、チャレンジして下さい。
これができるようになると、次のステップとして、投資の詳細計画などを個別に計画するなどを学ぶことになります。
こうして、シミュレーションの精度を高めることができます。
それでは、下記の条件にしたがって、作成手順や作成資料を参照し、計画決算書を作成してください。

※(4)の売上高比率は、これまでは、理解を簡易にするため、「売掛金or在庫or買掛金÷売上高」として分母に売上高を置いてきましたが、一般には、「売上高÷売掛金or在庫or買掛金」のように分子に売上高を置くことが多いため、ここで変更します。

(2)回答
売掛金や在庫の売上高比率について補足解説します。これを改善することは、キャッシュフローのアップにつながり、結果、現預金の増加に寄与します。
これが改善すると、売掛金の回収が早い、在庫販売が早い又は不必要な買いだめはしていない、などのことになりますので、資金回収が早くなります。
こういったパラメーターについて目標値を定め、その実現に向けて経営活動を向上させることがポイントです。
シミュレーションは、意思決定だけでなく経営改善にも活用することができます。

それでは、下記に回答を示します。チェックしてみてください。

【講師、コンサルティングのご依頼はこちら】
■講演や研修の講師を承っております。以下のようなテーマをご提供します。
・管理職のための「計数管理講座」
・はじめての「M&A講座」
・経営者、経営幹部のための「財務管理講座」
・これから始める「中国ビジネス講座」
・中国赴任者のための「赴任者心得講座」
・中国子会社の「管理強化講座」
上記講座の詳細については、こちらこちらをご覧ください。

■財務管理アドバイスや中国経営に関するコンサルティングを承っております。
下記の詳細をご覧ください。
・社外CFOサービスの詳細はこちら
・中国経営アドバイザーの詳細はこちら
・コンサルティングの一覧はこちら

また、これら以外のテーマもご相談ください。
料金の確認及び申し込みは、こちらをご覧ください。

 - 経営者、マネージャーのための財務管理講座 , ,