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経営計画の作り方~実践で役立つ経営計画~

      2020/08/11

経営計画の立て方に関する書籍は多数ありますが、役立つ経営計画にするには、
・他社の事例を研究し、戦略立案のポイントを学ぶ
・現状をしっかり分析し、数値で計画を検証する
・まずはセオリーを押さえる
ことが重要だと思います。

これらを踏まえた上で、どのように経営計画を立てるのかをまとめてみましたので参考になればと思います。

経営計画は以下のステップで立案します。

 

1.事例研究(ステップ1)

経営計画は、経営戦略+数値計画+アクションプランで構成されます。
(理念のようなものはすでにしっかりしているとして)

まず、ステップ1として、経営戦略の事例研究をします。
経営戦略を考えていると煮詰まることが多いので、ヒントになるような事例を日々収集しておくと効果的です。
経済週刊誌やビジネス書籍などは各社の経営戦略が多数紹介されていますので、目を通しておくといいと思います。
異業種交流会や国内外の視察会などでもヒントが得られるかもしれませんね。
これらのことからヒントを得つつ、日々戦略を考え、いいアイデアが浮かんだらそれをメモし、計画策定の際に活かすというのがいいと思います。

そこで、いくつか有名な経営戦略の事例をご紹介します。

①ヤマト運輸の宅急便への進出ストーリー
ヤマト運輸の事例は、
・先行する巨大企業の郵便局を徹底的に分析する
・宅急便先進国のアメリカからヒントを得る
・成功のポイント見極め、それを維持することにこだわる姿勢
・財務面での綿密な計算
について学ぶ点が多くあります。

ヤマト運輸が宅急便を始める前は、大手百貨店の商品配送業者でした。
いわば下請けでしかもお中元などの季節変動もあり先行き不透明な経営状態に苦しんでいました。
これを打開すべく小倉昌男氏は宅急便という新規事業に乗り出します。当時、同じようなサービスは郵便局が展開していましたが、郵便局のやり方を徹底的に研究し、また、アメリカの街角で見た集荷方法にヒントを得るなどして、一大ビジネスに育て上げました。
もちろん成功に至るには様々な苦労がありますが、こだわるべきところは譲らず遂行します。

詳しくは、小倉昌男「経営学」で確認ください。

②富士フイルムの技術市場マトリックスを使った脱フィルム戦略
富士フイルムの事例は、
・マトリックスというフレームワークの使い方
・既存のものを新市場へ横展開することの重要性
について学ぶ点が多くあります。

富士フィルムはデジタルカメラの普及により、銀塩フィルムは市場消滅の危機に瀕していました。
これを打開したのが、富士フイルムの「技術市場マトリックス」です。
富士フイルムは銀塩フィルムを製造する過程で様々な基礎技術を蓄積していました。コラーゲンを扱う技術もその一つです。銀塩フィルムの製造にはコラーゲンが必要なんですね。
富士フイルムは、このコラーゲンを扱う技術を活用して、化粧品という新市場へ参入します。
今では、化粧品以外にも様々な分野へ展開しています。

詳しくは、古森重隆「魂の経営」で確認ください。

③自らの事業の定義を間違えずに今も元気なリクルート
リクルートの事例は、
・自らの収益源(強み)が何かをよく理解することの大切さ
・強みを横展開する際の手法
・強みを維持、実現する際のこだわり(ユーザーの利便性アップのための情報整理の仕方や画面の見せ方などへの徹底したこだわり)
について学ぶ点が多くあります。

リクルートは日本のリーディングカンパニーの一つです。
江副浩正氏が東京大学の学生時代に創業した株式会社大学広告を前進としています。大学新聞に企業の採用広告を掲載することでスタートしました(企業への招待)。
その後、求人誌、タウン誌、住宅情報、結構式、旅館ホテルなど様々な情報を一冊にまとめて読者に提供し、読者の意思決定を助けるビジネスを展開しています。
彼らの商品は、いずれも雑誌という「紙」の媒体ですが、彼らは出版業でしょうか?
彼らは出版業だとは思っていませんでした。
彼らは自らの事業を情報提供業、カタログ提供業などと定義し、「紙」はあくまで手段であるとしました。
これにより、ネットによる検索の比率が高くなっても、紙を維持しつつ、ネットにスムーズに移行することができています。

リクルートの強さの秘密に関する出版物は多くありますので、それらで確認ください。

④でんかのヤマグチの高齢者対象の地域密着生き残り戦略
でんかのヤマグチの事例は、
・競合相手を研究し、隙をつくことの重要性
・高齢化という時代の流れの取り込み
・単価の維持による高利益体質の実現
について学ぶ点が多くあります。

でんかのヤマグチは東京町田に本拠を置く、見た目はどこにでもある家電販売店です。周囲に大型量販店が次々に進出し存亡の危機にさらされます。
これに対して、彼らは大規模量販店にはできない戦略を展開することで生き残りを図ります。それは、「昔ながらの街の家電屋さん商法」です。
高齢化という時代の流れに着目し、高齢者世帯を御用聞き的に訪問し、家電セールスではなく、自宅の困りごとの解決(ちょっとした修繕や電球の付け替えなど)したのです。
これにより、でんかのヤマグチの社員は高齢者世帯から信頼され、彼らが家電を買い替えるときは、でんかのヤマグチに指名が入るという仕組みです。値引きを要求されることもありませんから、量を売りさばく必要はありません。大手が薄利多売ならその逆をいくわけです。

詳しくは、ホームページで確認ください。

⑤新たな工法を開発して顧客のコストを大幅に削減したサイベックコーポレーション
サイベックコーポレーション(以下、サイベック)の事例は、
・お客様も気づいていない課題を発見することの大切さ
・課題を解決する際の常識にとらわれない発想法
について学ぶ点が多くあります。

サイベックは長野県にある中小製造業です。主に自動車に使われる部品の加工をしています。プレス加工業界には、これら部品は「焼結+機械加工」「プレス+機械加工」「切削」「研削」といういくつかの工程をそれぞれ行い、時間のかかるものであるという常識がありました。これだと製造に時間がかかりますので、当然にコストも高くなります。
この常識を打つ破ったのが、彼らが開発した新工法「CFP工法」です。
これは、順送プレス加工技術と冷間鍛造技術を組み合わせた革新的なプレス工法技術で、大幅なコストダウンを実現しました。
コストダウンだけでなく、高精度も同時に実現するなど、製品競争力が拡大にアップし、高収益企業に生まれ変わりました。

詳しくは、ホームページで確認ください。

⑥得意先別採算分析とパレート分析で黒字化した食品販売会社A社
A社の事例は、
・採算管理制度の重要性と活用方法
・パレート分析と投入工数の戦略的活用
について学ぶ点が多くあります。

A社は、東海地方を営業基盤とする食品販売会社です。主要なお客様は、給食会社、飲食店を訪問して、食品を販売するいわゆるBtoBのビジネスです。
扱う商品は他社と差別化が難しいため、赤字が恒常化していました。
このままでは倒産してしまうため、A社は得意先別商品別に採算分析を行い、30%の粗利益率がない得意先はどこで、どの商品なのかを特定しました。
またパレート分析を行い、売上高全体の8割は、得意先の2割で占められていることが分かりました。
そこで、下位8割の顧客に対しては、取引を断られることを覚悟で大幅な値上げを実施。
上位2割の得意先に対しては、30%の粗利益率をとれていない商品について値上げを要求しつつ、これまで以上に丁寧に対応し、サービスを厚くしました。
下位8割の得意先のうち予想通り取引中止になった先もありましたが。そこに投入していた時間を、主要な得意先へ回しサービスを手厚くし、また、有力な得意先で未取引であった顧客候補への営業に投入することで得意先の入れ替えを行いました。
結果、粗利益率が劇的に改善し、黒字化に成功、その後も順調に業績を伸ばしています。

2.現状分析、現状把握(ステップ2)

前述の事例にもあるように、現状分析し把握することは戦略立案の第一歩です。
PEST、3cなどのフレームワークを使いながら現状を整理します。

■PEST
Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の頭文字です。
外部環境の分析をする際の視点を示してくれています。
状況を整理する場合、整理する対象に漏れがあると十分な状況把握ができません。
例えば、PESTのうち、Sの視点が欠けてしまうと、高齢化という経営にインパクトの大きいファクターが抜け落ちてしまいます。
この漏れを防ぐため、このようなフレームワークを使って整理します。
Politics(政治)は、規制、経済対策などの整理です。
Economy(経済)、景気動向、業界構造、為替、海外経済などです。
Society(社会)は、年齢構成、働き方、消費志向などです。
Technology(技術)は、技術動向です。
で、これらがどうなっているか、どうなっていくか?の視点で整理します。
国内だけでなく、国外も整理します。

ドラッカーは、未来はすでに今始まっているといいましたが、将来の動きを先取りし、先手先手で対応していくために行います。

■3c
Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の頭文字です。
これも漏れなく状況を整理するためのフレームワークです。
事業展開上の登場人物で状況を整理します。
なお、競合や自社の分析には競合内や自社内の状況だけでなく、サプライヤーも含めます。経営者の高齢化でサプライヤーが廃業することもありますので、重要な視点になってきています。

現状の整理が終わった後、分析をスタートします。
その第一の質問は以下だと思います。

・黒字会社であれば、なぜ黒字なのか?
・赤字会社であれば、なぜ赤字なのか?

この質問を出発点にすることで、分析が有意義なものになると思います。

分析の視点としては、
まず、
・競合の商品やサービスと比較する
ことがいいと思います。お客様は常に他社の商品やサービスと比較して意思決定しますから、お客様に購入していただいているのは、何らかの理由があるはずです。
そこをしっかり把握することが第一歩だと思います。

次に、
・単価や数量、商品別損益、リードタイムなど会社内部のデータを分析する
といいと思います。
経営は黒字でないといけませんので、そのためには、自社がどのような損益構造になっているかを把握する必要があります。
社内の財務データなどを分析し、把握します。

この場合、重要なのは時系列でみるということです。
黒字であっても、単価や数量、利益率が下降傾向にあるのであれば、それが意図しないものであれば、何らかの問題が生じている可能性があります。
このステップでしっかりと原因を追究することがポイントだと思います。

最後に、
・お客様の声を社長自ら聞きに行く。
ことで、上記分析で整理した「黒字の源泉=強み」「赤字の要因=課題」の裏付けをします。
社長の身分で訪問すると、お客様は本音を言わないかもしれませんので顧客サービス担当などと偽って訪問してもいいと思いますし、顧客アンケートの活用も方法だと思います。
お客様の声を直接お聞きすることで、現状分析が独りよがりになることを防ぐことができると思います。

黒字の源泉、赤字の要因が把握できたところで、次に、環境変化、時の経過の分析とその影響の把握をします。

黒字の場合、黒字の源泉が環境変化(PESTの視点。国外の状況変化も含めて分析)と時の経過(優秀な社員の定年退職など)によってどうなるか、を予測し、源泉がしばらくゆるぎないものなのか、追い風なのか、逆風なのか?喪失するのか?などを確認します。

赤字の場合は、
・このまま赤字だと財務的なデッドラインはどこか?
を把握し、原因対策を早急に打ちます。
経営計画というより、止血対策といったほうがいいかもしれません。

3.対策立案(ステップ3)

次に対策立案です。

現状分析が追い風であれば、
・それをどう活かすか?
を考えます。
つまり、
・強みを活かす
ことを考えます。
強みは、
・顧客が魅力を感じていること、
です。
また、
・真因
となりうるものです。決して表層的なものではありません。
例えば、貴社の強みは何ですか?と質問すると、よく、
・いい社風がある、顧客数が多い、ブランド力がある、技術力がある
などの解答がありますが、これはこれでいいのですが、ポイントは、
・なぜそうできているのか?そうなっているのか?
の真因の部分です。そこまで掘り下げて分析していただければと思います。

逆風であれば、
・どう対策するか
を考えます。

いずれも、事例研究で入手した知見を参考にしつつ、対策立案を行います。

なお、対策は自社リソースのみの利用ではなく、M&A、大学、スカウト(大手技術会社のOBや技術コンサルタント)、ビジネスパートナーなどの利用や協業の視点を取り入れます。もちろん国外も。日頃から広く人材やネットワークを求めることも今の時代には必要なことかと思います。

中小企業の対策立案ステップにおけるTIPSは以下のとおりです。
①財務面のTIPS
・薄利多売は厳しい、限界利益率を重視
・資産回転率は悪化させない
・大規模投資は自己資本とのバランスを取りながら行う

②戦略的なTIPS
・新分野の場合、小規模で販売実験したほうがいい
・新分野は埋められていない顧客の困りごとを狙い、ニッチ市場でトップを狙う
・既存商品サービスを横展開するのが比較的固い
・国外などの新市場で新分野にチャレンジするのはリスキー
・ITの徹底活用

③最も重要なTIPS
・独りよがりにならず、顧客の声、現場の声をよく聴く。

4.検証及び具体化(ステップ4)

これまでは経営戦略立案のフェーズでした。
最後のステップは、数値計画+アクションプランのフェーズです。

どんなにいいアイデアも、経営ですから儲からないとダメなアイデアです。
逆に数値計画がしっかり見えるアイデアは、いいアイデアだと言えると思います。

また、数値計画を詰めるプロセスで、戦略の「穴」が見えてきます。検討できていない部分です。
損益計算書の計画であれば、売上高は得意先別、商品別に数量×単価で詰めていきます。
このプロセスで、
・この値段でお客様は買ってくれるのか?
・この数量を販売する場合、マーケットシェアはどれくらい必要なのか?
などを詰めることになります。
この単価では無理だ、となれば、アイデアを見直すことになります。
単価の見直しや、単価を認めていただけるような商品の付加価値の見直しやプロモーションの展開などがあろうかと思います。
この時に、競合はどう動くかなど、3Cの視点で再度整理します。

この見直しは当然に原価にも影響します。量が変われば、原価も余分にかかりますし、物流も変わります。業務量増大のため、システム投資が必要かもしれません。
数値計画は何度も見直します。
この見直しには、
・ここが変わったら、ここが連動して変わる
という知見が必要です。これには専門家にアドバイスをもらったほうがいいと思います。

これと併せて、アクションプラン(行動計画)を作成します。
戦略を実現するため方法論を現場レベルに落とし計画的に進捗させられるような仕掛けです。5W1Hでチャート式に作成することが多いと思います。

5.まとめ(ステップ5)

計画策定に際しては、その前提として、
・当社の「意義」や当社で働くことの「意味」
を問うことになります。いわゆる理念ですね。
経営計画は、会社を成長に導くプランですが、同時に、事業にかかわるメンバーを勇気づけ、巻き込み、成長させるものでもあります。
この時
・意義、意味
を語れないと、いい結果は得られないと思います。

経営者は、意義や意味を語っていただきたいと思います。

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