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中国撤退ニュース 中国からの撤退でトラブルをできるだけ少なくするにはどうするか?

      2019/02/14

ここ数年、大手企業を中心にアジア地域でのビジネスチェーンを再構築する動きが盛んです。

各国の経済環境は常に変化しますから、それに合わせて対応するのは当たり前といえば当たり前ですが、国境の壁がますますなくなってきたよう気がします。

東南アジア各国では、少し前までは、サプライチェーンなど事業環境が十分には整わず、人件費は低いものの、家賃や材料費などのトータルのコストを考えると意外と高くつくこともあり、中国の人件費高騰やカントリーリスクなどの諸問題が指摘されていても、言われほど中国から東南アジアへの製造拠点の移管は進みませんでした。

しかし、最近の東南アジアは、業界によってはサプライチェーンが整いつつあるため、製造拠点を中国から東南アジアへ移管する動きが目立ってきました。

ステレオタイプではありますが、「中国は市場」という位置づけがますます強くなっています。

しかし、ご承知のとおり、中国から撤退するのはなかなか難しいものがあります。
撤退は地域経済にとってダメージになるため、すんなりとは認めてくれません。このため、思わぬ出費を強いられることがあります。

本記事では、このようなトラブルをできるだけ少なくするにはどうするかについてまとめています。
また、法律知識が重要になりますので、巻末に本ブログで解説した法律記事のリンクをまとめています。

ご参考になればと思います。

1.どんなトラブルがあるか?

たくさんのトラブルに見舞われますが、その中でも大きなものは、
①労務
②税務
の2つです。税務には税関も含みます。
この2つをコントロールできないと、思わぬ出費を強いられることになります。

また、合弁の場合は、
③合弁相手との協議
というハードルがあります。合弁は継続が難しく、合弁契約で約定した役割分担が有名無実になってしまい、結局、日本企業側が、本来中国企業側が果たすべき役割まで担ってしまっているケースが多く見られます。
中国企業側はフリーライド状態です。このよう状況では、中国企業側に会社を清算するインセンティブはありませんので、ずるずると、会社が続く(そのコストは日本企業側が負担)ということになります。
合弁は最初は両社盛り上がっていますのでいいのですが、後々大変です。

2.労務対策はどうするか?

日本語の話せる中国人弁護士を立てて、しっかりと話し合うことがポイントです。
日本人総経理が相当に流暢な中国語が話せたり、相当に優秀な通訳がいればいいですが、そんな条件がそろっている企業はあまりないと思いますので、コミュニケーション不足や法律知識不足からストライキに発展することは往々にしてあります(しっかり対応していてもストになることもままありますが)。

また、再就職の世話や経済補償金の上乗せ(単に上乗せするのではなく、たとえば、早期に解雇を承知してくれた社員には期間限定で1~2か月分の賃金を法定の経済補償金に上乗せする)などをし、最大限、社員の解雇後の生活の保障を行うこともトラブル回避策としては有効です。

いずれにしても、日本人総経理が中途半端に矢面に立つよりは、弁護士などの代理人を立てたほうがスムーズに進むケースが多いようです。

3.税務対策はどうするか?

清算に際しては、工商局、税務局、税関など会社設立や事業継続において登録登記した当局で閉鎖登記をする必要があります。
閉鎖登記は書類を提出すればいいというものでもなく、特に税務局では閉鎖登記を認める前に、最後の「税務調査」を行います。税関も同様です。

大企業は事業規模が大きいため、税務調査で否認があると、多額の追徴となります。これは税務局にとっては成績になりますので、じっくり時間をかけて税務調査されるケースがあります。

中堅中小企業ではそこまでは厳しくなく、上海などの大都市では数名程度の企業であれば、場合によっては税務調査もなく、閉鎖登記が認められるケースがあります。税務局も忙しいですから、調査しても得られる追徴が少ないと判断した場合には、力を入れてこないようです(ただ、忙しいあまり、閉鎖登記申請がほったらかしにされて、それが原因で時間がかかることはあるようです)。

とはいえ、中堅中小企業でも内部告発があると、しっかり調査されることが多いようです。
この場合、ピンポイントで調査されますので内部告発があったことは容易に推察できます。

このため、普段から、経理はアウトソーシングして税務的に問題のない処理をするようにする体制を構築し、また、定期的に親会社が専門家と一緒に内部統制調査をするなどして、税務リスクを軽減することが求められます。

3.撤退を考え始めたら何から手をつけるか

何かアクションをする時の王道として、
・まずは現状把握
があります。
撤退の場合も同様です。内部統制調査と称して、親会社と専門家でチームビルドして、撤退を実施する場合に想定される論点を整理し、シミュレーションを行います。
シミュレーションは何と言っても資金繰りです。
・経済補償金としていくら必要か?
・明確なコンプラ違反がある場合、それを解消するのに、いくら必要か?
・清算手続き中の固定経費はいくらか?
・違約金がある場合それはいくらか?
・専門家費用はいくらか?
などを見積もります。

また、撤退と並行して持分の売却についても検討します。
売却先として多いのは、製造業であれば、
・近隣の製造業
・得意先や仕入先
・社員
です。日本と同様にM&Aブティックに買い手を探してもらうケースもありますが、なかなか見つかりませんので、自らで事業発展のための合弁相手を探すなどの名目で買い手候補を探します。
売却は相手のある話ですので実現するのは難しいですが、決まれば清算と比べて楽に中国から撤退できます(譲渡益があると、株主である日本親会社は中国において譲渡益の10%の納税義務が発生します)。

4.まとめ

清算手続きは現地の会計事務所や法律事務所に委託することになり、現地子会社の総経理が彼らと進めていくことになりますが、日本親会社としても現地に任せきりにせずに、コントローラーとして積極的に関与していくことが必要です。
親会社、現地総経理、現地専門家の3者間でスカイプやウィーチャットでテレビ会議を定期的に実施することが大切です。
ただ、親会社に中国撤退を進めたことがある人材は少ないと思いますので、日本国内で親会社の責任者を補佐する専門家を付けることもスムーズに進めるための有効な手立てとなります。

スムーズに進めるには、何よりもチームビルディングが重要になります。
コストを惜しむ余り、自社だけで進めるのはリスクがあり結局高くつくことになりかねません。
専門家の補佐を受けながら、しっかりとプロジェクトをコントロールすることがスムーズな撤退のキモになります。

5.関連知識

本ブログの撤退関連記事のリンクを下記にまとめます。
実務は専門家に対応してもらうにしても、議論の知識としてご参考になさってください(投稿当時の法律による内容ですので、実施に際して現在の法律と照らして確認してください)。

中国撤退、組織再編シリーズ 清算(1)
中国撤退、組織再編シリーズ 清算(2)
中国撤退、組織再編シリーズ 清算(3)
中国撤退、組織再編シリーズ 清算(4)
中国撤退、組織再編シリーズ 清算(5)
中国撤退、組織再編シリーズ 清算(6)
会社を清算した際の税金計算の方法
会社清算時に在庫にかかる増値税は仕入税額控除できるか?
”三証合一”質疑応答(9)清算登記で求められる税務関連手続きとは?
清算時に税務上の繰越欠損金を利用できるか?
企業が事業年度の途中で営業を終了した場合、納税はどうなる?
清算所得はどのように計算するか?
会社清算時に手元に残った発票はどうするか?
中国子会社の持分を譲渡した場合、課税されます
清算終了後も刑事責任に注意が必要です
経済補償金と個人所得税の関係
企業登記抹消後、帳簿はどうするか?
撤退時、税務局にどんな書類を提出しなければならないか?
リストラを実施する際、どのような手続きを踏まないといけないか?
解雇で経済補償金を支払った場合、源泉しないといけないか?
労働者自らが労働契約を解除した場合に、企業が経済補償金を支払わなければならないケースとは?
勤続一年未満の社員に経済補償金を支払う時は、どう計算するか?
話し合いで労働契約を解除した場合、経済補償金は支払う?
新個人所得税法で経済補償金の優遇税制はどうなるか?

6.撤退アドバイリーサービスとは?

経済環境の変化に伴い、グルーバルな事業展開を見直しする企業が増えています。中国からの撤退もその論点の一つです。
しかしながら、
・撤退を検討するにしても、何を検討するのわからない!
などのことはありませんか?
これに対して、当社はアドバイザーとして貴社の撤退プロジェクトをサポートします。

①準備
まず、貴社を訪問して中国子会社の状況をお伺いします。その後、論点整理を行い検討すべき項目をしっかり把握していただくようにいたします。
※移動の関係上、申し訳ありませんが、関東地方、東海地方、近畿地方に限定させていただきます。

②方向性検討
社長とのMTGで清算か売却かどちらもかの方向性を検討します。
方向性決定後、チームビルディングを行います。

③実施
方向性決定によりプロジェクトがスタートした場合には、チームメンバーによる定期MTGに参加し、議論がスムーズに進むようファシリテーションを提供します。

本サービスについてご質問ご相談がありましたらこちらまでご連絡ください。

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