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中国からの撤退する本当の理由

      2017/01/19

中国からの撤退する本当の理由

最近、人件費の上昇などを理由に中国からの撤退が相次いでいる、というような記事が目立ちます。その撤退理由はなんでしょうか?巷で言われるような「中国経済はもう終わり」というのが理由でしょうか?

各社の撤退ケースや調査レポートをもとに分析したいと思います。

1.撤退ニュースの分析

各社の事情を鑑みると、中国固有の問題による撤退ということだけでもなさそうです。

(1)事業戦略の見直しからの撤退

東芝はテレビを生産していた大連工場を2013年に閉鎖しましたが、それに先立ち、ポーランド工場を台湾企業に売却しています。
中国工場の閉鎖後、2015年1月に北米テレビ事業を売却、また、インドネシア工場も売却方針で、結果として、海外テレビ事業そのものからの撤退を予定しているようです。

つまり、中国だから閉鎖したというよりも、海外では自前の工場を維持することを止めた、というのが理由のようです。東芝のテレビ事業は赤字であり、韓国勢との競争などの要因で、中国だろうがどこだろうが、どこで生産しても競争力のあるテレビが生産できないというのが、根本的な理由のようです。

(2)経営戦略の失敗による撤退

イトーヨーカ堂の北京事業や、餃子の王将がこのパターンです。
イトーヨーカ堂の中国事業は、成都と北京が中心です。成都事業は好調で市民生活に浸透しています。組織運営においても、総経理に中国人(女性)が就任するなど現地化が進んでいます。しかし、北京事業は苦戦しています。
その要因について、2014年に就任した総経理は「低価格戦略にこだわりすぎて価値の追求にシフトした消費者ニーズをとらえ切れていなかった」と分析しています。筆者も北京のイトーヨーカ堂には買い出しに行きましたが、失礼ながら「普通の店」という印象で、そこじゃないとダメというレベルのものではありませんでした。消費者に訴える何かに欠けていたように感じます。

イトーヨーカ堂、イオン、ユニーといった業態は、コンビニエンスストアや衣料専門店の台頭などで、日本では苦戦しています。中国市場においても、同じような状況になることは容易に予想できます。店舗閉鎖の要因は、消費者ニーズの見誤りに加えて、業態自体が抱える課題ともいえそうです。

(3)人件費高騰による撤退

シチズンが広州工場を2015年2月に閉鎖しました。閉鎖の要因としては、人件費の上昇と環境問題の2点が報道されています。

広州の2015年最低賃金上昇率は前年比22%で高い伸びとなりました。広東省は深センを中心に「来料加工」と呼ばれる低賃金を利用したビジネスモデルが隆盛しましたが、人件費の上昇で、安い人件費を前提とするモデルは回らなくなっています。シチズンはタイに拠点を移すようです。

(4)その他の要因による撤退

 その他の要因として大きいのが円安です。2011年と比較すると、3割以上円安になっていますので中国から日本へ輸出しても、算盤が合いません。中国市場で販売ルートが見つけられないと輸出型ビジネスモデルは厳しい状況にあります。

2.調査レポート分析

撤退には様々な要因があると思いますが、直接的な要因になるのは

  • ①足元が赤字
  • ②他国との魅力度比較
  • ③見通し

が主にあろうかと思います。このあたりをジェトロの「在アジア・オセアニア日系企業実態調査」を参考にして見てみたいと思います。

(1)ジェトロ調査の結果

①黒字企業が過半数

それによると、2014年は64.1%の企業が黒字でした。2013年は60.7%、2012年は57.2%でしたので、黒字企業の割合が増加しています。撤退報道が多くありますので、赤字企業が多い印象があるかもしれませんが、意外に逆のデータとなっています。

②ただし、他国より魅力は劣る

中国は19か国中11位で、中国以下には、ベトナム(62.3%)、インドネシア(60.7%)、インド(53%)などがあります。上位には、パキスタン(84.2%)、台湾(83.8%)、などがあります。日系の進出が盛んなタイは66.9%の企業が黒字で、そういった国に比べると劣りますので、他国へシフトするということは撤退の要因としてあるだろうと思われます。

③見通し

 中国での事業を縮小、移転、撤退すると回答した企業の割合は、2011年調査が4.4%、2012年が5.8%、2013年調査が6.2%、2014年調査が7.5%となっており、微増しています。縮小等を検討する要因としては、コスト増加が65.3%、売上減少が61.1%と高くなっており、事業環境が厳しくなっていることが要因として挙げられます。

調査レポートからは、

  • 黒字企業が増加しているが、他国よりは劣る
  • しかしながら、撤退等を検討する企業もあるが、その割合は少なく多くの企業は維持や拡大を予定している。

ということが読み取れます。

3.中国からの撤退する本当の理由まとめ

黒字企業の割合が増加するなど、報道されるほどには、悲惨な状況ではなさそうです。また、撤退理由も様々で、中国だからという固有の理由では語れない状況かと思います。

経済発展にともない、事業環境が変化するのは至極当然ですので、冷静に事業環境変化を分析し、中国を如何にうまく利用するかをしたたかに計算することが大切になっていると思います。報道に惑わされず、自社の事業にとってどうなのかを、しっかり検討することがポイントかと思います。

 なお、突然の環境変化に備えて、撤退シミュレーションはされておかれたほうがよろしいかと思います。年度末などに、清算貸借対照表を作成するなどし、主に以下の点を押さえておかれるとよろしいかと思います。

  • ①清算の手順や関連法律をよく理解し、ベースの書類を整える。
  • ②資産を売却する場合の時価や経済補償金を計算し、清算時に追加資金が必要かどうかを確認する。
  • ③税務処理が正しく行われているかをレビューし税務調査に耐えられるか否かを確認する。不備があれば是正する。
  • ④資産廃棄損失など清算時特有の損失が税務上経費として認定されない場合の納税計算をしておく。
  • ⑤売却相手があるかどうかを調査する。
  • ⑥すぐに清算チームを立ち上げられるように専門家との関係を密にしておく(行政とのコネクションを持っている専門家のリテインを含みます)。

どんな環境変化があってもうまく対応できる体制を整えることがポイントかと思います。

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