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中国経済ニュース 中国の不良債権は多いのか少ないのか?

      2021/01/04

中国での不良債権の増加が日本のメディアでは危惧されています。
そこで、本日は、不良債権の量が多いのか少ないのかについて検討してみたいと思います。

日本メディアが不良債権に敏感になるのは、小泉政権の不良債権処理の体験にあると思われます。
この時に、金融機関の貸し出し姿勢が縮小し、多くの企業が倒産したからです。
銀行も再編が進み、2004年には東京三菱銀行とUFJ銀行が統合を発表しました。実質的に東京三菱に吸収されるような形になった再編直前のUFJ銀行は経営を立て直すべく、私の地元の名古屋地区でも中小企業への貸し出しを急速に縮小していました。
これが、貸し渋り、貸し剥がしと呼ばれるようになり、財務的に弱くなっていた中小企業が、倒産や廃業を余儀なくされました。

つまりは、小泉竹中ラインの金融検査政策による不良債権処理の促進要求は、金融機関の財務(自己資本)を減少させるため、金融機関がそれを回避するために貸し剥がしなどの行為に走ったのが、不況の要因の一つであったということです。金融機関は国際的なバーゼル規制や国の安全規制で、ある程度の自己資本がないと営業ができません。
具体的には自己資本比率と呼ばれるものです。自己資本比率は自己資本÷総資産で計算されますが、これを高めるためには、①総資産を削る(貸出を抑制する)、②儲けて自己資本を厚くする(不良債権のようなロスは出さない)ことが代表的な手法です。
貸し剥がしは、①にも②にも有効なため、当時、金融機関自らが生き残るため、これが行われていました。
私は、当時、不良債権ファンドにおりましたので、最前線で実体験しています。

よって、不良債権が多いか少ないかは、その絶対額を見るだけでなく、金融機関の自己資本との比較して見ることになります。
例えば、不良債権が1兆円あっても、金融機関の自己資本が100兆円あれば、痛くも痒くもないからです(不良債権は無いに越したことはないですが)。

では、中国の商業銀行のそれらはどうなっているでしょうか?
データは、人民政府のホームページで以下のように公表されます。四半期でのプレスです。

下表を見ると、一番右側の第三四半期(三季度)の不良債権(不良贷款余额)は、2兆8,350億元です。また、不良債権になる可能性のある要注意債権(关注类贷款)が、3兆8,380億元あります。
不良債権と要注意債権の合計は6兆6,730億元となります。

これが2020年9月末の中国の商業銀行が抱える不良債権とその予備軍(以下、不良債権等とする)の総額です。

また、不良債権等は返済されるかどうか怪しい貸し出しです。
返済されないと、銀行としてはロスとなりますので、会計上のルールで、あらかじめロスを見込み計上することになります(引当する、といいます)。
この引当は、会計用語では貸倒引当金と呼ばれます。中国では、坏账准备といいますが、この表では贷款损失准备となっています。一般企業では売掛金の未回収に対しても引当するため坏账准备、銀行は貸金(贷款)に対しての引当のため呼び方に差異があると思われます。
さて、引当金は、5兆998億元あります。これは不良債権等の6兆6,730億元の76%に当たります。

意味合いとしては、不良債権等の76%が実際に返済されなくても、銀行はロスを計上することはないとなります(すでに計上済みだから)。
つまり、現在の不良債権等の全額が返済されなくても、銀行が被る損失は、残りの1兆5,732億元で済む、となります。

では、この金額が実際にロスになった場合、銀行は耐えられるのでしょうか?銀行の自己資本をチェックしたいと思います。
自己資本は決算書の資本の部の額に相当しますが、銀行の自己資本は複雑なため、最も狭い定義の自己資本である中核的な自己資本(核心一级资本金额)で見ると、17兆2,354億元となっています。
広い概念では、23兆7,854億元もあります。

よって、先ほどの不良債権類の引当がされていない部分が全額ロスになっても(1兆5,732億元)、中核的な自己資本が17兆2,354億元もあるので、自己資本比率にはあまり影響はない、となります(短期の資金繰りは別問題です)。
つまり、日本の金融機関のように焦って貸し剥がしや貸し渋りをする必要はないとなります(中国政府が小泉竹中ラインのような性急な不良債権処理を金融機関に要求するとも思いません)。

中国の不良債権の分類や開示が怪しいとして、仮に不良債権2.8兆元の5倍あったとしても14兆元ですので、17兆元の自己資本は3兆元残ります。中国のルールでは、期末で自己資本比率10.5%以上をを求められますので、3兆元では十分ではありませんが、自己資本がマイナスになる債務超過状態は回避できます(もちろん、貸出債権以外にも資産があるでしょうし、その時価が下がっているとそのロス分も資本を直撃しますので、そこの検討も必要ではあります)。

もちろん、個別の銀行によっては、財務のバランスが大きく崩れている可能性もありますので、経営不安が出る銀行もありますが、マクロ的には、2.8兆元の不良債権の額は相対的には多くはない、と見ることができると思います(すでに引当して実質オフバランス済みと思われます)。また、物的担保もあるでしょうから、それを処分して一部返済に充当できれば、損失を減らすことができます。

ということで、マクロ的には、現在の不良債権の額はそれほど心配するほどのレベルではないと思います。ただ、自己資本比率(銀行においては正確には資本充足率という指標になります)は10%ギリギリなので、これを厳密に守ろうとする場合には、これ以上の収益悪化や不良債権の増加は攪乱要因になりそうです。
つまり、市中にマネーが供給されなくなり実体経済に影響が出る可能性があるということです。

1月中旬に、第四四半期のデーターが開示されますし、その後も、四半期ごとに開示されます。
日本のような不良債権処理からの不況が発生するかどうかをチェックするためにも、これら情報を意識しておく必要があろうかと思います。

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