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中国経済ニュース TPP協定の「国有企業条項」は中国にとって本当に厳しいものなのか?

      2020/12/14

RCEP合意後間もなく、習主席がTPPへの参加意欲を口にしました。
しかしながら、TPPは条件が厳しいため参加できないのではないか、などの指摘も出ています。そこで本日は、中国にとって厳しい条件の一つとして挙げられているTPP協定の第17章「国有企業条項」について主な内容をご紹介したいと思います。

中国が参加する場合、既存参加国との交渉によっての条件変更があるのかもしれませんが、アメリカが復帰するかなども絡みそうですので、現状はその可能性については不透明です。
いずれにしても、現在の条件のままでは加入が難しいのであれば、条件を変更するか、条件を満たすように国有企業改革をするか、になるかと思います。
中国はルールメーカーですので条件変更の可能性も高そうですが、どこが変わるのかを理解するためにも、現在の条件を確認しておくことは有用かと思います。

多くの識者が習主席発言の狙いなどを分析しています。
・アメリカが入ってくることを見越して中国とアメリカの貿易をTPPで縛ってしまい、デカップリングできないようにしようという狙いがある、
・TPPへの参加意欲を示している台湾の加入を牽制する狙いがある、
・日本のプレゼンス拡大を抑制するため、
など様々な見方があります。

TPPは、アメリカ離脱前のもともとのTPP協定(環太平洋パートナーシップ協定)と、離脱後にその運用を一部停止する協定であるTPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)で構成されています。
TPP訳文

TPP協定は全30章からなる大変長い協定です。
TPP11協定は全7条で構成されており、TPP協定のうち、適用停止するものを定めた内容が主となっています。TPPにはアメリカの厳しい要求が含まれるため(多くは知財)、アメリカが離脱したことで、その適用を停止しようというものです。参加国にとってはハードルが下がった格好になります。適用停止項目はTPP11協定の第二条で定められ、具体的には附属書で列記されています。

では早速、第17章(国有企業及び指定独占企業)の内容を見ていきたいと思います。

 

1.TPP協定の国有企業条項の狙い

大まかな考え方は、政府からの補助を受けた国有企業が、民間企業間取引ではありえないような取引条件を市場で提示することで公正な取引を阻害することを規制するものです。
WTO協定にもこれを規律する協定がありますが、TPPの方が厳しいとされています。この比較については後半で触れたいと思います。

2.TPP協定の国有企業条項の構成

TPP協定第17章の構成は以下です。なお、ページ数は、内閣官房のホームページで開示されている訳文サイトの17章PDF資料のページ数です。
第17・1条 定義(p1)
第17・2条 適用範囲(p7)
第17・3条 委任された権限(p11)
第17・4条 無差別待遇及び商業的配慮(p11)
第17・5条 裁判所及び行政機関(p15)
第17・6条 非商業的な援助(p16)
第17・7条 悪影響(p19)
第17・8条 損害(p23)
第17・9条 締約国別の附属書(p26)
第17・10条 透明性(p27)
第17・11条 技術協力(p33)
第17・12条 国有企業及び指定独占企業に関する小委員会(p33)
第17・13条 例外(p34)
第17・14条 追加的な交渉(p39)
第17・15条 情報を収集するための過程(p39)
附属書17-A(基準額の算定)(p40)
附属書17-B(国有企業及び指定独占企業に関する情報を収集するための過程)(p42)
附属書17-C(追加的な交渉)(p45)
附属書17-D(地方の国有企業及び指定独占企業についての適用)(p46)
附属書17-E(シンガポール)(p53)
附属書17-F(マレーシア)(p56)

3.適用される範囲(p7)

国有企業条項が適用されるのは(第17・2条)、
・この章の規定は、締約国の国有企業及び指定独占企業の活動であって、自由貿易地域において締約国間の貿易又は投資に影響を及ぼすものについて適用する。
となっており、注書きとして
・この章の規定は、締約国の国有企業の活動であって、第17・7条(悪影響)に規定する非締約国の市場において悪影響を及ぼすものについても適用する。
があり、締約国間域内だけの取引に限定しているものではありません。

国有企業は、以下のように定義されています(p7)。
・国有企業とは、主として商業活動に従事する企業であって、次のいずれかに該当するものをいう。
(a)締約国が50%を超える株式を直接に所有する企業
(b)締約国が持分を通じて50%を超える議決権の行使を支配している企業
(c)締約国が取締役会その他これに相当する経営体の構成員の過半数を任命する権限を有する企業

また、指定独占企業は、以下のように定義されています(p2)。
・この協定の効力発生の日の後に指定される私有の独占企業及び締約国が指定する又は指定した政府の独占企業をいう。

4.締約国が確保すべき事項(p11)

これは、4条(無差別待遇及び商業的配慮)に定められています。
TPPの国有企業条項の眼目は、政府からの補助金などの援助を受けた国有企業の競争歪曲行為を規制することにありますが、これを担保するために政府が果たすべき役割が、4条や6条にあります。

4条では、
・各締約国は、自国の各国有企業が、商業活動に従事する場合には次のことを確保する
ことが求められています(p12)。その内容は以下です。
(a)物品又はサービスの購入又は販売に当たり、商業的配慮に従って行動すること
(b)物品又はサービスの購入に当たり、
(i)他の締約国の企業によって提供される物品又はサービスに対し、自国、その他のいずれかの締約国又は非締約国の企業によって提供される同種の物品又はサービスに与える待遇よりも不利でない待遇を与えること。
(ii)自国の領域内の対象投資財産である企業によって提供される物品又はサービスに対し、自国、その他のいずれかの締約国又は非締約国の投資家の投資財産である企業によって自国の領域内の関連市場において提供される同種の物品又はサービスに与える待遇よりも不利でない待遇を与えること。
(c )物品又はサービスの販売に当たり、
(i)他の締約国の企業に対し、自国、その他のいずれかの締約国又は非締約国の企業に与える待遇よりも不利でない待遇を与えること。
(ii)自国の領域内の対象投資財産である企業に対し、自国の領域内の関連市場において、自国、その他のいずれかの締約国又は非締約国の投資家の投資財産である企業に与える待遇よりも不利でない待遇を与えること

なお、このような内容は、国有企業だけでなく指定独占企業が活動する際にも確保するよう求められています。指定独占企業については、
・その独占的地位を利用して、自国の領域内の非独占的な市場において締約国間の貿易又は投資に悪影響を及ぼす反競争的行為に直接又は間接に従事しないこと
も確保することが求められています(p14のd)。

次に、6条(非商業的な援助)(p16)ではまず、
・いすれの締約国も、自国の国有企業に対して直接又は間接に提供する次の事項に関する非商業的な援助によって、他の締約国の利益に悪影響を及ぼしてはならない。
(a)当該国有企業による物品の生産及び販売
(b)自国の領域から他の締約国の領域への当該国有企業によるサービスの提供
(c)他の締約国又はその他のいずれかの締約国の領域内の対象投資財産である企業を通じた当該他の締約国の領域内でのサービスの提供
とし、さらに(p17)、
・各締約国は、自国の公的企業及び国有企業が、自国の国有企業に対して提供する次の事項に関する非商業的な援助によって、他の締約国の利益に悪影響を及ぼさないことを確保する。
(a)当該国有企業による物品の生産及び販売
(b)自国の領域から他の締約国の領域への当該国有企業によるサービスの提供
(c)他の締約国又はその他のいずれかの締約国の領域内の対象投資財産である企業を通じた当該他の締約国の領域内でのサービスの提供
としています。

また(p17)、
・いずれの締約国も、次のいずれにも該当する場合には、他の締約国の領域内の対象投資財産である自国の国有企業に対して直接又は間接に提供する非商業的な援助によって、当該他の締約国の国内産業に対して損害を与えてはならない。
(a) 当該非商業的な援助が当該他の締約国の領域における当該国有企業による物品の生産及び販売に関して提供されている場合
(b)同種の物品が当該他の締約国の国内産業により当該他の締約国の領域において生産され、及び販売されている場合。
とも定めています。

なお、「非商業的な援助」は、以下のように定義されています(p3)。
・非商業的な援助とは、国有企業に対する当該国有企業が政府によって所有され、又は支配されていることに基づく援助をいう。

さらに、「援助」は、以下のように定義されています(p4)。
・援助とは、次のいずれかに該当するものをいう。
(i)次のいずれかに該当するものを含む資金の直接的な移転又は資金若しくは債務の直接的な移転の可能性
(A)贈与又は債務の免除
(B)当該国有企業が商業的に利用することができる条件よりも有利な条件による貸付け、債務保証又は他の種類の資金供給
(C)民間投資家の投資に関する慣行(危険資本の提供に関するものを含む。)に適合しない出資
(ii)当該国有企業が商業的に利用することができる条件よりも有利な条件によって提供される一般的な社会資本以外の物品又はサービス

続けて、上記「非商業的な援助」における「国有企業に対する当該国有企業が政府によって所有され、又は支配されていることに基づく」は、以下のように定義されています(p5)。
・締約国又はその公的企業若しくは国有企業によって、次のいずれかが行われることをいう。
(i)援助を利用する機会が当該締約国の国有企業に明示的に限定されること。
(ii)当該締約国の国有企業により支配的に利用される援助が提供されること。
(iii)当該締約国の国有企業に対し、均衡を失した多額の援助が提供されること。
(iiii)援助の提供に関する裁量の利用により当該締約国の国有企業が優遇されること。

5.民事請求はどこで?(p15)

紛争なった場合、どこの裁判所が管轄するかの条項は以下となっています(5条)。
・各締約国は、外国政府が所有し、又が持分を通じて支配している企業に対する民事請求について、自国の領域において行われる商業活動に基づき、管轄権を自国の裁判所に与える。

日本での揉め事は日本の裁判所が管轄することになりそうです。

6.悪影響とは?(p19)

TPP協定では、競争歪曲行為から生じる悪影響について定めています。
悪影響は、非商業的な援助の影響が次のものである場合に生じる、として以下のようにされています(7条)。
(a)当該非商業的な援助を受けた締約国の国有企業による物品の生産及び販売によって、当該締約国の市場への他の締約国からの同種の物品の輸入又は当該締約国の領域内の対象投資財産である企業が生産する同種の物品の当該締約国の市場における販売を代替し、又は妨げるもの
(b)当該非商業的な援助を受けた締約国の国有企業による物品の生産及び販売によって、次の販売又は輸入を代替し、又は妨げるもの
(i)他の締約国の領域内の対象投資財産である企業が生産する同種の物品の当該他の締約国の市場における販売又はその他のいずれかの締約国からの同種の物品の当該他の締約国の市場への輸入
(ii)他の締約国からの同種の物品の非締約国の市場への輸入
(c)当該非商業的な援助を受けた締約国の国有企業が生産し、及び販売する物品について、
(i)一の締約国の市場において当該物品が販売される場合には、その価格を他の締約国から輸入される同種の物品の同一の市場における価格若しくは当該一の締約国の領域内の対象投資財産である企業が生産する物品の同一の市場における価格よりも著しく下回らせるもの又は同一の市場において価格の上層を著しく妨げ、価格を著しく押し下げ、若しくは販売を著しく減少させるもの
(ii)非締約国の市場において当該物品が販売される場合には、その価格を他の締約国から輸入される同種の物品の同一の市場における価格よりも著しく下回らせるもの又は同一の市場において価格の上昇を著しく妨げ、価格を著しく押し下げ、若しくは販売を著しく減少させるもの
(d)当該非商業的な援助を受けた締約国の国有企業が提供するサービスによって、他の締約国の市場において当該他の締約国又はその他のいずれかの締約国のサービス提供者が提供する同種のサービスを代替し、又は妨げるもの
(e)当該非商業的な援助を受けた締約国の国有企業が他の締約国の市場において提供するサービスの価格について、当該他の締約国若しくはその他のいずれの締約国のサービス提供者が提供する同種のサービスの同一の市場における価格よりも著しく下回らせるもの又は同一の市場において価格の上昇を著しく妨げ、価格を著しく押し下げ、若しくは販売を著しく減少させるもの

なお、
・物品又はサービスを代替し、又は妨げることには、相対的な市場占拠率の著しい変化が同種の物品又はサービスにとって不利益となるように生じたことが立証される場合を含む
とされ、相対的な市場占拠率の著しい変化の定義も明記されています(p21)(詳細な内容は省略します)。

では、悪影響を受けた場合の「損害」についてはどのように定義されているのでしょうか?

7.損害とは?(p23)

8条で損害について定義されています。内容は以下です。
・6条(商業的な援助)3の規定の適用上、「損害」とは、国内産業に対する実質的な損害若しくは実質的な損害のおそれ又は国内産業の確立の実質的な遅延をいう。

また、「実質的な損害の決定」は、
・実証的な証拠に基づいて行うものとし。関連する要因(非商業的な援助を受けた対象投資財産による生産量、このような対象投資財産による生産が、国内産業が生産し、及び販売する同種の物品の価格に及ぼす影響並びにこのような対象投資財産による生産が同種の物品を生産する国内産業に及ぼす影響を含む。)の客観的な検討に基づいて行う。
としています。

8条では上記の定義の他、損害決定の際に考慮すべき事柄(生産量、価格、利益など)やその判断の指針などが盛り込まれています。

損害の立証においては複数の要素で総合的に判断することになり、因果関係の立証などは簡単な作業ではなさそうです。
例えば、同条3では(p24)、
・非商業的な援助を受けた対象投資財産が生産し、及び販売する物品が国内産業に及ぼす影響についての検討には、当該国内産業の状態に関係を有する全ての経済的な要因及び指標(生産高、販売、市場占拠率、利潤、生産性、投資収益又は稼働率の現実及び潜在的な低下、国内価格に影響を及ぼす要因、資金流出入、在庫、雇用、賃金、成長、資本調達能力又は投資に及ぼす現実の及び潜在的な悪影響並びに農業については政府の助成制度に対する負担の増大の有無を含む。)についての評価を含む。これらの要因及び指標は、全てを網羅するものではなく、これら要因のうち一又は数個の要因のみでは、必ずしも決定的な判断の基準とはならない。
とされており、なかなか難しい作業になりそうです。

8.国有企業条項の適用留保(p26)

国有企業条項は途上国にとっては厳しいものになっていますが、9条及び附属書Ⅳで適用留保が定められています。附属書Ⅳの1には以下のように書かれています。
・この附属書の各締約国の表は、国有企業又は指定独占企業による適合しない活動について、第17・9条(締約国別の附属書)1の規定に従って記載するものであり、次に掲げる各条に定める義務の一部又は全部は、これらの活動については、適用しない。
(a)第17・4条(無差別待遇及び商業的考慮)
(b)第17・6条(非商業的な援助)
なお、内閣官房のTPPサイトには、附属書の表は割愛されていました。

これ以外にも2(p27)及び附属書には、
・第17・4条(無差別待遇及び商業的考慮)、第17・5条(裁判所及び行政機関)、第17・6条(非商業的な援助)及び次条(透明性)の規定は、附属書17-D(地方の国有企業及び指定独占企業についての適用)に掲げる締約国の国有企業又は指定独占企業については、適用しない。
とあり、地方政府が所有し、又は支配している国有企業及び地方政府が指定する指定独占企業については、適用しない条項が各国別にまとめられています。
また、さらに各国別に適用留保の附属書を作成しており、例えばマレーシアの附属書には政府系ファンド(プルモダラン・ナショナル社)傘下の企業に対してなどの適用留保など個別な内容がまとめられています(17-F)。

ということで、地方政府関連や各国個別の案件については留保が認められています。なお、地方政府関連に対する適用拡大について、締結後5年以内に追加的な交渉をする条項があります(第17・14条及び附属書17-C)。

9.国有企業の情報をどう入手するのか?(p27)

これまでの規律を運用するには、国有企業とは何か、どのような活動をしているかなど様々な情報が必要です。これら情報のやりとりについては、第17・10条(透明性)にまとめられています。

例えば、10条3では以下のようになっています(p29)。
・締約国は、他の締約国の書面による要請があるときは、国有企業又は政府の独占企業に関する次の情報を速やかに提供する。ただし、当該要請が、これらの企業の活動がどのように締約国間の貿易又は投資に影響を及ぼしていると考えられるかに関する説明を含む場合に限る。

この条文以降、提供すべき情報などがかなり細かく書かれています。要請を受けた側の締約国は速やかに提供することが求められています(p30)。

10.17章の見直し(p33)

これについては、17・12条(国有企業及び指定独占企業に関する小委員会)で小委員会を設置して議論する建付けになっています。
小委員会の任務は以下です。年一回は会合することになっています。
(a)この章の規定の運用及び実施について見直し及び検討を行うこと。
(b)締約国の要請により、この章の規定の下で生ずる事項について協議すること。
(c)自由貿易地域においてこの章に定める規律の基礎となる原則を促進し、並びに二以上の締約国が参加する他の地域機関及び多数国間機関における同様の規律の発展に貢献するため、適当な場合には、協同の努力を発展させること。
(d)国有企業等小委員会が決定する他の活動を行うこと。

以上がTPP協定の主な内容です。
損害の評価などの技術的な難しさはありそうですが、補助を受けた国有企業によるダンピングなどの競争歪曲行為の抑制にはつながりそうな内容です。各国政府がしっかりと「確保」できればではありますが。

次にWTOとの違いについて、経済産業省の資料を参照しご紹介します。

11.WTO補助金協定との違い

WTO協定にも補助金協定の規律がありますが、以下の内容になっています。
・加盟国・公的機関等は、物品販売に関し、特定性のある補助金を交付し、他の締約国の利益に著しい害を及ぼしてはならない。

この内容に対して、経済産業省資料では以下の問題を指摘しています。
・政府・公的機関が補助金を交付する場合にしか適用がなく、政府が、公的機関以外の主体を通じ国有企業に補助金を交付する場合、規律対象から外れる。なお、民間団体が政府・公的機関の指示・委託を受けて補助金を交付する場合も、WTO補助金協定の適用があるが、当該判断は事実関係次第であり、明示的な指示・委託がない限りは、その立証は容易ではない。
・物品に対する補助金にしか適用がなく、サービスに対する補助金は規律対象外。
・適用基準が必ずしも明確でない要件(「公的機関」、「補助金」等)があり、また、一部要件(「著しい害」等)は経済分析を要するなど立証の負担が重いとされている
・通報義務の不遵守による透明性の欠如。

これまで見てきたTPP協定では、上記の不備を(いくぶんか)補うことができる内容です。
このため、WTOに加盟しているからといって、そのままの状態でTPP協定に加盟できるわけではなさそうです。

最後に、アメリカ離脱後のTPP11(CPTTP)の適用停止との関連についてご案内します。

12.TPP11協定における適用停止事項

TPP協定は、アメリカの要求が強い分野があり、参加国に厳しい条件がいくつかあったようです。
アメリカ離脱を受けて、その後の11か国の交渉で、アメリカが強く要求したこれら条件のいくつかについて適用を停止することに至っています(そのほとんどは知財に関する条項)。
それをまとめたのが、TPP11協定です。
TPP11協定の第二条に「特定の規定の適用の停止」があり、ここで、TPP協定のうち、適用を停止するものが書かれています。
これにより国有企業条項で停止されているのは1項目です。
・附属書Ⅳのうち、マレーシアの表の留保事項二に適合しない活動の範囲中「この協定の署名の後」の規定

ということで、直接的には、ほとんどの国有企業条項はTPP11でも適用停止にはなっていない状態です。

13.まとめ

TPP協定の国有企業条項は、WTO協定の不備を補完できる内容になっているため、この条文のまま、中国が加入することはやはり難しいように思います。
ただ、各国政府が補助をした国有企業が競争歪曲行為をしないことを「確保」できればの話ではあります(つまり「守れば」の話)。
WTP加盟時のように、TPP加入に際しては「確保」を担保するための国内体制や国内ルールの整備などをすることになるでしょうからここはハードルが高いように思われます。

中国国有企業は国からの補助金や低利融資などの援助を受けて低価格攻勢などを仕掛けることで国際競争において存在感を増しています。フォーチュン誌が発表する世界500強企業リストには中国国有企業が多くラインクインしています。

一方で、国有企業の生産性の低さや、過剰供給を引き起こす弊害も指摘されています。
中国経済が次の段階へ進むためには、生産性向上や過剰供給の整理などの供給側の改革は避けて通れないものになっています。
しかしながら、国有企業改革はなかなか進みません。
既得権勢力の抵抗、リストラによる社会不安の発生を抑えたいなどの理由が指摘されています。
このため、TPP参加を名目に国有企業を改革してしまうというアイデアもあるのかもしれません。しかし、外圧を理由にしての改革となると、指導部に対する対外弱腰姿勢批判も出かねませんので、TPP参加と国有企業改革はリンクさせないのではないかとも思われます(現体制がそのような弱腰批判を押さえつけることができるレベルにまで強化されれば別ですが)。

ということで、中国がTPP協定に参加する場合には、条件変更(適用停止の拡大を含む)交渉が有り得ると思われます。締約国の多くは途上国ですので、条件変更は彼らにとっても(短期的に見れば)ウェルカムだろうと思われます。

国有企業条項は小委員会で見直しなどが協議されるようですが、これまでのTPP委員会やこれに伴う小委員会では、テーマにはなっていないようです。

アメリカも中国も参加となれば、各方面への影響も大きなものになると思われます。交渉が進むのであれば、そのプロセスには注目かと思います。

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