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個人所得税とは? 中国の個人所得税の基礎について解説します。

      2019/12/16

このカテゴリーでは、中国の税金、労務、会計などに関する基礎知識を解説しています。

今回は「個人所得税の基礎」について解説します。
※企業所得税、増値税、社会保険などについては「中国基礎講座」をご覧下さい。テーマ別に解説しています。

個人所得税は、中国で所得を得る個人に対する税金です。
給与所得、財産所得、配当所得、原稿所得、事業所得など所得の種類によって規定があります。

本稿では、
・中国子会社に派遣された駐在員や出張者などサラリーマン社員の給与所得課税
について解説します。

なお、本解説は2019年1月1日からスタートした税制改正を反映した内容です。

1.個人所得税とは?

日本の所得税に相当する税金です。
中国でも日本と同じように、毎月の給料から源泉税として差し引かれます。
このため、課税の原則は日本と中国で大きな違いはありませんが、日本人の働き方が多様なため、扱いが複雑になります。
例えば、赴任で来られる方もいれば、出張で来られる方などの違いがあると思いますが、この働き方の違いで個人所得税の計算が変わってきます。

2.どのように計算するか?

以下、給与所得の原則的な計算方法を解説します。
日本とさほど変わりません。
毎月の給与支給時に源泉して終了です。まれに確定申告が必要になることがあります。
なお、年末調整という手続きはありません。

まず、毎月の源泉ですが、以下の計算式で計算します。

・課税所得×税率-速算控除額
※課税所得=(給与支給額-基礎控除額(月5,000元)-社会保険料及び住宅積立金個人負担分-専用控除)

税率と速算控除額は下表のとおりです。税率は所得が増えるほど高くなります。

なお、税率表を見ていただいてわかる通り、年収ベースで表現されています。
毎月の給与を累積しながら税率表を当てはめる感じになります。
こんな感じです。

例:社会保険控除後の月額給与15,000元、子女教育控除月1,000元

このため、年末になると、給与累計額が上がっていきますので、結果、税率の段階を一段上がると、税額が増えるということになります。
ただ、上記のような計算ではなく、上記税金計算表を12か月で割った「非居住者」用のテーブルで毎月の源泉徴収をしている地域も多くあります。この場合は、毎月の税額は所得などの条件が変わらなければ一定になります。

社会保険料個人負担控除は日本にもある同様の控除ですね。
中国にも日本の健康保険や厚生年金に相当にする社会保険制度があり、負担も日本と同じように会社負担と個人負担があります。
このうちの個人負担分を税金計算時に控除できます。
なお、社会保険の種類や料率は、社会保険の基礎で解説していますのでご確認ください。

専用控除ですが、これは2019年1月1日から導入されました。子女の教育支出などが控除できるようになりました。後ほど解説します。

確定申告は、サラリーマンであれば、2か所から給与をもらっていて且つ年間課税所得が6万元を超えているなどの場合行います。
税金の還付や月々の納税不足がある場合も確定申告します。

3.専用控除

全部で6つの専用控除があります。
2019年1月1日からこれら控除が導入されました。減税です。

大病医療控除は確定申告で控除します。残り5つは毎月の給与計算に反映されます。
それぞれ細かな条件があります。それぞれ別ページで解説していますので、クリックして確認してください。

子女教育支出控除
継続教育支出控除
大病医療支出控除
住宅ローン利息控除
住宅家賃控除
老人扶養支出控除

なお、旧制度の優遇税制等に関して経過措置があります。これらも重要ですので下記の関連記事もご確認ください。

■新法で導入された専用控除の概略を解説しています。
個人所得税法専用附加控除操作弁法(試行)が発表されています

■中国では、賞与のうち、1回分の賞与は税金計算が優遇されています。1月に賞与を支払った場合、原則では、1月の月例給与と1月の賞与を合計して、税金計算表に当てはめて税金を計算します。これでは、合計額が多額になるため、税率が上がり、税金が多くなってしまいます。優遇では、合計ぜずにそれぞれの額で税金計算表に当てはめて計算することができます。よって、当てはめる税率が低くなり、結果、税金が少なくなります。
なお、日本のように年2回支給の場合、1回分は優遇が使え、2日目の支給は優遇が使えません。
下記ではこの優遇措置が新法でどうなるかを解説しています。
新個人所得税法により賞与に対する優遇税制はどうなるか?

■中国ではリストラなどで従業員を解雇する場合、生活保障のため、経済補償金と呼ばれる金銭を支給します。経済補償金であっても所得のため、原則的には、個人所得税の課税対象になりますが、生活保障の意味合いがあるため優遇があります(優遇内容はこちら)。下記では、この優遇が新法でどうなるかを解説しています。
新個人所得税法で経済補償金の優遇税制はどうなるか?

■外国籍社員は、中国で仕事をするために引っ越しや語学研修など様々な支出があります。これら支出に対して実費精算方式で手当を受ける場合、その手当を免税にすることができます。これら手当とは、住宅手当、食事手当、クリーニング手当、引越手当、出張手当、帰国手当、語学手当、子女教育手当です。これら免税手当の中の住宅手当、語学手当、子女教育手当は、上記で解説してきた6つの専用控除と重複します。外国籍社員も6つの専用控除を利用できますが、重複するため、これについて経過措置があります。下記ではこれを解説しています。
新個人所得税の専用控除は外国籍社員は享受できるか?

4.出張者への課税はどうなる?

中国で個人所得税を計算する際には、大切なキーワードがあります。
それは、
・居住者か非居住者か
というキーワードです。この「身分」の違いにより税金計算が変わります。

ざっくりいえば、駐在員は「居住者」、出張者は「非居住者」となります。

中国の定義は以下のようになっています。
①居住者とは
・中国国内に住所を有している、或いは住所を有していないが一納税年度内において中国国内の累計居住日数が満183日の個人を指す。
②非居住者とは
・中国国内に住所が有していない又は居住していない、或いは住所を有しておらず一納税年度内において中国国内の累計居住日数が183日に満たない個人を指す。

これを受けて、それぞれの「身分」別で課税される所得は以下のようになっています。
①居住者の課税範囲
・中国国内外で取得した所得に対して課税される(=全世界所得課税)。
②非居住者の課税範囲
・中国国内で取得した所得に対して課税される。

中国子会社に赴任する駐在員のほとんどは「居住者」になります。よって、全世界所得課税になります。
このため、例えば、この赴任者が日本国内で不動産所得があれば、その所得も中国で課税対象になる、ということになります。ちなみに、日本でもこの不動産所得に対して課税となります。二重課税となりますので、中国で確定申告して税金の還付を申請します。

また、出張者のほとんどは住所を有していないため「非居住者」となります。
よって、中国国内の所得だけに課税があります。
ただ、この国内所得の一部が免税となる特例があります。それは以下です。

・中国国内に住所がない個人で、一納税年度内の中国国内の累計居住日数が90日を超えない場合、中国国内所得で且つ中国国外の雇い主が支払った部分で中国国内の機構等が負担しない部分は免税とする。

いずれも、「中国国内に住所がない個人」が対象です。
出張者は住所がないので上記の条件を満たせば、中国で働くことによって得た所得のうち、国外で支払われた部分はこの規定により免税とすることができます。

■183日ルールについて
上記②の免税規定に「90日」という日数があります。
一方で、183日ルールというのを耳にされた方もあると思います。
183日ルールは、183日内の滞在であれば、日本と中国との間で締結された「租税条約」により免税にするというものです。
183日ルール免税適用の要件は以下の3つです。すべて満たす必要があります。
①183日以内の滞在であること
②その滞在者の給与を中国子会社が負担するものでないこと
③その滞在者が関連する業務がPEでないこと
これを満たせば、免税となります。
ただ、注意点があります。
日本では、条約を尊重しなければならないと憲法に明記されているため、租税条約が国内法をよりも有利であれば条約を尊重し、税率が低くなったり、免税になったりしますが、中国では、国内法と租税条約の扱いが実務上あいまいです。
よってまれにですが、租税条約のとおりであっても課税されることがありますので、ご注意ください。

5.結び

本ブログの読者である「日本親会社から派遣されるサラリーマン」「出張するサラリーン」を想定して、また、その主要な所得である給与所得に絞って解説しました。
働き方によって課税関係が変わってきますので、居住者か非居住者かの区分がポイントです。

なお、中国では法律が頻繁に改正されますので、そのキャッチアップも大切です。
本ブログでは、それら改正を素早くご紹介しています。
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メルマガ登録していただき、改正にしっかりと対応していただければと思います。

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