企業見学会概要
本多電子株式会社
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所在地:〒444-3193 愛知県豊橋市大岩町小山塚20番地 |
魚群探知機の専業メーカーとして創業
現在の社長である本多洋介氏が社長に就任したのは1986年、同氏が30歳のときであった。(社長の)運転手から社長になったと冗談交じりで話される同氏だが、先代からの厳しい指導(電話で指摘されることが多かった)に、反発と怒りから受話器を壊したこともあったとか。しかし先代が亡くなって13年経った今は、感謝の気持ちのみという。
本多電子は創業者が開発した世界初のトランジスタ式魚群探知機を原点とする魚群探知機の専業メーカーである。この小型化された魚群探知機は、それまで大きな機械が積めなかった小さな船舶にも積めると好評を博し普及していくことになる。「常に他社にないものを」という創業精神から、1970年代には、米国向けプレジャーボート用の魚群探知機を開発し、ピーク時には6万台を売り上げた。アイスフィッシング用の魚探も2万台を売り、米国ではOEM生産も含めると、この分野で9割のシェアを誇る。
![]() 本多社長の講話 |
![]() 液晶化された魚群探知機 |
ブラックマンデーを機に市場創造型企業へ転換
87年10月の大不況で、同社は大幅な売上減少と在庫の値崩れを経験する。この時同社がとった施策は4つ。
①北米販売会社の撤退→現地企業とのパートナーシップ強化、
②ヨーロッパ駐在事務所の閉鎖→海外代理店網の整備、
③人員配置の見直し→医療診断機器や洗浄機に人材投入、
④生産設備投資の縮小→アウトソーシングの活用。
コア技術に特化する形で事業の再構築を行い、超音波をベースに多角化戦略を進めた。
そしてあくまで自立にこだわった。世の中にない新しい価値を持った製品を生み出すという市場創造型企業への挑戦が始まったのである。
産学連携で超音波の要素技術銀行に
超音波の応用には、超音波分析や水中計測、空中計測といった情報的応用と、超音波微粒化、超音波洗浄、超音波加工といった動力的応用がある。同社では、これらの応用技術のために、産学交流(シーズ)や異業種交流(ニーズ)を最大限に活用している。現在、20校、30社との共同研究が進められている。「小さな体であってもそれに見合った武器がある。」例えれば、一寸法師の「針」である。同社にとっての「針」は「超音波」であり、自らを「針テク企業」と呼び、超音波の要素技術を磨き上げることに日々余念がない。
オープンテクノロジー
先端情報を発信してこそ、重要で有益な情報が得られる。マネされるリスクよりも情報が入ってこないリスクのほうが大きいと言い切る。先に紹介した産学連携や共同研究もこの考え方がベースにあるわけだが、それだけに留まらない。本社の1階に開設した「超音波科学館」や500件の要素技術を解説した『超音波ハンドブック』など情報発信の場づくりにも力を入れる。
![]() 資料を見学する参加者 |
![]() 説明に聞き入る参加者 |
「共生」の思想で幸福創造型企業へ
「生物界には、「共生」と「競争」がある。補完関係でも競争関係でも「共生」によってお互いが進化する。共生とは、異質な能力を持った者(人・企業)同士が協力し合う事でお互いがHAPPYな関係になれることを言う。」と本多社長は語る。この「共生の思想」をベースに、人々の幸福と超音波の新たな可能性を切り拓こうとする同社の取り組みを垣間見ることのできた視察であった。
![]() 坂本光司教授ご挨拶 |
株式会社樹研工業
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所在地: |
世界に誇るパウダーギア
「我々は射出成形屋です。」とご対応いただいた佐藤課長は明確に言い切った。「金属をプラスチックに、安く・早く・大量に、が基本ですが、ウチは小物・精密部品に特化しています。」この言葉の裏づけとなる製品が、2002年国際プラスチックフェア(IPF)で話題となった「パウダーギア」である。『100万分の1グラムの歯車』という本のタイトルにもなった歯車であるが、実物を見ると確かに粉のようにしか見えない。しかし拡大して見ると、ちゃんと5枚羽根の歯車になっている。発表から10年近くが経とうとしているが、小さすぎて未だに使いみちがないほどだ。
![]() 中野氏の講話 |
![]() パウダーギア |
リーマンショックの影響は大、しかし・・・
2008年9月のリーマンショックは、国内の製造業に大ダメージを与えた。樹研工業も例外ではなく、売上は8割ダウンしたという。しかし潤沢な資金(内部留保)を持つ同社は、「2年間仕事がなくても、全社員に給料を払える」と豪語する。もちろん、受注減を指をくわえて見ているわけではない。「ナノ切削」を駆使した光学製品の超精密仕上加工、超微細加工の新分野を切り拓きつつある。
最適化された無人工場
同社の強みは、超精密部品を製品に持つだけではない。それを生み出す超精密金型、そして射出成形機まで内製している点だ。強みはハード面に留まらない。「Juken System」という生産管理、技術管理、品質管理のための管理技術、つまりソフト面も当社の強みである。特に品質は、量産化以前の上流工程(トライルーム、精密測定室)で徹底的につくり込まれる。逆に量産化以降は、一日3ロットのサンプリング検査で変化点を見るのみ。品質保証の担当者はひとりしかいないというから驚かされる。
「匠」(成形技術の向上)と「サイエンス」(最適化技術)の融合をナノの世界で行うという言葉に違わず、同社を見ると、何が成形工場に必要なのかというテーマを全て研究し尽くした感がある。それを証明しているのが、ほとんど無人で動き続ける工場だ。「自動化、単品だから国内でもやれる」という佐藤課長の言葉も納得できるというものだ。
![]() 工場内見学風景 |
![]() 工場内見学風景2 |
![]() 製品がつくられる様子 |
「匠」を育てる風土
これだけすごい工場を作り上げ運営している社員は、みんな理系の有名大学の卒業生ばかりかと思いきや、学生時代は問題児だったという社員が多く、ほとんどが工業高校か普通高校卒。採用は無試験で先着順というから興味深い。「教育システムなんてありません。放置されます。でも一番になってやろうと決意すると社長がチャンスをくれるのです。」こう応えてくれた佐藤課長は、ヨーロッパに武者修行に行ったという。
専門的に勉強して来たわけでもない人間を、いっぱしの「匠」に育て上げる樹研工業の人財育成術の要諦は、やる気のある人間にチャンスを与えるということであろうか。
高品質、新技術、最後に低価格
同社の方針は非常にクリアである。長引く不況下、低価格の製品投入で急場をしのごうとする企業が多い中、それとは明確に一線を画する。中小企業が価格で勝負してはならないことをよく理解されている。お客様からの信頼の源である品質を重視し、世界初の新技術にチャレンジする。ここに製造業の王道を見た思いがした。
「戦略」と「思想」は表裏一体
「いい会社」を訪問して思うことは、「戦略(経営方針)」が明確で分かりやすいことと「思想(経営の考え方)」に一本筋が通っていること。そしてそのふたつが表裏一体、つまり矛盾しないことだ。
本多電子の戦略は、「一寸法師」という分かりやすいメタファーで語られている。「超音波」というコアに集中するためにそれ以外の部分ではアライアンスを積極的に展開する。オープンテクノロジーという方針で語られるが、その裏には「共生」という思想がある。
樹研工業が重視するのは、「高品質・新技術」。それを「匠」と「サイエンス」の融合をナノの世界で、と表現する。そして「匠」を育てるための投資を惜しまない。以前松浦社長は、「金メダルのチャンスを提供する」と言っておられた。
「戦略」と「思想」が表裏一体で矛盾がないからこそ、社員も安心して働ける。全力を尽くせる。これに反して、一貫性のない会社では必ず現場の混乱を見る。
また、「いい会社」は社員の表情が明るい。非常にアットホームな感じがする。その点でも、今回訪問した2社は間違いなく「いい会社」である。機会があれば、何度でも訪問したい。そう思わせる企業であった。
(文責 調査研究事業室 2010年7月6日)










