企業視察会概要
未来工業株式会社
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本社所在地: |
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創業の精神を継承
今回最初の訪問先は、岐阜羽島から車で20分ほどのところにある未来工業株式会社。話をしてくださったのは、総務部の阪本さん、入社25年のベテランである。未来工業では、挨拶はいつでも「お早うございます」。これは創業メンバーが芝居をやっていたことに由来する。挨拶ひとつにも創業のこだわりを残す同社であるが、何といっても未来工業らしさと言えば、「他社と同じものはつくらない」という差別化の精神。
例えば、メインの商品であるスライドボックスは、スライド、釘、ビス付、アルミ箔の添付と実に様々な工夫・改善が施されている。しかし発売当初から売れたわけではない。いろいろと試行錯誤した結果たどり着いた結論は、「半歩先の商品が顧客に受け入れられる」ということであった。
「後発メーカーだから、工夫と品揃えに配慮した。どんな商品でも揃えば、当社に問い合わせてもらうだけですむ。電話代も安くつく。」と努力の積み重ねで顧客を振り向かせてきた。「改善の余地がないと思ったら、とにかく穴を空けろ。穴ひとつでも前向きに考えろ。」というのが同社の信条だ。その結果、商品点数は20,000点を超え、毎年500~600の新商品が登場するというから驚きである。もちろんその全てが利益を生み出すわけではない。が、顧客はここに来れば、欲しいものが揃う事をよく知っている。「採算を無視して採算を取る 。」戦略が奏功している。
![]() 阪本氏の講話 |
タイムカードは理不尽?
同社では、以前工場を移転した。それに伴って、ほとんどの社員の通勤時間が30分程度余分にかかるようになった。そこで8時始業を8時半に、帰りも同様に17時を16時45分に、そして昼の休憩を45分にしようということになった。すると昼休みが1時間ないとQCができないと社員から不満の声が上がった。ならば休憩は1時間に戻そうと結局、実働7時間15分に落ち着いた。
タイムカードは同じ時間に出社しても、レコーダーの前に並んだ順番で時間が違ってしまう。これは理不尽だ、ということで廃止した。「お客様よりも社員を大切にしよう、信頼しよう。それが信念だ。」と言い切る。交通費の精算も定価で行なう。安売りチケットを買って使おうが、定価精算だ。「社員が喜ぶことを選択する。」というのが同社のポリシーなのだ。
社員旅行にも社員の提案を活かす
未来工業の特長のひとつが提案制度だ。1件提案するとその内容を問わず500円を渡す。とにかく提案することに前向きになってもらいたいからだ。中味を検討して、良い提案であれば更に報奨金を支払う。オーストラリアへの40周年旅行の時には、「40の指令書」というアイデアが社員から提案された。40種類の指令書をくじで選び、旅行中にそれを実行するというものだ。なかには、「バンジージャンプをせよ」といった過激な指令もあったという。35周年のときは、「ミステリーツアー」が提案された。目的地はフライト直前まで明かされない。-5度~30度まで対応できる服装の準備をせよという情報のみで空港に集合したという。
もちろん、普段は仕事に直接関係する提案が提出される。多い社員は年間200件以上の提案を出すという。職場のあちらこちらに改善提案の成果を示すステッカーが貼られていることに気づく。
![]() 提案箱 |
![]() 「常に考える」 |
![]() 数々の特許・実用新案・意匠取得 |
文化活動は企業のライフワーク
「未来コミュニティシアター」と題して、演劇やバレエ、コンサートなどを定期的に開催している。ボリショイバレエや北京京劇院など招聘する顔ぶれも多彩だ。これは地域社会に対する感謝の現れであり、演劇をルーツに持つ同社のDNAでもある。人に人生があるように、企業にも生き方や個性があってもいい。これも同社の同社らしさのひとつである。
社員のやる気を引き出す
未来工業には、派遣社員・パート社員はいない。全員が正社員だ。やっていることが同じなのに、待遇に差があっては気持ちよく働けないからだ。また、人の能力に大差はない。やる気だけの問題だと給料は年功序列。賞与も評価はするが、支給額に大きな差はつけない。(2.8ヶ月が平均とすると、2.75~2.85)残業なしで生活できる水準が給料のあるべき姿と、41歳で年収600万程度を保証する。
さぞかし社員教育に力を注いでいるだろうと思いきや、強制教育は一切しない。その代わり、社員の自己啓発には惜しみなく援助をする。そして驚くべきことに、効率を計る指標はないという。営業職にノルマはなく、研究開発職にも納期の指定はない。それでも好業績をキープし続ける秘密は、社員を大切にし、信じ切って、やる気を引き出す同社の施策にある。「そんなきれい事が通用するか!」と言われる向きには、ぜひ一度訪問していただきたい会社である。
![]() 製品説明に聞き入る坂本教授と参加者 |
西島株式会社
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本社所在地: |
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原点は発動機、現在は専用工作機、農業機械、人工関節まで
午後からお邪魔した先は、豊橋の西島株式会社。創業が大正13年という老舗メーカーである。創業の原点は発動機、現在は、全てオーダーメイドの自社一貫生産体制で専用機をつくる。ブランド名「NISHIjIMAX」は、「NISHIJIMA」と「MAXIMUM」の造語。多能工(少数精鋭)の育成を目指す優良企業である。お話しいただいた西島篤師社長は、三代目。そのユニークな経営施策を以下にご紹介したい。
![]() NISHI j IMAX |
![]() 工場内見学 |
社長就任後の初仕事
現社長は先代の死去に伴い、平成7年に社長に就任している。当時はバブル崩壊後の不景気が続き、ひと月先の仕事の確保にも困るような状況であったという。そんな中、最初の仕事は現場まわり。困ったときには現場を回れということで、世の中の変化を知るために国内外の全ての顧客を回った。営業現場をつぶさに見る中で、ひとつの分野に偏ってはいけない、すなわち「脱自動車」ということを決意したという。
同時に実施したのが、勤続30年表彰制度。会社の屋台骨を支えてくれたベテラン社員たちに報いようと導入を決めた。表彰の対象となった社員には、リフレッシュ休暇が1週間と20万円のお小遣いが手渡される。支給の条件は、奥さんを旅行に連れて行き、いっしょに写真撮影をしてくること。元気に働けるのも内助の功があってのことだからだ。
![]() 西島社長の講話 |
広がる事業領域
景気が悪い中でも、自社の技術を活かす先は無限にある。偶然、日曜の早朝6時からの座禅会で知り合った農家の人から、菊づくりの苦労を聞かされる。それが「花ロボ」開発のきっかけとなった。菊は収穫後、その下葉を取り、重量を測定し選別、10本程度を結束して出荷するのであるが、従来はこれを人海戦術で行っていた。これを何とか機械化できないかというわけだ。
営業も開発も社員はみんな無理だと反対したが、社長の鶴の一声で着手。試行錯誤の末、半年で開発することができた。その後、ヤンマー農機からは、ししとうで同様の機械ができないかという依頼があり、高知JAに納入した。
また、菊農家150軒、35万本/日の出荷場の機械化をパナソニックと共同で手がけたこともある。これは20億円のビッグプロジェクトであった。トマトとメロンの選別をひとつのラインで可能にする機械の開発も行なった。これは占有場所が1/4、省エネ効果は1/100というスグレもので、赤羽根JAに納入した。こうした努力の結果、先代の時代は自動車100%であった比率を、現在は60%にまで下げることができた。
また、西島メディカルでは、産学連携を駆使して、人工関節の開発を行っている。こちらも決して順風満帆ではない。過去2回、倒産の危機があったという。開発の困難さと厚労省の認可の関係からだ。しかし10月21日、同社製品による国内初の人工膝関節手術が行なわれた。同社技術により生み出された、日本人のための製品が、今後国内に広く普及して行くことであろう。
職人の技能を尊重し伝承する
「機械は図面どおりにはできない。現場の智恵・ノウハウによる調整が必ず必要になる。」そのため熟練した社員を大切にする。現場では、70歳を超えるマイスター達が、今も大活躍している。その中のおひとりである兵藤氏からは自己(健康)管理の重要性と、ものづくりに寄せる情熱と覚悟を語っていただいた。また戸沢氏には、金属の棒材を切断する実演を見せていただいた。こちらは材料にほとんど熱を伝えない優れた技術で、切断したばかりの材料を素手で持つことができるほどだ。
西島社長のお話からは、社員に対する信頼と愛情を強く感じる。そのひとつが2年前に導入した「勤続50年表彰」だ。結婚50年を祝う金婚式があるなら、会社との金婚式に当たる表彰制度があってもいいという考えから始められた。表彰される社員には、純金のメダルと真珠のアクセサリーが贈られる。そして「50年クラブ」に入会する。
同社では、一度も定年制を引いたことはない。退職は社員が自ら決める自己申告制。8時から17時まで8時間働けることが条件で、それがしんどくなったらリタイアするというものだ。普通の会社であれば、定年まであと何年というカウントダウン人生であるが、同社では元気なうちはいくらでも働けるカウントアップ人生である。
となると、人事が停滞するのではないかと心配される向きもあろうかと思うが、同社では、若手を管理職に登用している。課長は20~30代、部長は40代。失敗してもいい、苦労は買ってでもせよというのがポリシーだ。管理者の役割は、(1)計画を作って実行させる (2)部下のできない困難な仕事をやる というもの。また、役職を降りて「○○さん」になったら、「技術に限界はない。より困難な仕事を極めよ」とマイスターへの道が開かれている。「一生元気、一生現役」が同社の人材観なのである。
腐っても鯛、品質に妥協するな
同社の原点は発動機。昭和7年に日本一の栄誉に輝いた機械が今も玄関入口に飾られている。当時、発動機メーカーは200社以上あり、468種類の発動機があったという。同社では、下請けでなく自社ブランドにこだわる。そのためにも、現場の力が必要という。何事も成功する(お客様に満足していただく)までやり続けるのが、同社の社風。古参社員はその「社風の体現者」でもある。
「会社には変えてはいけないものと、それを守るために変えなければいけないものがある。」と西島社長は語る。長寿企業には、(1)本業力 (2)適応力 (3)許容力(養子制度 最適な人を残す)の普遍的な力があるという。「現在は、不況ではない、変化のときである。変わらねばならない。勤勉で向学心旺盛な日本人が活躍するときだ。」と熱く語ってくれた。
社員に優しい企業
今回訪問した2社に共通するポイントは、「社員を大切にする」ということであろう。しかしそれは「甘やかす」ということではない。未来工業は、「常に考える」という経営理念の下、社員の創意工夫・提案が活発である。一方、西島は「一流の製品は、一流の人格から」という経営理念の下、常に困難や限界にチャレンジする社風が形成されている。そこに存在するのは、強制されて働く社員ではなく、自ら考え能動的に働く社員であり、困難に積極的にチャレンジする社員である。その意味では、「人材」を「人財」たらしめる思想・ノウハウ満載の両社である。「人材育成」にお悩みの企業は是非一度、訪問されることをお勧めする。
(文責 静岡事務所長 鈴木茂和 2009年12月9日)










