企業見学会概要
株式会社木村鋳造所
設立1927年2月
代表者:代表取締役社長 木村 博彦氏
社員数:755 名(グループ社員総数)
資本金:8000万円
売上高:224億円(2007年)
本社所在地:静岡県駿東郡清水町長沢1157
事業内容:自動車用のプレス金型鋳物(国内NO1シェア)を中心に、工作機械、産業機械等鋳物製造。
フルモールド鋳造技術における世界トップクラスのメーカー
創業80余年の老舗製造業
銑鉄鋳造業は、1980年から2006年の約四半世紀の間、一貫した右肩下がりで、約63%の事業所が消滅している。1927年創業の同社は今年で81年目を迎えるが、この厳しい環境下にも関わらず堅調に推移、1980年より生産量の山・谷はあるが、一貫して業容を拡大し、「失われた10年」と言われた時期も順調な業績を重ね、現在は年産10万tに近づきつつある。
社団法人日本鋳造工学会の会長も務める現社長の木村博彦氏は3代目で、2001年の役員会で、10年後に引退し、事業をご子息に引き継ぐことを明言されたユニークな経営者である。「元気なモノづくり中小企業300社」、「第53回大河内記念生産賞」、「第2回ものづくり日本大賞経済産業大臣賞」等、数々の受賞歴を誇る。
経営理念にも示される技術革新
「フルモールド鋳造技術を革新し、顧客に喜ばれる製品を提供する。」という経営理念は2002年1月に発表されたものだ。「自分達のやりたいことを掲げよう」との思いが、この理念になったと言う。逆に言えば、この理念からはずれることはやらないという「選択の基準」になったと木村社長は語る。
この理念の肝は「革新」という部分だ。英語で示された経営理念(“Creating the FMC technology of tomorrow to please the customers of today”)を読むとその意図がより一層理解できる。「個性化、差別化が生き残りのキーワードだ」と木村社長は補足する。
![]() 木村社長講演 |
![]() 木村社長による講演風景 |
フルモールド鋳造技術とIT技術
フルモールド鋳造法とは、簡単に言えば、従来の鋳造で木型を用いていたのに対し、発泡スチロール模型を用いる方法でバリが出ない。「フルモールドはITと相性が良かった」と社長が語るとおり、同社では、CAD・CAMの導入とそのカスタマイズ、NCマシンの24時間自動稼動により生産性を飛躍的に高めた。
具体的には、顧客から送られてくる二次元図面をCADを利用して三次元データに変換し、その後の全工程で活用する技術だ。IT技術をフル活用し、技術情報をデータベース化することで、ベテラン職人の持つ技術を凌駕してしまったと言うから驚きである。
その結果、フルモールドは量産には向かないと言われるなか、現在では、2,000~3,000個の量産品の生産が可能となった。ちなみに、同社では、鋳物工場が、8,000t/月の生産量(1万アイテム/月)、模型工場が7,000t/月の生産を誇る。
![]() スライドによる説明 |
![]() 参加者の方々 |
木村鋳造所の強み
同社の強みは、先に挙げたフルモールド鋳造技術とIT技術の融合だけではない。一時の大量受注に対応すべく、3ヶ月先までの生産計画を顧客にも提示している点も特徴的である。顧客は、生産計画の空き状況を見て発注をコントロールできる。この生産計画システムは、テレビ静岡に依頼して、テレビ番組編成用のソフトを改良して作ったという点もふるっている。急な工程変更や割り込みにも瞬時に対応可能と言う。
顧客から送られてきた図面の整合性までチェックしてフィードバックできる技術は、坂本教授がよく言われる「貸与図」メーカーから「承認図」メーカーへという質的転換にも大きく寄与していると思われる。その結果と言えるかどうか、非常に多数の顧客を抱える。売上割合の大きな顧客でもせいぜい5~6%であることも、リスク分散という点から評価できる。
クリーンで安全、人財育成まで見える化した工場
工場内はとにかく整理・整頓が行き届いておりきれいである。迎えてくれる社員の挨拶も実に清清しい。ISO9001や14001は当然のこと、ロイド規格や安全衛生関係のOSHMSも認証取得している。クリーンで安全は、工場の隅々まで行き届いている。
工場内を進んでいくと、部署ごとにそこで働く社員のスキルがレーダーチャートに示されているのに気づく。レーダーチャートの赤色の部分が現在のスキルを表し、その外側に塗られた青色の部分が今期獲得すべきスキルを表している。(但し、スキル度評価は査定には結び付けていないとのこと)
見える化は、社員のスキルだけではない。不具合や品質不良の原因究明や顧客からのクレームに対する対応などあらゆる事柄が壁に貼り出されている。また、係長・主任クラスまでが経営計画からブレイクダウンされた行動計画を立てることになっているのだが、その計画までもが貼り出されている。これでお互いに進捗状況を確認し合える。
人財育成に関わる話はこれだけではない。社員に博士号を取得することを奨励し、鋳造工学会でのプレゼン実施や国内外での論文発表、技術講演に参加させる。博士号を取得できるくらいの優秀な社員でなければ、これからの新技術・新製品開発はできないということだ。
![]() レーダーチャート(イメージ図) |
日本で「ものづくり」を続ける覚悟
「上場しない」、「海外へは出て行かない」と最後に2つの方針について、木村社長は話してくれた。日本で製造業を続ける限り、日本人を雇用しなければならない。クリーンで安全な工場でなければ、もはや日本の若者は働いてはくれない。その言葉には、この国で製造業を続けていこうとする経営者の強い覚悟を感じた。
工場見学の最後に、国立科学博物館に展示してある「地球儀(知恵フクロウ)」の発泡模型を見ることができた。同社が80余年の歳月をかけて築き上げてきた技術とノウハウの集大成であるかのようだ。フルモールド鋳造技術にかける同社の取り組みは、「ものづくり」から永続するメーカーの「ものがたり」へと昇華しつつあると感じた。
(文責 静岡事務所長 鈴木茂和 2008年11月11日)





