はじめに
アタックスグループ静岡事務所開所記念として、中国・義烏の視察を行ないました。三泊四日の旅でしたが、幸い天候にも恵まれ、また約50名というかなりの大所帯にも関わらず、全員が怪我も病気もなく無事に帰国できたことは本当にありがたいことです。スケジュールの概略は「旅程概略」をご覧ください。
旅程概略
- 日程
2008年2月29日(金) (上海泊)
AM 成田、名古屋から上海へ
PM 上海で合流後、三菱電機を視察
2008年3月1日(土) (義烏泊)
AM 上海から新幹線で杭州へ
PM 杭州の日本食レストラン金田中で現地経営者によるミニセミナーの後、杭州鉄鋼集団の視察、
義烏にて書式贈呈式に参加
2008年3月2日(日) (杭州泊)
AM 小グループに分かれ福田市場視察
PM 夕刻、杭州へ移動
2008年3月3日(月)
AM 杭州友成機工を視察
PM 杭州から成田へ
巨大な卸売市場都市 義烏
まず義烏について、簡単にご説明します。(詳しくは『中国義烏ビジネス事情』をお読みください。)
義烏(イーウー)市は、中国・浙江省のほぼ中央に位置し、上海からは高速道路で約4時間半、新幹線で約2時間15分のところです。100円ショップで販売されているような小物雑貨の世界最大の生産・流通基地であり、市内にいくつかの市場が存在しますが、今回我々が見学したのは、その中で最大の規模である「福田市場」です。
3つの巨大なビルからなる福田市場は、市場面積140万平方メートル、端から端までが約2.5km、東京ドーム30個分だそうです。ここに約2万3千社が入居し、あらゆる小物雑貨を展示販売しています。訪れるバイヤーは平均20万人/日というから驚きです。
千載一遇のチャンス
今回の視察旅行で非常に幸運であったのは、現地での書籍贈呈式に参加できたことです。坂本光司先生(アタックスグループ顧問・法政大学大学院教授)・山田先生(法政大学大学院客員教授)編著の『中国義烏ビジネス事情』は、世界で初めて義烏のことを紹介した本ということで、現地の政府関係者の方々の“熱烈歓迎”を受けました。
地元のテレビ局も取材に訪れ、セレモニーが厳かに執り行われました。初めて訪れた中国で、このような機会に恵まれたのは幸運としか言いようがありません。その翌日、実際の市場を目にすることになるのですが・・・。
挨拶をする坂本先生、右端が山田先生 |
![]() 政府関係者に書籍を手渡した瞬間 |
大陸国家のスケール
まず驚いたのは、桁外れの広さ・桁違いの品揃えです。
例えば文具を扱うブースだけでも何十あるのか分からないほど。それもそのはず、軽工業品分野で商品と名のつくものは、世界で50万アイテムが流通しているそうですが、その8割強をこの義烏で調達できるとのことです。
更に驚くのはその安さ。もちろん卸売価格ですから安いのは当たり前ですが、それにしても安い。例えば、レーザーポインター付のボールペンが1本5元(1元15円とすると75円)、但し、最低ロットはサンプルで200本から。卸売市場ですから、当然バラ売りはしてくれません。
![]() 市場中央入口 |
![]() 市場内の様子 遥か彼方までブースが続く |
しかし、この品揃えと価格は要チェックです。2006年4月にカルフールが買い付け拠点をこの地に設けたのも頷けます。流通業の方は、商品調達の視点で、製造業の方は、生産能力・生産基地という視点で義烏を研究する必要があるでしょう。
商品の品質レベルに関して言えば、価格のことを勘案すれば許容できる範囲と言えるのではないでしょうか。もちろん、日本で製造業に従事している方がご覧になれば、仕上げや塗装はまだまだ(雑)とお感じになることでしょう。
![]() 市場内の様子 |
![]() グリップが赤・青のボールペンが5元 |
私見を申せば、実はもっと粗悪品だろうと思っていたところ、予想以上の出来栄えとセンスに、良い意味で期待を裏切られた感じがしました。「MADE IN CHINA 恐るべし」。もはやコモディティ化した商品を製造するメーカーが、日本国内では存在し得ないことは言うまでもありません。
それは次の商品を見ても明らかです。これはバッテリーで動く電動自転車です。性能は、100Vの家庭用電源で充電でき、1回の充電で約45km、40km/Hの速度で走行可能とのことです。値段は1,700元(25,500円)、1ロット20台から注文を受け付けてくれます。
![]() 電動自転車 |
![]() 公道で見かけるのもほとんど電動 |
施設そのものも予想以上にきれいです。但し、マナーはまだまだ発展途上。喫煙は所構わず(喫煙場所以外は禁煙のはずなのですが)、建物の中であるにも関わらず、歩きながら痰を吐く人間が多いのには閉口しました。昼食は、施設で働く地元の人達が利用する食堂で食べましたが、味は申し分ありませんでした。不衛生とは言いませんが、もう少しきれいであったら、もっとおいしく感じたことでしょう。
多極化する市場
実は、義烏を訪れる前日、上海にある三菱電機のエアコン工場(SAEC)を見学しました。総経理の友永氏のお話の中で印象的であったのが、中国は目覚しい発展を遂げている、視界にはいるクレーンの数(20機以上)でそれを実感できる、という部分でした。
ちなみにGDPを比較すると日本平均が$34,252、中国が$2,000、上海が$7,189で、上海は中国平均の3倍以上。この数字だけみると沿海部の都市が発展しており、内陸部との格差が広がりつつあるといった印象を受けますが、先ほどのクレーンの話は、実は重慶を指してのコメント。つまり中国の発展は、今や沿海部だけの話ではないということが伺えます。
この会社のターゲットは、富裕層であり、価格設定は以下の通りで、格力(現地メーカー)と較べると、かなり強気の価格設定であることが分かります。
| 格力 | A社 | B社 | C社 | SAEC | (A,B,Cは日本メーカー) |
|---|---|---|---|---|---|
| 60% | 66% | 68% | 86% | 100% | ←売値を比較表示 |
現在のシェアは、日系メーカーの中では19%、中国のエアコン市場全体の中では2%で、それでもビジネスが成立するということは、中国にはそれだけ富裕層が形成されているという事実を表しています。「世界の工場」(数年前はこう言われた)と「世界最大の消費市場」が同居しているのが、現在の中国と言えそうです。
しかもその消費市場は、下は800元/月(上海の最低賃金)のワーカーから、上は想像を絶する大金持ちまで、実に多極化しており、それぞれのマーケット(階層)でそれぞれのビジネス・チャンスがあるということなのでしょう。
工場の成功要因は万国共通
最終日に見学した杭州友成機工では、村越総経理、許副総経理、島林部長に対応していただきました。当社は92年に中国進出、当初は国営企業との合弁会社としてスタートし、96年独資に。
金型製作、プラスチック成型、塗装、蒸着、組立など、現在、中国国内5工場で1,364人の社員を抱え、ホールディングカンパニーは香港の株式市場に上場する立派な企業です。製品は、車のランプ(最先端とのこと)、エアバックカバー、バイザー、ミラー、洗濯機の蓋、給茶機等で、今回は、金型工場と組立工場を案内していただきました。
![]() 金型工場 |
![]() 組立工場 |
両工場とも5Sが行き届いており、大変きれいです。そして日本でもよく目にする生産管理板や社員のスキルマップ表など様々な「見える化」の工夫がなされています。これは三菱電機の工場も同様で、ものづくりの現場には、ジャパニーズ・スタンダードが活かされていることを実感しました。
また一方で、日本であれば、この工程は自動化を検討するはずだと思われる部分が、人手で対応している場面をいくつか目にしました。設備投資よりも人海戦術の方がコストパフォーマンスがよいということなのでしょうが、こうした選択ができるところが、中国製造業の強さなのでしょう。前提としての人件費の安さが続けば、の話ですが。
人使いの極意
村越総経理と許副総経理のお話しの中でなるほどと思った点を何点かご紹介します。
・管理とは、管+理である、即ち、理(規則)を作り、教育し、遵守(管)させることが管理である。
・お互いが尊敬し合うことが大切である。
・給料で評価する、基準を作って教育する。
・なぜなぜを繰り返し、納得させる。
・一緒にやりたい人、同じ考え方のできる人を集める・採用する(一生懸命に働いて給料を稼ぎたい人)。
・独立支援制度もあり、独立者とのネットワークも形成している。
・但し、独立するより会社でやったほうがいいという雰囲気をつくることが重要。
・会社が強ければ、社員は残る、そのためには経営トップのあり方が肝心。
お二人の話には、皆感じ入って、思わず拍手をしていました。特に、許副総経理の揺ぎない自信に満ちた話には感動すら覚えました。SAECもそうでしたが、日本人と中国人との間に信頼関係と一体感がしっかりと醸成されていることを感じた次第です。
旅の感想
中国本土への旅行は今回が初めての経験だったのですが、正に「百聞は一見にしかず」、今まで中国に対して抱いていたイメージが根底から崩れたような気がします。また一方、ぼんやりとしか掴んでいなかった事柄が、リアリティをもって脳裏に焼きついたという印象もあります。
リアルに感じたポジティブなものは、国土の広大さ、若さ、スピードです。義烏のような都市は、中国の広大さをもってはじめて誕生しうる街と言えるのではないでしょうか。
また工場を回って気づくことは、若者の多さです。日本の工場では、高齢者ばかりが目に付きます。中国の若者を、日本の熟練技術者達が鍛えているのです。不思議な感じがします。
そして豊かさを追求するスピード、杭州駅の雑踏に、人々の異常なまでの熱気を感じました。鄧小平の「豊かになれる者から豊かになればよい」の言葉どおり、明日に希望を見出した人々のパワーをそこかしこに垣間見ることができます。
では、「豊かになる」とはどういうことなのか?それは「ものの価値が分かるようになる」ということでしょう。三菱電機は正に「ものの価値が分かる」人を相手にビジネスを展開しようとしています。そしてその数は今後もどんどん増え続けるわけです。「日本品質水準を実証できれば、百均の商品でも倍の値段で売れる」とは、現地で活躍する山口社長の台詞です。(山口社長には、日本食レストラン金田中と車中でミニセミナーを行なっていただきました。)
リアルに感じたネガティブなものと言えば、格差(貧困)、虚栄、ホスピタリティ(サービス水準)の低さでしょうか。義烏は中国で最も高級外車の多い都市だそうです。ベンツやBMW、アウディがずらりと並ぶその隣で物乞いをしながら、或いはごみを漁りながら生きている人々を目にします。この国は、弱者には決して優しい国ではない、と感じました。
都市から都市へとつなぐ幹線道路、高速道路沿いには、4階建て・5階建ての立派な家が立ち並びます。立派なのですが、どの家も同じデザインで、よく見ると建物の中はがらんどうです。実際に使われているのは、一階の一部だけ。農家とのことですが、外見だけを競っているようで、これが面子を重んじる中国人気質なのかと思いました。
工業製品の品質は、価格に見合うものになりつつあるといった印象を受けましたが、サービス水準はまだまだ相当改善の余地ありと言えそうです。今回3都市で、3つのホテルに宿泊しましたが、残念ながらもう一度泊まりたいと思えるような(感動する)サービスには出会えませんでした。
極端なポジティブさと極端なネガティブさが同居しているのが、現在の中国かも知れません。繁栄と貧困、ポテンシャルと危うさ、そのどちらもが現実なのでしょう。「This is China.ここは自己責任の国」山口社長のこの言葉に妙に納得してしまう自分がいました。
乞うご期待
義烏の発展はこれで終わりではありません。実は、現在の福田市場の隣に、約170万平方メートルの新市場がこの秋オープンします。この建物には、アメリカやヨーロッパ、アフリカ、アセアン、日本など外国企業が誘致されます。今でも十分巨大な市場ですが、それが倍以上になるわけです。一体どんなことになるのか、想像もつきません。ぜひ、皆さん自身の目でお確かめください。
(文責 静岡事務所長 鈴木茂和 2008年3月)









