自社の収益構造を左右する「買う力」を見直す

経営

2013年~2015年の3年間、企業の倒産件数は減少を続けていますが、販売不振を中心とする不況型倒産の割合は増加しており、2015年度においては83.9%となっています。(出所:全国企業倒産集計 2015年報/(株)帝国データバンク)

販売不振とは、「売りたいものはあるけれど、買ってもらえない」ことで、一般的には「売る力」が弱いと定義されます。しかし、最近、「売る力」には全く問題ありませんが、材料や部品などを「買う力」に問題があるため、収益悪化となる企業が増えてきました。 事例を一つご紹介しましょう。

A社は、B製品を長年、主力商品として扱ってきました。そのキーパーツであるC部品は自社技術では対応できないため、特殊技術を持っているD社に外製をお願いし、長年取引してきました。 A社は、以前からこの1社取引を安定供給の観点から、問題があると認識していました。しかしながら、両社の先代社長が親友関係にあったこともあり、長期安定的に取引が継続できると考えていました。

ところが、D社は、同族ではない後継者に経営がバトンタッチされると、A社に供給していた特殊技術を他業界に転用することで成長を続けました。その結果、自信を持ったD社の後継者は、毎年値上げを要請してきました。 A社は、ライバル会社の価格設定との関係から、毎年、わずかながらもB製品を値下げせざるを得ない状況にあったため、利益確保のために、D社の申し出を3年ほど断り続けてきました。

値上げがなかなか認められないD社は、しびれをきらし、「2割の値上げを認めてもらえないなら、今後、取引はできない」と一方的に通達してきました。 A社は、長期売れ筋製品の販売を中止することはできず、この条件を受け入れることとしました。しかし、B製品の販売台数の減少に直結する可能性が高かったため、外注費の値上げ分をB製品の販売単価に転嫁することはできず、据え置きとした結果、外注費の値上げ分がそのまま多額の利益減少となったのです。

本来、商品を「売る力」は材料や部品などを「買う力」があることを前提としていますが、「買う力」に関しては、現状の取引で特段問題ない場合は、外注先の見直しの対象とならない場合が多いようです。

この事例では、「倍の値上げ」を求められたとしても、当面の間は、その条件で取引をせざるを得ない状態でした。 A社のような事態に陥らないよう、皆様の会社でも、定期的に「買う力」を見直していただき、安定的な収益維持を図っていただきたいと思います。

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筆者紹介

株式会社アタックス・ビジネス・コンサルティング 取締役 錦見 直樹
1987年 富山大学卒。月次決算制度を中心とした業績管理制度の構築や経理に関する業務改善指導を中心としたコンサルティング業務に従事。グループ7社を有す中小企業の経理・経営企画部門出向中に培った豊富な経理実務経験を武器に、経営者、経理責任者の参謀役として活躍中。
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