後継者不在深刻化~増加する親族外承継の課題と考え方

後継者不在深刻化 事業承継

親族内に後継者がいない、あるいは後継者候補はいるものの年齢が若すぎるといった場合に親族外の承継を考えることになります。

近年は、親族内の承継が減少し、役員や従業員、あるいは外部人財といった親族外に承継するケースが増加傾向にあります。

税制面、法律面でも、中小企業の事業永続を支援することを目的に、これまでも、自社株承継をスムーズに進める措置などが整備されてきましたが、親族外承継の増加に伴い、これに対応するための見直しが行われています。

直近では、経営承継円滑化法※の改正が行われ、この4月から施行されています。

親族外承継において贈与した自社株を、相続時の遺留分の算定から除外するなど、親族内に加えて、親族外承継における後継者を対象に自社株の集約をしやすくする狙いです。

※中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律等

制度面の整備が進み、使い勝手が良くなるのは、ありがたいことに違いありませんが、こうした制度の活用を考える前に、検討しなければならないことがあります。

もっとも大きなポイントは、オーナー権の取り扱いです。

親族内に後継者がいないケースで、すべてのオーナー権を譲るとなれば、それはすなわち事業売却を意味します。

また、オーナー家として残り、役員や従業員に経営を任せるケースもあるでしょう。

私はいま、親族内に後継者がおらず、従業員に承継することを決めた会社の事業承継、とくに自社株承継についてお手伝いしています。

この会社の場合は、勇退する時期を決め、残った親族が事業に口出しできないよう、オーナー権をすべて譲ることを決めています。

後継者を育成しつつ、事業永続につながるよう、自社株の承継を進めているところです。

役員や従業員に経営だけ任せる場合、オーナー家と経営陣がずっと良好な関係であり続けることが理想ですが、その良好な関係がいつまでも続く保証はありません。

従って、自社株の買取りや銀行保証など難しい課題はありますが、本当に、親族内に後継者がいないのであれば、オーナー権も譲る方向で考えた方が良いのではないでしょうか。

一方で、親族内に後継者候補はいるが、年齢が若すぎるなどの理由で、ワンポイント・リリーフをお願いする場合があります。

このケースでは、経営だけを任せる方法か、オーナー権は譲らないものの、自社株の一部を譲って、モチベーションを上げる、経営に責任を持たせる方法があります。

自社株を譲った場合、もし事業がうまくいかなかったら、社長を交替させる際に、自社株は買い戻さなければなりません。

そう考えると、株でなく、別の方法をとる方が望ましいように思います。

ちなみに、このワンポイント・リリーフをお願いするケースでは、
親族内承継と同じように、事業承継の計画を立てて進める必要があります。

ベストな後継者を選び、後継社長育成に力を入れ、承継後の経営のしくみを検討していかなければならないということです。

親族外に経営を承継することを検討しなければならないケースは、今後も増加すると予想されます。

オーナー権の問題、後継者選定の問題など、多くの課題がありますが、長期の事業永続を目指すうえでは避けては通れません。

何よりも早め早めの対応と専門家の適切な活用をお勧めします。

アタックスグループでは、事業承継にお悩みをお持ちの経営者の皆様のご相談を承っているほか、後継社長のための「アタックス社長塾」を開催しております。
お気軽にこちらからご相談ください。

自社株にまつわる恐怖からの脱出法

筆者紹介

アタックス税理士法人 代表社員COO 税理士 磯竹 克人
1987年 名古屋市立大学卒。税務・会計の業務を中心に数多くのクライアントに対する指導実績を持ち、親切で丁寧な指導が厚い信頼を得ている。現在は、事業再構築支援、事業承継支援、資本政策支援などを中心にクライアントの問題解決にあたっている。
磯竹克人の詳しいプロフィールはこちらをご覧ください。

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