アタックスグループ代表パートナー 公認会計士・税理士
数百社のクライアントについて「経営のドクター」として、経営・税務顧問、経営管理制度の構築・改善、経営戦略・経営計画策定、相続対策・事業承継、M&Aなどを中心としたコンサルティング業務に従事。幅広いネットワークと数多くの実績を生かし、経営者の参謀役、「社長の最良の相談相手」として活躍中。

上場会社2010年3月期の決算発表がほぼ出揃っているが、09年3月期に比べると業績が一段と回復している。09年3月期はリーマンショックで上場各社の業績が最悪であった。その後、上場各社が非常事態宣言を出し財務の改善に懸命に取り組んだことが業績回復につながった。
15日付の日経朝刊によると、13日までに10年3月期決算を発表した上場企業1172社(金融と新興市場は除く)を対象に集計したところ、最高益を更新したのは136社、11.6%であり、増益に転換したのは40%である。
ところで教科書的に言えば、業績回復のための基本は損益分岐点の切り下げである。業績不振、赤字脱出で悩んでいる経営者の皆さんは損益分岐点図表を頭の中に思い浮かべながら以下の記述をお読みいただきたい。
損益分岐点切り下げ、赤字脱出の第一の方法は固定費の削減である。今後の成長が期待できず、事業のキャパシティーが過剰の会社は結構多いと思う。こんな場合は、キャパシティーを見直し(主に設備と人員)固定費を下げる必要がある。
ただし、人員(人件費)の見直し・削減はデリケートな問題だけにやり方は順序を考え、社員の納得が必要であることは言うまでもない。その他の固定費については、売り上げの増加につながるコストか、社員のモチベーションアップにつながるコストかが判断のポイントになろう。
第二の方法は変動費率の引き下げである。製造業であれば使用材料の見直し、歩留まりの改善、流通業であれば仕入れコストの見直し、廃棄ロスの低減などが考えられる。
第三の方法は損益分岐点を上回る売り上げを回復させることである。常識的な解説になるが、新製品開発、新サービス開発、新市場開拓が必要になる。
15日付日経朝刊には、次のような事例が紹介されている。
1.成長市場を開拓した会社
ソフトバンク(アイフォーン)
ディー・エヌ・エイ(携帯電話向けゲーム)
塩野義製薬(高脂血症治療薬)
ワタミ(介護施設)
2.コスト改革を行った会社
エフピコ(品目の絞込みによる生産効率アップ)
タカラトミー(新商品の開発と人件費の安いベトナムへの生産移転)
ヤオコー(パートを含めた全員参加型の改善活動)
3.その他
エコポイント特需で売り上げを伸ばしたヤマダ電機
中国への素材輸出で売り上げを伸ばした日本合成化学
ところで、抜本的に損益分岐点を削減するためには、着眼大局に立った「無くす、減らす、代える」が大事である。P・ドラッカーは「コスト削減は常に行う必要がある。通常、コスト削減は、どのようにしてこの活動の効率を高めるかを考えることから始める。これは間違いである。
この活動をやめたら屋根は落ちるかを考えなければならない」ということを言っている。コスト削減、ローコスト経営で難局を乗り切らねばならない経営者はぜひこのドラッカーのアドバイスをかみ締めていただきたい。
最近のことであるが、09年3月期は大幅赤字であった顧問先の製造業の経営者で10年3月期に黒字に復活させた方がいる。「前期は売り上げは元の状態には戻らないという覚悟で猛烈にコスト削減、新規顧客開発に取り組んだところ、現場のがんばりでこの取り組みが功を奏し、以前にもまして高収益会社に変身した」と筆者に語ってくれた。
筆者も実際に工場を視察させていただいたが、案内してくれた役員、工場長も大変明るい顔つきであった。
<参考記事>
「逆境下、1割が最高益」2010年5月15日(土)日本経済新聞 朝刊
アタックスグループ代表パートナー 公認会計士・税理士
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