
経営者はまず、管理者を人財化することを考えなければなりません。言い換えれば、経営理念を浸透させる最初の対象者が管理者なのです。管理者が人財化しない限り、経営者は孤独な存在であり続けねばなりません。
自らの分身、片腕を早く育成する必要があります。そのために経営理念を直接語る機会を積極的に設けていただきたいと前回申し上げました。
もちろん、管理者も自らを人財化させる努力を怠ってはなりません。それでは、人財と呼べる管理者とは、どのような役割を担える人を言うのでしょうか。私は常々、「稼ぐ・育てる・創造する」が管理者の役割であると感じています。
「稼ぐ」とは、時代の新しい価値を見つけることです。ひと昔前は、お客さまが表明されたニーズ、つまり顕在化された不平や不満、不便といった事柄を解決して差し上げれば、商売になりました。
しかし今日では、お客さま自身もまだ気づいていない、潜在的な欲求を映像化し、目の前に見せてあげることができなければ、なかなかビジネスはうまくいきません。(「そうそうこんなものが欲しいと思っていたんだよ。」と言わせる。)そのためには、深い洞察力と先見性が要求されるのです。管理者は、まず「稼ぐ」ことのできる人でなければなりません。
「育てる」とは、言うまでもなく部下育成です。何も手取り足取り部下指導をしろと言っている訳ではありません。大切なことは、進むべき方向性を指し示し、部下が気持ちよく仕事ができる環境を整えてやることです。リーダーシップとは、そういうものだと思います。そして仕事をすることの喜び、即ち「快」を演出してやることです。
こんな話を聞いたことがあります。丸一日かけても、携帯メールの使い方をマスターできなかったお年寄り達に、担当者がひと声かけたら、30分でマスターしてしまったというのです。担当者はこう言ったのでした。「この使い方を覚えると、いつでも好きな時に、かわいいお孫さんとおはなしできるんですよ。」と。どんなにつらいと思われる仕事も、やりがいのあるワクワクドキドキする仕事に変換することができるポジティブさを、管理者は備えるべきだと思います。
「創造する」とは、新しいビジネスモデルや経営戦略を創り出すことです。創造する管理者は、芸術家であり戦略家であると言えます。つまり芸術家は人まねを良しとしません。オリジナリティに価値をおくものです。つまりオンリーワン(差別化)です。
また、「HOW」でなく「WHY」を考えるのが、戦略思考です。管理者には常にWHY思考が要求されるのです。WHYを考えなくなった時から、形骸化が始まることは以前申し上げた通りです。
「稼ぐ・育てる・創造する」ためには、「洞察力」、「先見性」、「リーダーシップ」、「ポジディブ思考」、「オリジナリティ」、「戦略思考」が要求されるのです。しかもそれぞれが「経営理念」というポリシーで有機的に結びついていなければならないのです。背景に「経営理念」がなければ、それぞれの力が間違った方向に発揮されないとも限りません。そうなってしまっては、元も子もありません。「経営理念」とは、それほど大切なものなのです。
<2003年12月5日~2004年7月9日 中部経済新聞社掲載>