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要となる管理者の育成 その1(「最強の組織」をつくる人事制度 第28回)

中小企業診断士 鈴木茂和
執筆・取材・講演等の依頼
~人がリスクとなる時代! 経営者の分身はこう育てる~

「人、物、金」の中で、何が一番重要であるかと問われれば、大多数の経営者は「人」と答えるでしょう。「人間だけが無限の可能性を秘めているからだ」という暗黙の了解があるからです。確かに一面の真理ではあります。


しかしこの「無限の可能性」は、場合によってプラスに作用することもあれば、マイナスに作用することもある、と覚悟しておかなければなりません。創業以来の大幅利益増を達成するのも社員であれば、会社の看板に泥を塗り顧客の信頼を失う愚を犯すのも社員なのです。「人財」であるか、「人罪」なのか、経営者がこの見極めを誤ると大変なことになります。


実はこの見極めの、最初の機会は採用時なのです。ところがこの大切な採用を、担当者任せにしている経営者が多いことに驚かされます。中堅・ベンチャー企業は、経営トップ自らが採用にコミットすることをお勧めします。理由は2つあります。


(1)社内の誰よりも我が社の経営について熱く語れ、感動を与えることができるのは社長である(2)採用担当者では、自分より優秀な人間を採用することができない(自らの保身のため優秀な人財を採りたくない、優秀な人財は採用担当者が低レベルであれば会社もそうであると判断し入社しない)、からです。


それでは採用面接時には、何に注意をすればよいのでしょうか。元ノードストローム副社長のベッツィ・サンダース氏は「両親がしっかりしつけをした良識のある、性格のよい人を採用しなさい」と言っています。つまり人間性に二重丸がつく人を採用しなさいと言っているのです。一流大学を卒業していても、人間性がバツの人は採用すべきではありません。


社員教育にお金をかける企業は立派ですが、そもそも投資に値する人財であるかどうかが問題でしょう。数十年掛けて形成された人格を、たった数日の研修で変えようと思うことに無理があるのです。


次に大切なことは、経営トップが熱く語った経営理念に、腹の底から共感し、賛同できる人財を採用することです。経営者と同じ価値観・哲学を持った人であれば、顧客価値の創造や顧客満足の実現に寄与してくれることが期待できます。もちろん相手の本心を見抜く能力は重要です。経営者は、共感のふりを看過しない目利きでなければなりません。そのためにも採用の場数を踏むことが必要なのです。


人のリスクを最小に抑えるためには、(1)人罪を採用しない、(2)採用した社員を人財化する、の2点が重要です。人財化のコツは、経営者との接触の機会を積極的に設けることです。事ある毎に経営者は、我が社の理念を語らねばなりません。


トップの言葉に直接触れることで、社員は突き動かされ、その実践者となります。管理者への登用は、この実践の大なる者からの選択となります。つまり経営理念の実践者こそが、社長の分身と言えるからです。


この接触の機会、経営理念を語る機会を惜しんでいては、社員の人財化は望むべくもありません。自分の片腕が欲しい、分身が欲しいと思われるのであれば、社長自らが我が社の経営理念を、経営に対する思いを、熱く語ることに時間を投資していただきたいと思います。投資に見合うリターンは必ず得られると確信します。


<2003年12月5日~2004年7月9日 中部経済新聞社掲載>