
過去3回にわたって、目標管理制度を形骸化させる要因についてみてきました。今回と次回は制度運用の核となる面接を取り上げて、形骸化に陥らないための念押しをしておきたいと思います。
目標管理には2種類の面接があります。上司と部下が期首に目標や取り組み課題について検討する目標設定面接と、期末にそれがどうであったかを反省するフィードバック面接です。2種類の面接は、別々に行っても構いませんが、通常は当期のフィードバック面接と次期の目標設定面接を同時に行うことが多いようです。
今回は目標設定面接を取り上げます。実はここにも制度を形骸化させる要因が隠れているのです。
それは上司の「お任せ病」です。「目標管理とは、部下が自発的に挑戦的な目標を設定して取り組むものであり、自分はチェックをするだけでよい」と勝手な思い込みをしているケースです。本当にそれだけでよいのであれば、管理職ほど楽な商売はありません。
目標を達成するために、プロセスを検討することが如何に大切であるかは、連載の前半でご説明いたしました。目標管理は、目標さえ決めてやれば、あとは自動的に成果が出る魔法の仕組みではありません。どうすれば目標が達成できるのか、あらゆる情報収集を行い、仮説をいくつも検討し、不退転の決意で実行しない限り、何も手に入らないのです。
バブルの頃は、ニコポン(ニコッと笑って肩をポンと叩いて後はよろしく!)上司でも担いでくれる部下がいたかもしれませんが、現在はそういうわけにはいきません。自ら実績を上げられない上司、プロでない上司には部下もついて来ないのです。
上司は部下に対して、目標達成への道程を示してやる必要があります。実行可能かつ実現可能なプランを提示する能力が要求されるわけです。従って目標設定面接は、上司と部下との真剣勝負の場であるのです。成果獲得のために有効なプロセスを提示できない上司は、部下からの信頼を勝ち取ることができません。部下はすぐに上司の力量を見抜いてしまいます。
だからと言って、1から10まで手取り足取り教えるわけではありません。それでは部下が育ちません。部下が適切な目標設定ができるように、また正しい行動が取れるように導いてやることが上司の役割なのです。「お任せ病」にかかった思考停止状態のニコポン上司は、まさに人罪であり、駆逐すべき存在なのです。
「お任せ病」だけでなく、「独占病」を併発した管理職は更に始末に負えません。ニコポンに加え、部下の手柄を独り占めしてしまうからです。「成果が上がらないのは部下のせい、成果が上がるのは自分の指導力のおかげ」と独善的なのがこの病気の特徴です。こうした管理職がはびこり出すと組織はその力を急速に失うことになります。成果が上がらないだけでなく、人財を腐らせてしまうからです。
組織に害毒を流す管理職を作り出さないためにも、目標管理の目的をよく理解し、正しく運用する必要があります。目標管理のコツは、「導入は上から順番に」です。まずは管理職自身が目標管理の対象者となることです。自分自身で目標設定とプロセス展開が理解できて、はじめて部下にも指導ができるのです。
<2003年12月5日~2004年7月9日 中部経済新聞社掲載>