
目標管理制度は、その目的を理解していないとすぐに形骸化してしまう制度である、と前回申し上げました。その典型的なパターンで、気が付いたら社員が達成可能な安易な目標ばかりを設定するようになってしまった、という現象についてご説明いたしました。
今回はもうひとつ、評価できない目標を設定してしまうというパターンについてお話したいと思います。
これは目標設定の稚拙さとマネジメントサイクルに対する無理解から生じる現象です。目標設定とは、簡単に言えば、「いつまでに、何を、どれだけ」を決めることです。ところがこの「どれだけ」が曲者なのです。「どれだけ」のことを達成水準といいますが、この達成水準が不明確であると結局評価できない目標になってしまうのです。
分かりやすい例でお話します。「今期は皆で頑張って売上を拡大しよう。」は目標設定とは言えません。これは単なる掛け声、スローガンです。「今期は前年比20%増の売上を達成しよう。」これは立派な目標といえます。つまり「前年比20%増」という達成水準が明確だからです。今期終了時点で本当に20%増が達成されたかどうかを評価すればよいのです。
もうお気づきですね。マネジメントサイクルで言えばP(計画)の段階で達成水準であった「どれだけ」は、S(検証)の段階では、評価基準になるのです。それ故、達成水準が明確でない目標は、結局評価できない目標ということになってしまいます。
達成水準が数字で表せるものは簡単で、分かりやすいと言えます。誰が見ても数字は客観的であるからです。数字で表せる目標のことを「定量目標」と言います。一方、数字で表すのが難しい目標があります。「定性目標」です。こちらのほうは、「あるべき姿・理想の状態」をできる限り具体的に記述しておきます。
よくありがちな目標として、「コミュニケーションの促進」といったものがあります。これだけでは、何がどうなったら目標達成したといえるのかがまったく分かりません。次のように言い換えては、どうでしょうか。
「営業部と製造部との間で、隔週でミーティングを開き、問題点について話し合うとともに、お互いに対する要望事項をレポートにまとめて交換する。」
これであれば、実際の行動がイメージできますし、ミーティングの記録が残っていれば、実施の有無の確認もできます。定量目標にせよ、定性目標にせよ、評価を客観的かつ公正に行うためには、達成水準を数量化・計量化・具体化する必要があるのです。
最後にもうひとつ大切なことを申し上げます。それは設定した目標項目を測定する仕組みがなければならない、ということです。例えば、「在庫回転率を2回から3回に向上させる」と目標設定した場合、在庫回転率がタイムリーに測定できるかどうかが鍵となります。
月次棚卸の仕組みがなく、決算が終わらなければ数字が出ないということでは、期中の進捗確認ができません。プロセスの有効性が検証できないと言う点で、これもまた評価できない目標ということになってしまいます。
評価を可能にするために、達成水準を明確にすることとそれを測定する仕組みを整備することは必須の条件と言えます。
<2003年12月5日~2004年7月9日 中部経済新聞社掲載>