
仮説(P)→実行(D)→検証(S)は「経営実験」であり、このマネジメントサイクルを制度として運用していくための最適な仕組みが、目標管理制度であるという話を以前(第13回)いたしました。
そして上司と部下が、この「経営実験」に強くコミットすることで両者が共に育つ共育ツールとなり得るということもご紹介いたしました。同時に、目標管理制度は、その目的を理解していないと、すぐに形骸化してしまう制度であることも申し上げました。
形骸化の典型的なパターンに、気が付いたら社員が達成可能な安易な目標ばかりを設定するようになってしまった、という現象が上げられます。実はこれは二つの大きな誤解によって陥る罠なのです。
ひとつめの誤解は、目標は社員がそれぞれ好きなように設定すればよい、そうすることで社員のやる気が高まり、成果が上がるという幻想です。
目標は、経営上の要請から導き出されるものでなければならないことは改めて言うまでもありません。放っておけば、社員が自発的に会社に貢献するような目標設定を行い、成果を出してくれるだろうなどと考えている経営者・管理者がいたとしたら、それは経営すること・管理することを放棄しているのと同じことです。
ふたつめの誤解は、目標管理制度と予算管理制度は別物である、という思い込みです。どこの会社でも売上予算や利益予算、経費予算を決められることでしょう。しかしここに、予算管理は経理部門、目標管理は総務・人事部門というような組織の壁があると、思い込みが現実のものになってしまいます。
目標管理は、人事評価制度のひとつのツールだという認識は、全くの間違いではないにせよ、本質を見誤っていると言わざるを得ません。そもそも期待する経営成果を確実に手に入れるための仕組みが目標管理なのです。期待する経営成果を数字で表したものが予算(目標数値)です。
そう考えれば、目標管理制度と予算管理制度は別物ではないということがご理解いただけると思います。それどころか、実は目標管理は予算達成の効果的なツールとなるのです。
昔、ある商社で、全営業社員の売上予算を合算しても、全社の売上予算に届かないという笑えない状況に遭遇したことがあります。再度トップダウンで売上予算の配分を検討していただき、それぞれの部署、個々の社員がどのようにしたら設定目標を達成できるのかを徹底的にディスカッションしていただきました。
つまり、成果を上げるための具体的なプロセスを検討したわけです。当たり前のことをしていただいただけですが、形骸化していた目標管理制度が本来の機能を取り戻し、営業社員の日々の活動に生彩が出てきました。
残念ながらその期は目標に少し届きませんでしたが、社員は何かを感じ掴み取ったのでしょう。翌期には見事予算達成を成し遂げました。「目標管理の本当の意味がやっと分かったような気がします。」とは、当時の営業部長の弁。
目標管理制度は、その本質をよく理解し使いこなすことができれば、これほど強力な経営ツールはありません。しかし捉え方を間違えると、途端に形骸化することも事実です。罠に陥らないよう、よくよくご注意ください。
<2003年12月5日~2004年7月9日 中部経済新聞社掲載>