調査研究レポート
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近年のわが国モノづくり産業の研究
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Ⅰ.調査研究の概要
1.調査研究の目的
近年のわが国モノづくり産業の実態と動向を業種別・地域別そして規模別に詳細な分析を行うとともに、近年のわが国モノづくり産業の課題と今後の方向を示す。
2.調査研究の対象・資料
今回調査研究したのは、1998年から2003年の5年間におけるわが国モノづくり産業で、実態分析は「工業統計調査」(経済産業省)を用いた。
3.調査研究の内容
今回調査研究したのは以下についてである。
(1)1998年から2003年の5年間のわが国モノづくり産業の業種別・規模別・地域別動向
(2)近年のわが国モノづくり産業の課題
(3)今後のわが国モノづくり産業の方向
(4)今後の国・都道府県等自治体の産業政策の方向
4.調査研究の期間
本調査研究の期間は、2006年3月から2006年6月
5.調査研究の担当
本調査研究はアタックスグループの株式会社アタックス(調査研究事業室)と法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科客員教授兼静岡文化芸術大学教授である坂本光司研究室が共同して行った。
Ⅱ.調査研究の結果の概要
| (ア) | 過去5年間、我が国モノづくり産業の復権がいわれているが、それは一部大手モノづくり企業のことで、中小のモノづくり産業の多くは依然、衰退傾向から脱していない。 |
| (イ) | 過去5年間、とりわけ衰退傾向著しいのは、従業員数「1~3人」と「4~9人」のわが国モノづくり産業の底辺を下支えする小規模企業である。 |
| (ウ) | 過去5年間、従業員数「1000人以上」企業の付加価値労働生産性は上昇したが、逆に、従業員数「1~3人」や「4~9人」規模は、この間、低下し、その結果、大企業と中小企業の格差は再び拡大している。 |
| (エ) | 過去5年間、わが国モノづくり産業の格差は、業種から企業に移行している。 |
| (オ) | 過去5年間、製造品出荷額等を増加させたのは、山形県、愛知県、三重県等7県で、他の40都府県は、いずれも程度の差こそあれ減少している。 |
| (カ) | 過去5年間、製造品出荷額等を大幅に減少させたのは、東京都、京都府、大阪府そして埼玉県等である。 |
| (キ) | 近年の中小モノづくり産業の激減と、大企業との格差の拡大は、将来、わが国産業組織の崩壊が危惧される。 |
| (ク) | その意味でいえば、大手モノづくり企業は、こうした中小モノづくり産業の現実を直視すべきである。 |
| (ケ) | つまり、両社がWIN‐WINの関係となるよう新たな関係構築が急務である。 |
III.まとめ
- 過去5年間(1998年~2003年)、わが国モノづくり産業は景気のいかんを関わらず、一貫して工場数、従業者数を減少させ、この5年間で工場数は139千ヶ所、率にして21.6%、従業者数は1,741千人、率にして10.7%のそれぞれ大幅な減少である。
- とりわけ減少数著しいのは、従業員「1~3人」と「4~9人」の小規模工場で、この5年間で前者は59,136ヶ所、率にして21.9%減、後者は56,257ヶ所、率にして27.2%減である。
- 工場数の減少は、全ての規模で共通してみられるが、減少率でみると、従業員「4~9人」に次ぎ、減少幅が大きいのは、従業員「1000人~」で、その減少率は24.5%、 減少数 は5年前の587ヶ所から443ヶ所と144ヶ所である。つまりこの間、わが国大規模工場の再編や海外展開に伴うスクラップが大幅に進展したといえる。
- このことは、従業員数の動向をみても同様で、この5年間で約174万人、率にして16.7%の減少であるが、とりわけ減少数が大幅なのは、従業員「4~9人」の約35万人減、「30~99人」の33万人減、そして「1000人~」の30万人減である。
- このことは、製造品出荷額でみても同様で、従業員「4~9人」、「30~99人」、そして「1000人~」が、この間それぞれ4兆6670億円減、6兆7069億円減、9兆2982億円と大幅である。
- モノづくり産業を561品目別にみると、その大半は、事業所数、従業者数、現金給与総額、製造品出荷額等、そして付加価値額の5項目、いずれも減少させているが、「食酢製造業」「半導体製造装置製造業」「医療用計測器製造業」そして「無線通信機械器具製造業」など15業種は、5項目いずれも増加させている。
- 事業所数や従業者数あるいは製造品出荷額等の過去5年間の増減と、その業種の労働生産性や賃金レベルとの相関はあまりみられない。つまり、付加価値や賃金のレベルではなく、その商品力やビジネスモデルにより、モノづくり産業の盛衰が進展しているといえる。
- 過去5年間、山形県、愛知県、三重県、山口県、徳島県、大分県、そして沖縄県の 7県は程度の差こそあれ、製造品出荷額等を増加させているが、残り40都道府県は減少している。
- この間、とりわけ減少著しかったのは、東京都(41.8%減)、京都府(20.7%減)、大阪府(20.6%減)、秋田県(20.2%減)、そして埼玉県(18.4%減)といった、大半は東京圏と大阪圏に位置する、かつてのモノづくり県である。この結果、47都道府県のモノづくり産業力の地図が変わってきている。
- 過去5年間、自動車が中核産業である愛知県と静岡県の全国に占める生産シェアが一段と高まり、両県あわせ全国の18.8%、つまり全国のおよそ5分の1を占めるまでになっている。
- 過去5年間の47都道府県のモノづくり産業の活力は、その地域の中核産業の優劣と、有力なモノづくり産業の新規立地によるところが大きい。
- 近年のモノづくり産業の盛衰は、当然とはいえ、市区町村でも共通してみられるが、傾向としては、政令指定都市や県庁所在都市といった大都市や、素材型のモノづくり都市が後退し、自動車関連産業が立地集積する中小都市の成長が目覚しい。
- 過去5年間、わが国モノづくり産業の付加価値労働生産性は1,151万円から1,199万へと48万円、率にして4.2%増加した。
- この間、とりわけ増加率が高かったのは「鉛筆製造業」の167.3%、以下、「理化学用・工学用陶磁器製造業」の153.4%、「X線装置製造業」の149.2%、「コークス製造業」の123.8%、そして「電子管製造業」の116.3%などと続く。
- 付加価値労働生産性を規模別にみると、従業員「1000人~」と、それ以下の規模との格差は過去5年間で拡大している。
- 過去5年間、付加価値労働生産性を増加させたのは、従業員「20~29人」、「50~99人」、「100~199人」、「200~299人」、そして「1000人~」である。
- とりわけ増加著しいのは、従業員「1000人~」で、5年前の1,966万円から2,263万円へと297万円、率にして15.1%の増加、そして従業員「200~299人」の1,370万円から1,527万、率にして11.5%の増加などである。
- 従業員1人当たりの現金給与総額は、過去5年間438万円から418万円へと20万円、率にして4.6%の減少である。
- 過去5年間、従業員1人当たり現金給与総額を増加させたのは、従業員「1000人~」のみで、それ以下の規模は全て程度の差こそあれ、減少している。
- その結果、従業員「1000人~」と、それ以下の規模との格差は、過去5年間で拡大している。
- 都道府県の付加価値労働生産性をみると、この5年間で91万円、率にして8.2%増加している。
- 最も付加価値労働生産性が高いのは、山口県の1,753万円、以下、滋賀県の1,655万円、和歌山県の1,585万円、そして千葉県と大分県の1,546万円などと続く。
- 過去5年間、付加価値労働生産性の増加率が高いのは、徳島県の52.6%、以下、和歌山県の32.3%、山口県の26.3%、広島県の19.0%、そして大分県の17.2%などと続く。逆に、この間、減少したのが、岩手県、東京都、長野県、兵庫県、香川県、そして長崎県の6都県である。
- 従業員1人当たり現金給与総額が最も高いのは、神奈川県の540万円、以下、愛知県の506万円、滋賀県の477万円、山口県の472万円、東京都と三重県の470万円、そして静岡県の461万円などと続く。逆に、最も低いのは、沖縄県の274万円、以下、青森県の291万円、秋田県の297万円、高知県の313万円、そして鳥取県の331万円などと続く。
- 過去5年間、従業員1人当たり現金給与総額は減少となったが、こうした中、徳島県は10.4%、鹿児島県は4.5%、三重県は4.2%、岩手県・石川県は3.8%、そして岐阜県・奈良県は3.7%など、23府県はそれぞれ増加となっている。逆に、最も減少率が高かったのは、東京都の8.3%、以下、沖縄県の8.1%減、兵庫県の7.6%減、北海道の6.0%減、そして大阪府の5.3%減などである。
- 過去5年間の都道府県別22業種別生産シェアの動向をみると、愛知県の一層の集中化傾向と東京都、神奈川県、大阪府などからの分散化傾向が顕著である。
- 過去5年間、輸送用機械の集積が高まったのは、北海道、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、石川県、福井県、静岡県、愛知県、山口県、福岡県、佐賀県、そして宮崎県である。逆に、分散傾向がみられるのが、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県などである。
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